9 / 84
第一章
第八部分
しおりを挟む
栄知は、仕方なく、いかがわしい地区を歩いていく。
「こんな場所は高校生には目に毒だよな。いつか久里朱と一緒に来る日が来たりして。いやいや、そんな不健全思考はダメだ。健全な肉体に、健全な精神は宿るんだから。健全な肉体が必要条件ならば、あっちの方向に疾走するのは当然の帰結なんじゃ?『お兄ちゃんズ』は運動したいのか?ムムム。」
『お兄ちゃんズ』という渋沢家専属的なキーワードを自分も使用する栄知の脳内では、健全と不健全がカオスになっている。
栄知はその状態で、とあるホテルの近くにまでやってきた。そこで異変が起こった。
頭を抱えていた栄知の瞳に、赤いものが投影されて、栄知の思考は反射的にそこに集中されて、その顔・体型認証システムは一個の個体との照合に成功した。
悪いことに、赤い個体は、不健全男子を大いなる過去に経験して、現在はセクハラオヤジに進化した後期中年フルセット円形ハゲ頭と同伴している。
「ま、まさか、あれは久里朱!?それにあんなオッサンとホテルに入っていっただと?信じられない!いや、きっと、何かの見間違いだ。そうだ、久里朱は、今日はバイトだって、言ってたし。で、でもバイトって、何のバイトか知らないし。」
『プルル。』
再び、スマホが鳴って、早く買い物を済ませるように催促された栄知。今見た光景を忘れるために、猛ダッシュでスーパーに行って、逃げるように帰宅した。
2時間後、ホテルから出てきた久里朱は、チンピラが暴れている現場に行って、そこを鎮圧してから、霞が関にある魔法少女省を訪れた。事件処理の報告と納税のためである。
50階建ての御影石で覆われたビルディングが黒光りして威容を誇っている。
体育館ぐらいあろうかというだだっ広いエントランスには、人があまりいない。魔法少女になれる者が少ないという事情はあるものの、枕営業やってる以上、人目に触れるのは極力避けるためである。
久里朱はエレベーターホールの前に立った。左右にエレベーターがあり、乗降フロアが異なっている。久里朱は右側に進んだ。こちらは、11階から50階に行けるものであり、左側は10階までになっている。エレベーターの数も右側は10基と多く、かつドアもシルバーで輝いているが、左側は薄汚れたドアの人荷用が一基あるのみである。
久里朱の背中合わせに、小さな体躯の女子ふたりがやって来た。恨めしげな目付きを背中に感じた久里朱はすぐにエレベーターに乗り込んで最寄りの11階のボタンを押した。
このエレベーターは11階以上にしか止まらないのである。筐体に入ると、久里朱は狂ったように手を動かして、12階から50階までのすべてのボタンを点灯させた。このエレベーターは各階停車の鈍行運転となった。久里朱はゴミを見るようなすがめた視線をエレベーターの隅に向けて開口した。
「今日もちゃんとエレベーターガールの務めを果たしてるわね。今日の納税額とか、報告したいんだけど。ねえ、沽森byオバチャマ、聞いてる?ねえ、魔法少女省魔法少女管理局第一管轄区総務課長の沽森byオバチャマ!」
「女子だ~!ハグするもん!」
いきなり、黒い物体が久里朱に飛びついてきて、久里朱はあっさりと薙ぎ払った。
「こんな場所は高校生には目に毒だよな。いつか久里朱と一緒に来る日が来たりして。いやいや、そんな不健全思考はダメだ。健全な肉体に、健全な精神は宿るんだから。健全な肉体が必要条件ならば、あっちの方向に疾走するのは当然の帰結なんじゃ?『お兄ちゃんズ』は運動したいのか?ムムム。」
『お兄ちゃんズ』という渋沢家専属的なキーワードを自分も使用する栄知の脳内では、健全と不健全がカオスになっている。
栄知はその状態で、とあるホテルの近くにまでやってきた。そこで異変が起こった。
頭を抱えていた栄知の瞳に、赤いものが投影されて、栄知の思考は反射的にそこに集中されて、その顔・体型認証システムは一個の個体との照合に成功した。
悪いことに、赤い個体は、不健全男子を大いなる過去に経験して、現在はセクハラオヤジに進化した後期中年フルセット円形ハゲ頭と同伴している。
「ま、まさか、あれは久里朱!?それにあんなオッサンとホテルに入っていっただと?信じられない!いや、きっと、何かの見間違いだ。そうだ、久里朱は、今日はバイトだって、言ってたし。で、でもバイトって、何のバイトか知らないし。」
『プルル。』
再び、スマホが鳴って、早く買い物を済ませるように催促された栄知。今見た光景を忘れるために、猛ダッシュでスーパーに行って、逃げるように帰宅した。
2時間後、ホテルから出てきた久里朱は、チンピラが暴れている現場に行って、そこを鎮圧してから、霞が関にある魔法少女省を訪れた。事件処理の報告と納税のためである。
50階建ての御影石で覆われたビルディングが黒光りして威容を誇っている。
体育館ぐらいあろうかというだだっ広いエントランスには、人があまりいない。魔法少女になれる者が少ないという事情はあるものの、枕営業やってる以上、人目に触れるのは極力避けるためである。
久里朱はエレベーターホールの前に立った。左右にエレベーターがあり、乗降フロアが異なっている。久里朱は右側に進んだ。こちらは、11階から50階に行けるものであり、左側は10階までになっている。エレベーターの数も右側は10基と多く、かつドアもシルバーで輝いているが、左側は薄汚れたドアの人荷用が一基あるのみである。
久里朱の背中合わせに、小さな体躯の女子ふたりがやって来た。恨めしげな目付きを背中に感じた久里朱はすぐにエレベーターに乗り込んで最寄りの11階のボタンを押した。
このエレベーターは11階以上にしか止まらないのである。筐体に入ると、久里朱は狂ったように手を動かして、12階から50階までのすべてのボタンを点灯させた。このエレベーターは各階停車の鈍行運転となった。久里朱はゴミを見るようなすがめた視線をエレベーターの隅に向けて開口した。
「今日もちゃんとエレベーターガールの務めを果たしてるわね。今日の納税額とか、報告したいんだけど。ねえ、沽森byオバチャマ、聞いてる?ねえ、魔法少女省魔法少女管理局第一管轄区総務課長の沽森byオバチャマ!」
「女子だ~!ハグするもん!」
いきなり、黒い物体が久里朱に飛びついてきて、久里朱はあっさりと薙ぎ払った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話
嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。
【あらすじ】
イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。
しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。
ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。
そんな一家はむしろ互いに愛情過多。
あてられた周りだけ食傷気味。
「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」
なんて養女は言う。
今の所、魔法を使った事ないんですけどね。
ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。
僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。
一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。
生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。
でもスローなライフは無理っぽい。
__そんなお話。
※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。
※他サイトでも掲載中。
※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。
※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。
※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。
チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。
ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。
高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。
そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。
そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。
弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。
※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。
※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。
Hotランキング 1位
ファンタジーランキング 1位
人気ランキング 2位
100000Pt達成!!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる