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第三章

第十六部分

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「真実だと?どこにそんな戯言の証拠がある?」
「そのために今実験をしてみせたんじゃ。と言っても王子は知らぬようじゃから、ワシが説明してやろう。この徳リンゴジュースは、刺激が強く栄養価も確かに高い。しかし、そのレベルが度を超しておるんじゃ。これを飲んだ者は、副作用に耐えかねて、からだを悪くしてしまう。」
「何を言ってるんだ。百歩、いや万歩譲ってそれが事実だとして、毎日飲んでいるオレや黒メイドたちはなんともない、いや健康体を保っているのはどういうことだ?」
「ガラスがキーワードじゃ。」
「ガラス?いったいなんのことだ。」
「徳リンゴジュースにはすべてオマケが付いているだろう。ガラスの指輪、ネックレス、鉛筆、ペンケースとか日常的に使われるもので、よく肌に触れるものじゃろ。」
「それがなんだと言うんだ。そのオマケガラス製品が徳リンゴジュースのお得感を出しているからこそ、高い価格でも爆発的に売れているんじゃないか。」
「そうじゃ。そのガラス製品に徳リンゴジュースの毒を中和する機能がついてるんじゃ。」
「中和だと?そんなことは聞いたことがないぞ。」
「それはお主が聞かされていないだけじゃ。ほれ、黒メイドたちは黒いガラス靴を履いているじゃろう。」
「そ、その仮説が事実だとして、黒メイドたちはそうだとしても、オレにはそんなアクセサリーはないぞ。」
「今さら何を言っておる。お主は、そのキャンセラーグラスを付けておるではないか。でも最近、それを外す機会が増えてきて、気分がイライラすることがあるじゃろう。それはキャンセラーを外していることが原因じゃ。」
「ま、まさか。そ、そんな。」
膝からガックリと折れた遼斗。床に腕を立てて、うなだれている。
「ワハハハ。これこそ、ワシのリベンジじゃ。どうしてリベンジしなければならないのか、その理由はわからんがのう。」
「こんなことが世間に知れたら大変だ。今のうちに製品回収にかからないと。」
「もはや遅いぞ。ここまでのやり取りはSNSで世界中に流れているからな。ワハハハ。」
凛子はさらに実験と称して、杏名たちを見せる。ガラスの靴を履かせると治ったビデオである。
「こ、こんなことがあったとは!まったく知らなかったぞ。」
 下を向いたままの遼斗は嘆くように言葉を発するだけ。
「そうそう。こやつを治療してやらんとな。杏名たち、アレを持ってくんじゃ。」
 杏名たちはガラスのメイド服を持ってきた。
ふたりは玲羅にガラスのメイド服を着せると、全身カバーされた
「あら。どうしたのかしら。気分が台風一過で晴れ渡った空のように、いっぺんに晴れたわ。」
 玲羅はガラスメイド服を揺らして、ピンピンしたからだを見せて、完全復活を遂げた。
「この通り、大王寺製薬は詐欺会社じゃ。徳リンゴジュースは買ってはならんぞ!」
 凛子の声はインターネットで次々と広がり、大王寺製薬の信用は失墜し、株価は暴落し、やがて大王寺製薬は倒産の憂き目を見たのである。

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