進芸の巨人は逆境に勝ちます!

木mori

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第二章

第二十九部分

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次のバッターはナッキー。
「からくりがわかってるなら、対処のしようがあるですっ。」
やや太めのバットを手にしたナッキーは、バットの先端近くとグリップを握って、構えている。
エロザは先ほどと同様に、ゆったりと投げた。ナッキーはボールを見極めようとしたが、バットを振ることはなかった。
「やっぱりボールが小さ過ぎて見えないですっ。」
次の球もあっさりと見送ったナッキー。
「よし、覚悟を決めたですっ。ピッチャーさんも覚悟するですっ。」
「ワタクシガ、何ノ覚悟ヲスル必要ガ、アルノデスカ。」
「それは負け犬の遠吠えに聞こえるですっ!覚悟という言葉を聞いたら、負け犬ポーズをするというパブロフの犬になるですっ!」
 エロザの三球目が投じられた。
『コチン。』
バットに何かが当たったような音がした。
ボールは二塁側で転々としていた。すでに一塁ベース上にナッキーは立っていた。
バッターボックスには、扇子大きなが転がっていた。
「えっへんですっ。これぞ、扇子バット作戦ですっ。」
美散は目を白黒させていた。
「ナッキーさんのバット、変な形だと思ったら、扇子のように広がるタイプだったんだ。普通のボールだったら、あんな薄いバットじゃ、折れちゃうけど、小さなボールだからできるんだね。」
「ナッキーが泣かずに笑ってる。雪が降らなきゃいいが。」
「ナッキーもたまには成功するですっ。いや、いつも成功したいですっ。それなのに失敗ばかりですっ。ううう。」
やっぱり泣きナッキーに戻っていた。パブロフの犬はナッキーだった。

次のバッタートモヨンも同じバットを持った。
「こんなやり方があるなら、私もヒット確実ですわ。何も考えなくていいので、代わりに反則モドキピッチャーさんのツルを折って、エロザさんのクビを折る妄想でもしておきますわ♥」
トモヨンはすでにバットを扇形にしている。こちらの方が反則っぽい。
しかし、ボールは強振したバットにかすりもせずに、そのままキャッチャーミットに三球すべて収まった。
「どうしてバットに当たらないんですの?」
「やられてたな、トモヨン。クビを折られたのはお前だ。」
「ランボウちゃん、いったい何を言ってるんですの?返答次第では、ランボウちゃんを折り畳みますわよ?」
「エロザは球が小さいことを悪用したんだよ。皮カムリさ。」
「か、か、皮カムリですって?そんな非健全な青少年が、この世に存在するのですか、絶望しますわ!」
「言ってる意味がわからねえ。皮カムリとは、ボールの周りに薄い被膜を付けているってことさ。ボールがトモヨンのバットに当たった瞬間に、被膜が剥がれて、本体がキャッチャーミットに吸い込まれたのさ。扇子バットは強い風圧を浴びてるから、まともなスイングはできない。威力の弱いバットはボールを擦り、被膜を剥いだってこと。つまり、ボールを二個持っていたというワケさ。」
「なんて卑劣な作戦ですの⁉次の打席でお返ししてあげますわ。クビを洗って、いつ折られてもいいようにしておきなさいですわッ!」
ベンチで美散は緊張感が背中を走っていた。
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