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第二章
第三十六部分
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三番バッターはランボウを一瞥して、卑しい笑みを浮かべた。依然として帽子を目深にかぶっており、表情は見えない。
ランボウは、バットの上部を見て苦虫を噛み潰したような顔である。
そのままランボウが投じた球はひどく緩慢で打ちごろであり、コースはど真ん中であった。『カキーン』という金属音を残した打球は、きれいな放物線を描いて観客のいないスタンドに落ちた。
「キャプテン。どうしてあんなホームランボールを投げたんだよ?」
次のバッターを簡単に打ち取ったランボウは、ベンチで美散に一言回答した。
「バットに何か入っていた。」
「はあ?バットの中って、木材だよ。いったい何を言ってるんだよ?」
ランボウは半巨人のベンチを指差した。
三番バッターはホームランを打ったバットをエロザに返していた。そしてエロザはバットの先から何かを取り出した。片手にはボールを持っており、その手を動かしたエロザ。
三回裏、後がない巨人軍はナッキーからの攻撃。
「あれ、なんか今までと違うですっ。」
エロザは奇妙な色のボールを投げていた。
「このボール、すごく打ちづらいですっ。というよりも、なんとなく打ってはいけない気がするですっ。」
結局、ナッキー並びにトモヨンは見送り三振してしまった。
ふたりを打ち取った後、マウンドのエロザは上機嫌で勝者のように、語った。
「巨人軍ノミナサン、最後ダカラ、見セマショウ。コノ一球ハ、半巨人ノ市民権獲得ニ捧げマス。次ハ、人間トノ婚姻権デス。コレガ獲得デキレバ、半巨人ノ長年ノ夢ガ、満願成就トナリマス!」
「そんな身勝手は許さないよ。あたしたちにだって、婚姻権はないんだから!」
「いや、それは違うぞ。巨人軍には市民権も婚姻権も認められているぞ。」
「でも現実的には無理じゃない。そんなのは空法だよ!」
「巨人軍には婚姻権ガ、アルデスと?マスマス、怒リガ、コミ上ゲテ来マシタ。見ナサイ、コノボールヲ!」
エロザは変わった色のボールを高々と掲げた。
ボールは薄い水色のスケルトンであった。その中で何かが蠢いていた。それが何なのか、美散はすぐに気づいた。
「あれ、レイちゃんだよ。レイちゃんがボールの中に入ってる。それも血だらけになってるよ!」
「ドウデス?イイモノガ、見レタデショウ。ワタクシノ投球ヲ、全力デ打ッテクレテモ、構イマセンヨ。中ノオオエノ皇子ガ、ドウナッテモ、知リマセンケド。」
ランボウは、バットの上部を見て苦虫を噛み潰したような顔である。
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「キャプテン。どうしてあんなホームランボールを投げたんだよ?」
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ランボウは半巨人のベンチを指差した。
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結局、ナッキー並びにトモヨンは見送り三振してしまった。
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「巨人軍ノミナサン、最後ダカラ、見セマショウ。コノ一球ハ、半巨人ノ市民権獲得ニ捧げマス。次ハ、人間トノ婚姻権デス。コレガ獲得デキレバ、半巨人ノ長年ノ夢ガ、満願成就トナリマス!」
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「いや、それは違うぞ。巨人軍には市民権も婚姻権も認められているぞ。」
「でも現実的には無理じゃない。そんなのは空法だよ!」
「巨人軍には婚姻権ガ、アルデスと?マスマス、怒リガ、コミ上ゲテ来マシタ。見ナサイ、コノボールヲ!」
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「あれ、レイちゃんだよ。レイちゃんがボールの中に入ってる。それも血だらけになってるよ!」
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