13 / 70
第一章
第十二話
しおりを挟む
「幼児の声はたしかに聞こえるわ。でも視野レーダーにヒットする物体はないわよ。」
「人をモノ扱いするでない!」
「どこにいるのよ。小さな女の子がいるんでしょ。隠れてないで出てきなさいよ。」
「台の下を覗いてみるんじゃ。」
楡浬は体を小さくして、テーブルの下に顔を入れた。
「あっ。ほんと、ここにいたわ。すごくかわいいわ。アタシの肩に乗っている汚物とはずいぶん違うわね。」
(さらりとひどいことを言うんじゃねえ。)
テーブル下からのそのそと立ち上がってきた幼女。黄色の髪を3つ結びにしている。うち1本は頭頂部で殿様のように立てている。大きな赤い猫目がかわいい。しかし、その様子は少々ノーマルではなかった。背もたれが椅子のような形をした奇妙な三輪車に乗っており、ご丁寧に『支配人』という赤い幟をつけて自己アピールしている。
幼女は幼稚園児用の青い制服を着ている。定番の涎掛けもついており、お約束の北海道形シミも付いている。
幼女は補助輪付き三輪車のペダルを必死の形相で漕いで、楡浬のところに移動してきた。
「はあはあはあはあはあ。疲れたわ。自分の力で動くなど、移動手段としては超絶邪道じゃ。」
息を大きく弾ませている幼女の頭に手を当てた楡浬。
「かわいい!どうしてこんなにかわいい女の子がここにいるのかしら。あなた、迷子でしょ。お母さんとはぐれたのかな。お名前はなんでちゅか~?」
「ガキ扱いするでない。あたちの名前は、チャミュエルだ。そこの肩の汚物と違い、大天使じゃからの。」
「チャミちゃんね。名前もキュートだわ。抱きッ!」
楡浬は三輪車毎、チャミュエルをハグした。
「こら、やめろ。あたちは、この用務員ホテルの支配人じゃ!」
「ホテル支配人ごっこでちゅかぁ?楽ちそう。アタシもまぜて~♥」
「バ、バカを言うでない。あたちはマジな支配人じゃ!」
楡浬の赤ちゃん言葉に押されたのか、顔を赤くして、照れてるようにも見える三輪車支配人。
「かわいい!こんなにかわいいなら、こうしてやるわ!」
楡浬は三輪車支配人のアゴをやさしく、熱く擦った。
『ゴロゴロ、ゴロゴロ。』
三輪車支配人はネコのようにノドを鳴らした。
「うひゃ!ネコちゃんそのものじゃない。もうどうかなりそう、いやなっちゃったわ。バタン。」
楡浬は歓喜・興奮のあまり、果ててその場に突っ伏してしまった。
当然ながら、肩にへばりついている大悟にも、とばっちりが来て、大悟も全力で顔を打った。
(いてえ!おい楡浬。しっかりしろ。)
「はああ。人形が喋ってる。ネコもいる。ここは桃源郷かしら。うふん。」
倒れたまま、すっかり惚けている楡浬。
「ちっ、仕方ない。これをやるか。」
舌打ちして大悟は動けない体を駆使して、大きく息を吸った。
(このど貧乳~!)
「えっ、何?アタシにケンカ売ってきたのは誰?ソッコー全破壊滅してやるわ。」
(全破壊滅ってどういう意味だよ。危険で痛そうだが。目が覚めたか、楡浬。)
「あれ?アタシどうしてたのかしら。」
「あたちに抱きついてから果てたんじゃ。」
「あっ!萌え幼女にゃんこ!かわいい!」
「もうやめい。」
(この方は、れっきとした用務員室ホテル支配人だ。しかも大天使という階級の高い方だ。)
「間違いないの?」
「間違いなくあたちは支配人じゃ。」
「ファイルアンサー?」
「しつこいわ!」
こうして楡浬と支配人が並ぶと、支配人の身長は半分以下であった。
「人をモノ扱いするでない!」
「どこにいるのよ。小さな女の子がいるんでしょ。隠れてないで出てきなさいよ。」
「台の下を覗いてみるんじゃ。」
楡浬は体を小さくして、テーブルの下に顔を入れた。
「あっ。ほんと、ここにいたわ。すごくかわいいわ。アタシの肩に乗っている汚物とはずいぶん違うわね。」
(さらりとひどいことを言うんじゃねえ。)
テーブル下からのそのそと立ち上がってきた幼女。黄色の髪を3つ結びにしている。うち1本は頭頂部で殿様のように立てている。大きな赤い猫目がかわいい。しかし、その様子は少々ノーマルではなかった。背もたれが椅子のような形をした奇妙な三輪車に乗っており、ご丁寧に『支配人』という赤い幟をつけて自己アピールしている。
