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第一章
第十七部分
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寮に着いた美散はトモヨンに質問をした。窮地にある時は、自然と優しそうな相手に依存してしまうのは、人間の弱さがなせる本能の一つである。
「あ、あのう、トモヨンさん。この寮って、何人いるんですか。」
「言葉は普段通りで構いませんわ。それで、人数のことですが、それはわたくしにもわかりかねますわ。寮は選手がからだを休めるだけの場所。他の選手とのコミュニケーションも原則食事の時だけですし、食事の時間も微妙に合わないような仕組みになってるみたいで、ワタクシも他の選手のことはあまり知りませんわ。選手のことは、練習に聞け、ということを言われてます。」
「そ、そうなんだ。でも練習って、三人しか球場にいなかったよ。」
「ここの野球はチーム三人で試合を行うからです。それは昨日今日の練習でおわかりでしょう。但し試合はめったに行われません。細かいルールは、普通の野球とそれほど変わりはありませんわ。」
「ということは試合のためにひたすら練習して、寮で過ごし、たまに試合するだけ?なんかすごく単調な生活じゃないの。」
「そう思われるのは当然ですわ。ゆえに練習には大きな特典があります。」
「特典?ご褒美ってこと?やっぱり労働には対価、馬にはニンジンってことかな?」
「そうですわね。まあ、馬車馬に近い存在かも知れませんわ。そう言われるとなんとなく悲しい気分になりますわね。」
「ごめんなさい。そんなつもりではなかったんだけど。」
「お気になさらずに。では続けましょう。練習での特典とは、レギュラーになることで恩恵を受けることができるのです。恩恵とは、寮から外出して、あるところに行けるということですわ。」
「外出して、あるところに行ける、たったそれだけ?」
「たったそれだけではありませんわ。あるところとは、『魔法工房』なのです。」
「魔法工房?ってことは魔法が使えるようになるっていうこと?」
「そういうことですわ。魔法にはいろんな種類があります。たとえば、筋力を強化して、速い球を投げられるようになったり、火の球を投げられるようになったり、石のように硬いボールを投げられるようになったり。」
「他には?」
「筋力を強化して、速い球を打てるようになったり、火の球を打てるようになったり、石のように硬いボールを打てるようになったり。」
「すべて野球絡み?なんだか、期待値が薄まってきたような気がするけど、他にはどんな魔法があるの?」
「筋力を強化して、速い球を捕れるようになったり、火の球を捕れるようになったり、石のように硬いボールを捕れるようになったり。」
「それって、ほとんど一緒じゃない。しかも完全に野球関連アイテムだし。か、かわいくなれる魔法とかないの?」
攻撃モードから急にしおらしくなってきた美散。
「もちろんありますわ、魔法なんですから。からだを小さくする方法とかも、あるらしいですわ。」
「ほんと⁉」
「はい。その方がスライディングには最適かも知れませんわ。」
「野球から離れてよ!でもそういうことなら、魔法で小さくなって、元の生活に戻れるかも。夢とか希望とかが、儚い幻想ではなく、痒いところに届く孫から斬った手よ!ひ、ひ、ひひひ。」
下卑た笑いをこらえきれない美散であった。
「あ、あのう、トモヨンさん。この寮って、何人いるんですか。」
「言葉は普段通りで構いませんわ。それで、人数のことですが、それはわたくしにもわかりかねますわ。寮は選手がからだを休めるだけの場所。他の選手とのコミュニケーションも原則食事の時だけですし、食事の時間も微妙に合わないような仕組みになってるみたいで、ワタクシも他の選手のことはあまり知りませんわ。選手のことは、練習に聞け、ということを言われてます。」
「そ、そうなんだ。でも練習って、三人しか球場にいなかったよ。」
「ここの野球はチーム三人で試合を行うからです。それは昨日今日の練習でおわかりでしょう。但し試合はめったに行われません。細かいルールは、普通の野球とそれほど変わりはありませんわ。」
「ということは試合のためにひたすら練習して、寮で過ごし、たまに試合するだけ?なんかすごく単調な生活じゃないの。」
「そう思われるのは当然ですわ。ゆえに練習には大きな特典があります。」
「特典?ご褒美ってこと?やっぱり労働には対価、馬にはニンジンってことかな?」
「そうですわね。まあ、馬車馬に近い存在かも知れませんわ。そう言われるとなんとなく悲しい気分になりますわね。」
「ごめんなさい。そんなつもりではなかったんだけど。」
「お気になさらずに。では続けましょう。練習での特典とは、レギュラーになることで恩恵を受けることができるのです。恩恵とは、寮から外出して、あるところに行けるということですわ。」
「外出して、あるところに行ける、たったそれだけ?」
「たったそれだけではありませんわ。あるところとは、『魔法工房』なのです。」
「魔法工房?ってことは魔法が使えるようになるっていうこと?」
「そういうことですわ。魔法にはいろんな種類があります。たとえば、筋力を強化して、速い球を投げられるようになったり、火の球を投げられるようになったり、石のように硬いボールを投げられるようになったり。」
「他には?」
「筋力を強化して、速い球を打てるようになったり、火の球を打てるようになったり、石のように硬いボールを打てるようになったり。」
「すべて野球絡み?なんだか、期待値が薄まってきたような気がするけど、他にはどんな魔法があるの?」
「筋力を強化して、速い球を捕れるようになったり、火の球を捕れるようになったり、石のように硬いボールを捕れるようになったり。」
「それって、ほとんど一緒じゃない。しかも完全に野球関連アイテムだし。か、かわいくなれる魔法とかないの?」
攻撃モードから急にしおらしくなってきた美散。
「もちろんありますわ、魔法なんですから。からだを小さくする方法とかも、あるらしいですわ。」
「ほんと⁉」
「はい。その方がスライディングには最適かも知れませんわ。」
「野球から離れてよ!でもそういうことなら、魔法で小さくなって、元の生活に戻れるかも。夢とか希望とかが、儚い幻想ではなく、痒いところに届く孫から斬った手よ!ひ、ひ、ひひひ。」
下卑た笑いをこらえきれない美散であった。
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