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第三章

第十五部分

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遼斗のところにふたりのメイドがやってきた。杏名と理世である。
ふたりは珍しく黒いガラス靴を履いている。
遼斗は日常の世話を除いて、普段、黒メイドたちから直接話を聞くことはないが、玲羅の姉たちであることを遼斗は知っていたので、ふたりの話を聞くことにした。もちろん遼斗はキャンセラーグラス着用である。
「オ、オニイチャンに直接話ができてうれしいでちゅ。」
「あ、あたいもだよ。こんな日がついにやってくるとは。」
「なんだ、この生き物は。ちんちくりん幼児と、胸無し芳一か?新種生物として、大王寺製薬で臨床実験の材料にするか。」
「オニイチャンがそうしたいなら、あんなは何でもやるちゅ。」
「そうだよ。実験台にして、あんなことやこんなことや、そんなことまでやってくれても本望なんだよ。」
姉妹はメイド服の裾をチラリとめくって、ウインクしている。
「冗談はさておいて、ふたりがオレに話したいこととは何だ。」
「あんなのあんなお願いを完全スルーは悲しいでちゅ。ごほん。玲羅の病気について、治せるというおばあちゃんがこの屋敷にメイドとして働いてるでちゅ。」
「そういうことだ。あたいたちはばあちゃんの分析力を信じているので、一度玲羅をみてもらってはどうかと思ってここに来たんだ。」
藁にもすがる思いがあった遼斗は凛子との面会を了承した。

こうして遼斗の部屋にやってきた凛子。杏名たちは後ろに付いている。
キャンセラーグラス越しに凛子を見つめる遼斗。凛子は黒メイド服を着ており、ほかの黒メイドとさして違わない様子である。
「この女、どこかで見たような気がするが、それは置いておこう。」
「では実証実験を始めるぞ。」
凛子は遼斗を伴って、玲羅のところに移った。
凛子は玲羅を見舞いするように優しく見下ろしている。
「誰よ、あんた。あたしのお姉ちゃん、じゃなかった妹たちをたぶらかしてるんじゃないでしょうね。」
伏せている玲羅は無理して強がっている。
「病気にはこのドリンクが効くんじゃ。」
「ドリンクって、それは大王寺製薬の主力商品の徳リンゴジュースじゃないか!まあ、これが特効薬になるかどうかはわからないが、少なくともからだに悪いということはあるまい。」
遼斗が徳リンゴジュースを飲ませることを許可した。
凛子はリンゴジュースを玲羅に飲ませた。
「これいつも飲んでるジュースじゃない。味はいいわよ。ゴホゴホ。」
徳リンゴジュースを飲んだ玲羅は、咳き込んだ。
「気分はどうじゃ。」
「ゴホゴホ、ゴホゴホ、ゴホゴホ。」
玲羅は喋ることもできず、ひたすら咳き込んでいる。
「フフフ。やはりな。これですべてがハッキリしたぞ。この徳リンゴジュースこそ、赤メイドの病気の原因じゃ!」
「なんだと!貴様、いったい何を言ってるんだ。大王寺製薬の看板商品に泥を塗るつもりか。」
「これが徳リンゴジュースの真実じゃ。」
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