恋はデジタル魔法では実りません!

木mori

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第一章

第五十五部分

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「お兄ちゃん!?どうして、こんな時間に。」
言うや否や、顔をこすりまくって、涙を誤魔化した楼里。魔法で使っていた携帯電話の汚れが涙で、手につき、それが顔に伝播していた。
「なんだ、その顔は?」
「顔!?お兄ちゃんとソックリなはずだけど、なのだ。」
ふたりの顔はあまり似ていない。よく見ると、兄妹だとわかる程度である。
「そんなことより、いったいどうしたというんだ。泣いていたんだろう。」
「そういうことはわかるのだな。お兄ちゃんは、うわべだけはやさしいのだ?」
「なんだ、そのひっかかるような言い草は。」
「お兄ちゃんには、絶望なのだ。お兄ちゃんはうりのことが好きじゃないのだ。」
「いや、別にそういうわけじゃ。」
「ならば、うりにキ、キスできるか、それも分厚いキスが。」
「ムリに決まってるだろう。それは好きの次元が違うんじゃないか?」
「やっぱり、お兄ちゃんは四次元のヨンリオヲタクなのだ?」
楼里は壁に置かれてあったヨンリオうさぎを取って、つかさの面前に突き付けた。ヨンリオうさぎは緋景の所有物である。ちなみに無断でさわると、緋景の逆鱗に触れるが、断ってからさわっても激怒される。
「うっ。」
つかさは不意を突かれて、言葉の袋小路に追い込まれた。四次元はともかく、つかさはヨンリオヲタクそのものである。
「パパだけでなく、お兄ちゃんもうりを捨てるのだ?ならばうりは、うりは、ゆりになってやるのだ!」
楼里はトンデモ宣言をしてしまった。

「あたいの楼里ちゃんをいじめるなんて、喜多見つかさって、何様のつもりなんだろうね~。コー、フィー、コー、フィー。」
奇妙な音がするのは、黒いガスマスクのままで、呼吸しているからである。
MFS高校生徒会にひとりで座っているの異形な女子。ツインのツノが生えた戦国武将のような黒光する兜に、黒いマントを着けている。その下には、身体に密着したゴールデンボンデージが見えることから間違いなくMFS高校の生徒である。黒い女子は、マスクの上からでもわかるぐらい苦しそうに呻いた。
「女の子の、エロスエキスが足りない、足りない~。いつも、女の子ニオイを、このベイダーマスクに溜めてるんだけど、楼里ちゃんがいなくなってから、足りなくなった~。」
本人がベイダーマスクと呼んでいる、そのマスクの目と鼻と耳の部分は空いている。外気に触れている部分だけでも美少女であることはわかるが不気味である。
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