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第一章
第十四話・エプロン脱ぐ桃羅
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この日の夜。ふたり帰宅した大悟と楡浬。エプロン姿で、玄関で待っていた桃羅。
「お帰り、お兄ちゃん。一日千秋の思いって、すごく重たいんだね。モモはバイトを早めに切りあげて待ってたんだよ。お帰りの夕一パンチラだよ~。」
桃羅はエプロンを脱ぎ捨てて、フィギュアスケーターのように回転を始めた。スカートがキノコのカサのようになった。
「やめてくれ!」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。この速度ならパンツを視認することは不可能だから。モモはその程度の恥じらいは持ってる安心設計だよ。」
「やってること自体が不安の塊だよ。」
大悟の言葉を聞き流した桃羅の視線ベクトルは、サーチしていたが、大悟の腕付近で急停車した。
「お兄ちゃん。ところで、その闇世界のように繋がれた手は何?まさか、愛人二号の魔の魔の魔の魔力に拘束されたってこと?」
「「あっ!」」
大悟と楡浬が同時に埴輪のように開口し、ソッコーで分解した。
「さっき、ママからメールが来たよ。お兄ちゃん、大活躍だったらしいね。あの饅頭人を倒したとか。それはスゴいことなんだけど、ちょっと喉に引っ掛かることがあったり、あったり、あったり。」
「大当たりだ!あったりーん。ゆるゆる、はっじまるよ~。」
「つまんないツッコミをいれるんじゃないよ。すでに自覚してるようだけど、饅頭人の発見の仕方と倒し方に大いに問題があるんだけど。まずは発見の方だね。」
「ギクッ。最近首がよく凝っていてなあ。」
「だったら軽~くへし折るのはカンタンなんだけど。」
桃羅がそう言った時、なぜか楡浬が大悟の首に手を回していた。
「おい楡浬。被告人席から原告側にモードチェンジしてるように見えるのは気のせいか?」
「それはそれ、これはこれ、あれは淫行よ。」
「あれは『アレ』と表記するのがフツーじゃないのか。」
「どうみても破廉恥じゃない。いきなり女子にキ、キ、キスミントするなんて!」
「ずいぶんさわやかに収めたな。」
「そうじゃないよ、お兄ちゃん。キスならモモが年中無休で開店中なんだから、他に行く必要ないんだけど。」
「でも仕方ないだろう。あーするしか饅頭人の判別方法が見つからないんだから。オレだって、好きでキスしたんじゃない。タラリ。」
「その口から溢れ出る体液は大脳のエロ皮質が司令塔じゃないのかな?」
「そんなことない。オレの大脳は魔力を高めることが九割を閉めているはずだ。」
「『閉めて』いるんだ?やっぱり、魔力脳は眠ってるんだ。」
「いや間違った。占めるだ。」
「もう遅い。お兄ちゃんのエロアタマを解剖してやる!」
「ちょっと待て。饅頭人の倒し方は問題ないのか。」
「そうだね。むしろモモ的にはこちらが難問だね。」
桃羅はキッと顔を引き締めて、楡浬を睨みつけた。
「な、なによ。倒し方は『妹の膿(まいのうみ)』がヒントをくれたんじゃないの。」
「その二つ名、ホント嫌味だね。それはそうだけど、虚乳を押し付けろとは言ってないよ。同じポーズならモモにやって欲しいよね、お兄ちゃん。」
「欲しくねえ。オレは楡浬とそういう姿勢を取るのもまっぴらだ。」
「なんですって。アタシはすごくイヤなポーズをガマンしてたのに、そんな言い方するなんて。」
こうして、三つどもえのケンカはヒートアップするばかり。
「そこまで言うならこうするしかない!」
大悟はしかめ面の楡浬を、カーテンを絞るように抱き寄せて、いきなり唇を奪った。
あまりに唐突な出来事に、楡浬はもちろん、桃羅も呆気に取られてしまった。
「オレたちは許嫁なんだから、これぐらいなら不純異性交遊フラグは立たないだろう。」
