特売フイギュアワゴンの中に手を入れたら、人生変わるので注意してください。

第一章

第十四話

「おっ、すっかりいい目つきに変わったのう。見事な鯖目じゃわ。」

「それって誉め殺しなのね。うれしさがこみ上げてくるわ。」
三輪車支配人と楡浬は、双子のようにニンマリした。実に不気味だと大悟は思ったが、口にはしなかった。すでに楡浬は聞く耳持たないエリアの住人だった。

「よし第一段階クリアじゃ。第二段階はフィールドワークじゃ。ワークと言っても基本は同じ。何もしない姿勢・態度・行動を維持すればよい。」
支配人と楡浬は下りエレベーターに乗って、エントランスを出た。

　学校の敷地内に和服の老婆が迷い込んで、ウロウロしているのが見えた。
　足元が不如意な老婆が、周囲を気にしながら歩くとどうなるかは、想像つくであろう。予想通り、何もないところで、すってんころりとなった。転んだところに石でもあったのか、顔を血まみれにして、苦しそうにあがく老婆。

「痛い！誰か助けて！」
老婆の叫びに、『助けなきゃ！』と慈愛の心に揺れた楡浬であったが、何もしない生活のマイナスパワーからか、体が動かない。

「気持ちが少々揺れたようじゃが、行動に移さなかったことは正解じゃ。」

（あれのどこが正しい行動なんだ？）

　大悟のツッコミをスルーして、真面目な顔を見せた三輪車支配人。楡浬は眉間にシワを寄せて何事か考えている様子であった。

「よし場所を変えるぞ。」

「あわわわ。」
　三輪車支配人は楡浬を三輪車に乗せてそのまま、羽根を広げて学校敷地の外に出た。

「支配人。もしかしたら三輪車なんてなくてもどこにでも行けるんじゃないの？てか、天使と悪魔は人間界で魔法を使っちゃいけないんじゃないの？」

「魔法など使っておらん。この三輪車のサンマちゃんには飛行マシンとしての優れた性能があるんじゃ。」

「あら、名前もあったんだ。ダサいけど。」

「うるさい、うるさい、うるさい！ここから、人生終焉行き列車のグリーン車に乗せてもいいんじゃぞ！ほれ！」

「きゃあああ。」
　三輪車は大きく揺れて楡浬もバランスを崩して落ちそうになった。
「やったわね。ならばアタシもやるわ。悪魔はやられたらやり返す、目には目を、歯には歯間ブラシよ！こちょこちょ。」

「ゴロゴロ。」
　ふたりは落下高速道路をまっしぐら。

『バシャ～ン！』
　墜落した場所は水の中で九死に一生を得たふたり。

（ゴボゴボ～！がはーっ！）

　十死寸前の大悟であった。