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第二章

第十九話

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耳鼻逆ゾウと花子の間には灰色の巨大な腕があった。灰色な腕の元には同色の人型が見えた。

それはゴーレムだった。ゴーレムは耳鼻逆ゾウよりも大きく、今度は空いている腕で耳鼻逆ゾウの頭を殴った。
耳鼻逆ゾウは悲鳴を上げて、ここまで来た時よりも速い足で逃げ去った。

「牙狼院さん!無事だったんだ!」

しかし意識はない。

『血をくれ~。』

「歯周病ウイルスに冒されてるわけじゃない。血を吸われて、意識が朦朧としているだけじゃん。」

「じゃあ、どうすれば?」

「ちょっともったいないけど、これがいちばん早く効果が出るじゃん。」

木憂華は自分の腕に注射器をプスリ。『チュー』という音を立てて、注射器が自分の血でいっぱいになった。
目の据わった絵梨奈は花子をじっと見ていたが、花子の腕をめがけてガブリと噛みついた。

「痛い!きゅうりさん、何とかしてよ!それにあたしは大丈夫なのか?」

「心配するなじゃん。血液の欠乏で噛みついただけだから、すぐに離せば痛み以外は心配ないじゃん。」

「痛いのが、すごくイヤなんだけど!」

「ガマンするじゃん。そうしてくれてる方がやりやすいじゃん。よぉし。新鮮血液注入!」

木憂華は、花子に噛みついた状態の絵梨奈の背中に注射し、自分の血を流し込んだ。

『うがあああ~!』

絵梨奈は花子から口を離し、頭を抱え込んで跪いた。

「これで、歯周病ウイルスも浄化されたじゃん。」

「牙狼院さん!あたしだよ、ヤマンバ族の山場だよ!」

左腕からの出血をものともせず、花子は絵梨奈を介抱しようとしている。

「・・・。ワタクシはいったい?」

「気づいてよかった!牙狼院さん、あたしのこと、わかるかな。」

「あなた、いったいどなたですの?」

「あたしは、山場花子だよ!」

「わかりませんわ。そんな方、知りませんわ。」

「ええ?牙狼院さん、いったいどうしちゃったんだよ?」

「がろういん?奇妙な名前ですわね。」

「それ、牙狼院さんの苗字だよ。あなたは、牙狼院絵梨奈という名前なんだけど。」

「がろういんえりな?聞いたことがありませんわ。」

「絵梨奈は記憶を失っているみたいじゃん。でも見たところでは大きな問題はなさげじゃん。」

 木憂華は口をポカンと開けている絵梨奈の顔をまじまじと見ている。

「牙狼院さん、牙狼院さん。あたしのことがわからないのか。そ、そうだ。肉だよ、肉。あたしは生肉が好きで、牙狼院は焼いた肉が好きなはずだよ!」

「焼いた肉・・・。ステーキとか、ミディアムレアがいいですわね。」

「やっぱり牙狼院さんだよ。その記憶があって、どうして、あたし、いや、自分がわからないんだよ?」

「そんなこと言われても、わからないものはわかりませんわ。」

「いったい、どうしたらいいんだろう。」
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