「う、うん。」
楡浬は綺麗に掃除されたフローリングを見つめていたが視野には入っていなかった。
「お帰り、お兄ちゃん。一日千秋の思いって、すごく重たいんだね。モモはバイトを早めに切りあげて待ってたんだよ。お帰りの夕一パンチラだよ~。」
桃羅はエプロンを脱ぎ捨てて、フィギュアスケーターのように回転を始めた。スカートがキノコのカサのようになった。
「やめてくれ!」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。この速度ならパンツを視認することは不可能だから。モモはその程度の恥じらいは持ってる安心設計だよ。」
「やってること自体が不安の塊だよ。」
大悟の言葉を聞き流した桃羅の視線ベクトルは、サーチしていたが、大悟の腕付近で急停車した。
「お兄ちゃん。ところで、その闇世界のように繋がれた手は何?まさか、愛人二号の魔の魔の魔の魔力に拘束されたってこと?」
「「あっ!」」
大悟と楡浬が同時に埴輪のように開口し、ソッコーで分解した。
「さっき、ママからメールが来たよ。お兄ちゃん、大活躍だったらしいね。あの饅頭人を倒したとか。それはスゴいことなんだけど、ちょっと喉に引っ掛かることがあったり、あったり、あったり。」
「大当たりだ!あったりーん。ゆるゆる、はっじまるよ~。」
「つまんないツッコミをいれるんじゃないよ。すでに自覚してるようだけど、饅頭人の発見の仕方と倒し方に大いに問題があるんだけど。まずは発見の方だね。」
「ギクッ。最近首がよく凝っていてなあ。」
「だったら軽~くへし折るのはカンタンなんだけど。」
桃羅がそう言った時、なぜか楡浬が大悟の首に手を回していた。
「おい楡浬。被告人席から原告側にモードチェンジしてるように見えるのは気のせいか?」
「それはそれ、これはこれ、あれは淫行よ。」
「あれは『アレ』と表記するのがフツーじゃないのか。」
「どうみても破廉恥じゃない。いきなり女子にキ、キ、キスミントするなんて!」
「ずいぶんさわやかに収めたな。」
「そうじゃないよ、お兄ちゃん。キスならモモが年中無休で開店中なんだから、他に行く必要ないんだけど。」
「でも仕方ないだろう。あーするしか饅頭人の判別方法が見つからないんだから。オレだって、好きでキスしたんじゃない。タラリ。」
「その口から溢れ出る体液は大脳のエロ皮質が司令塔じゃないのかな?」
「そんなことない。オレの大脳は魔力を高めることが九割を閉めているはずだ。」
「『閉めて』いるんだ?やっぱり、魔力脳は眠ってるんだ。」
「いや間違った。占めるだ。」
「もう遅い。お兄ちゃんのエロアタマを解剖してやる!」
「ちょっと待て。饅頭人の倒し方は問題ないのか。」
「そうだね。むしろモモ的にはこちらが難問だね。」
桃羅はキッと顔を引き締めて、楡浬を睨みつけた。
「な、なによ。倒し方は『妹の膿(まいのうみ)』がヒントをくれたんじゃないの。」
「その二つ名、ホント嫌味だね。それはそうだけど、虚乳を押し付けろとは言ってないよ。同じポーズならモモにやって欲しいよね、お兄ちゃん。」
「欲しくねえ。オレは楡浬とそういう姿勢を取るのもまっぴらだ。」
「なんですって。アタシはすごくイヤなポーズをガマンしてたのに、そんな言い方するなんて。」
こうして、三つどもえのケンカはヒートアップするばかり。
「そこまで言うならこうするしかない!」
大悟はしかめ面の楡浬を、カーテンを絞るように抱き寄せて、いきなり唇を奪った。
あまりに唐突な出来事に、楡浬はもちろん、桃羅も呆気に取られてしまった。
「オレたちは許嫁なんだから、これぐらいなら不純異性交遊フラグは立たないだろう。」
「う、うん。」
楡浬は綺麗に掃除されたフローリングを見つめていたが視野には入っていなかった。
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