魔境放眼は地獄へ行く

木mori

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第一章

第二十一話・甘~い!

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 会場がざわつき始めて、騙流と衣好花もやってきたが、何もできない補習生状態。

「あの子、死んじゃったのかしら。」「救急車より葬儀車を呼んだ方がいいね。」「ここが死に場所なんて、たくさんの人に看取られたって、あの世で自慢するのかなあ。」

 何の関係もない第三者の逝去。こんな時、世間の冷たさを実感するものである。

 すでに泣き出している楡浬とただ茫然と眺めている無表情な騙流と沈痛な面持ちの衣好花。ざわつきのやまない会場の空気の中で、一陣の風が動いた。

「私に任せて!」

 赤いセーラー服の女子が、ドングリを横にしたような紅色の瞳を輝かせ、目と同じ色の長い髪を靡かせながら、仰向けになっている大悟の前に立ち、そのまま跪くと、大悟の口に自分のそれをドッキングした。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「エエエエ~!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 どよめく楡浬たちと会場の人々を完全スルーして、赤目赤髪女子は大きく息を吸って、大悟の肺に空気を送り込んだ。人口呼吸だ。赤目赤髪女子は何度も吸っては吐く。

「がはっ。」

 大悟が声帯を鳴らした。蘇生したのだ。

「がはっ、がはっ、がはっ。」

 激しく咳き込んだ大悟は目を開いた。

「甘~い。」

 生き返っての最初のフレーズは昔流行った漫才コンビのギャグフレーズだった。

「大悟が生き返った!地獄の底から夜道を這いつくばったわ。」

 ビミョーに慣用句を間違えている楡浬。
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