幼女は幼稚園児用の青い制服を着ている。定番の涎掛けもついており、お約束の北海道形シミも付いている。
幼女は補助輪付き三輪車のペダルを必死の形相で漕いで、楡浬のところに移動してきた。
「はあはあはあはあはあ。疲れたわ。自分の力で動くなど、移動手段としては超絶邪道じゃ。」
息を大きく弾ませている幼女の頭に手を当てた楡浬。
「かわいい!どうしてこんなにかわいい女の子がここにいるのかしら。あなた、迷子でしょ。お母さんとはぐれたのかな。お名前はなんでちゅか~?」
「ガキ扱いするでない。あたちの名前は、チャミュエルだ。そこの肩の汚物と違い、大天使じゃからの。」
「チャミちゃんね。名前もキュートだわ。抱きッ!」
楡浬は三輪車毎、チャミュエルをハグした。
「こら、やめろ。あたちは、この用務員ホテルの支配人じゃ!」
「ホテル支配人ごっこでちゅかぁ?楽ちそう。アタシもまぜて~♥」
「バ、バカを言うでない。あたちはマジな支配人じゃ!」
楡浬の赤ちゃん言葉に押されたのか、顔を赤くして、照れてるようにも見える三輪車支配人。
「かわいい!こんなにかわいいなら、こうしてやるわ!」
楡浬は三輪車支配人のアゴをやさしく、熱く擦った。
『ゴロゴロ、ゴロゴロ。』
三輪車支配人はネコのようにノドを鳴らした。
「うひゃ!ネコちゃんそのものじゃない。もうどうかなりそう、いやなっちゃったわ。バタン。」
楡浬は歓喜・興奮のあまり、果ててその場に突っ伏してしまった。
当然ながら、肩にへばりついている大悟にも、とばっちりが来て、大悟も全力で顔を打った。
(いてえ!おい楡浬。しっかりしろ。)
「はああ。人形が喋ってる。ネコもいる。ここは桃源郷かしら。うふん。」
倒れたまま、すっかり惚けている楡浬。
「ちっ、仕方ない。これをやるか。」
舌打ちして大悟は動けない体を駆使して、大きく息を吸った。
(このど貧乳~!)
「えっ、何?アタシにケンカ売ってきたのは誰?ソッコー全破壊滅してやるわ。」
(全破壊滅ってどういう意味だよ。危険で痛そうだが。目が覚めたか、楡浬。)
「あれ?アタシどうしてたのかしら。」
「あたちに抱きついてから果てたんじゃ。」
「あっ!萌え幼女にゃんこ!かわいい!」
「もうやめい。」
(この方は、れっきとした用務員室ホテル支配人だ。しかも大天使という階級の高い方だ。)
「間違いないの?」
「間違いなくあたちは支配人じゃ。」
「ファイルアンサー?」
「しつこいわ!」
こうして楡浬と支配人が並ぶと、支配人の身長は半分以下であった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
6年3組わたしのゆうしゃさま
はれはる
キャラ文芸
小学六年の夏
夏休みが終わり登校すると
クオラスメイトの少女が1人
この世から消えていた
ある事故をきっかけに彼女が亡くなる
一年前に時を遡った主人公
なぜ彼女は死んだのか
そして彼女を救うことは出来るのか?
これは小さな勇者と彼女の物語
遊女の私が水揚げ直前に、お狐様に貰われた話
新条 カイ
キャラ文芸
子供の頃に売られた私は、今晩、遊女として通過儀礼の水揚げをされる。男の人が苦手で、嫌で仕方なかった。子供の頃から神社へお参りしている私は、今日もいつもの様にお参りをした。そして、心の中で逃げたいとも言った。そうしたら…何故かお狐様へ嫁入りしていたようで!?
はじまりはいつもラブオール
フジノシキ
キャラ文芸
ごく平凡な卓球少女だった鈴原柚乃は、ある日カットマンという珍しい守備的な戦術の美しさに魅せられる。
高校で運命的な再会を果たした柚乃は、仲間と共に休部状態だった卓球部を復活させる。
ライバルとの出会いや高校での試合を通じ、柚乃はあの日魅せられた卓球を目指していく。
主人公たちの高校部活動青春ものです。
日常パートは人物たちの掛け合いを中心に、
卓球パートは卓球初心者の方にわかりやすく、経験者の方には戦術などを楽しんでいただけるようにしています。
pixivにも投稿しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる