50 / 67
第三章
第十一部分
しおりを挟む
黒メイドたちが廊下でヒソヒソとやっている。そこを玲羅が通ると、急に静かになる。これだけを見ても、黒メイドたちのウワサ話の対象が玲羅であったことが容易に想像できる。
「フンだ。いくら悪いウワサをしようたって、所詮モブな黒メイドごとき。それに首謀者は無能な白メイドだし。できることなんて何もないんだから。」
強気な玲羅だが、表情には険しさが滲み出ていた。
凛子は空き部屋をストーカー部部室として勝手に使い、杏名と理世を集めて部活を行っていた。
「あんたたちは赤メイドの身内じゃろ。あんたたちは赤メイドに恨みつらみはないのか?」
「あんなはれらのこと嫌いでちゅ。全然言うこと聞かないし、あんなのことをちっちゃい言うし。でもたまにたかい、たかい、をやってくれるのはうれしいでちゅ。」
「そうだな。あたいは好きでも嫌いでもないかなあ。あまり害がないっていうか、文句言いながらも家事やってくれてるしなあ。」
「そうじゃろうな。でもそれじゃあ、困るんじゃよ。怒りにまかせて、爆発してもらわないと。」
「そう言われてもあんなはそこまで怒らないでちゅ。」
「あたいもアナちゃんに同じかな。」
「それなら仕方ないのう。強制的に怒ってもらおうかな。」
凛子はドリンクを二本手に持った。胸より下のポジションで構えている。
「なんなんだよ、それは。アナちゃんの目の前だから何かわかるかな?」
「『大王寺製薬徳製リンゴジュース』というラベルが貼ってあるでちゅ。ちっちゃい子のあんなにも飲めるでちゅか?」
「自分でちっちゃい、言うな。もちろん、飲めるぞ。このジュースは略称『徳リンゴジュース』と呼ばれておる。これを飲んだら、胸はパンパンになるし、背は伸びること請け合いじゃ。」
「本当か?それがホントならあたいは飲むよ。」
「あんなもほしいでちゅ!」
「大丈夫じゃ。大王寺製薬のロングセラーヒット商品で、厚生労働省認可済の医薬部外品じゃ。」
「それならあたいは飲んでもいいな。」
「あんなも飲むでちゅ。」
ストーカー部のふたりはドリンクを飲むと、『ぎゅるるる』という音がからだから鳴った。
理世は胸の辺りを押さえて、杏名の背筋がぎゅんと伸びている。
「おふたりさん。ほら鏡を見なよ。」
真白は鏡を二つ示して、理世と杏名をそれぞれ映した。
「む、胸が大きく膨らんだような感覚があるよ!ふあああ~。」
「長年待ち望んでいた背が伸びたでちゅ!ふあああ~。」
ふたりはあまりの嬉しさに、気持ちが切れて、目の色を失った。
「よし。うまくいったぞ。これでおまえたちはワシの奴隷じゃ。ストーカー部としても命令はできたかもしれぬが、心底言うことを聞かせるためには、こうしないとじゃな。なお、この商品が売れている理由は、ガラス製のオマケが付いていることなんじゃ。容器のビンを加工する技術を応用して、ガラスの指輪やブレスレット、定規やペンシルなどの文房具などを付けておる。それがミソなんじゃがな。」
凛子は鏡を床に投げ捨てた。ふたつとも凹面鏡であった。
「フンだ。いくら悪いウワサをしようたって、所詮モブな黒メイドごとき。それに首謀者は無能な白メイドだし。できることなんて何もないんだから。」
強気な玲羅だが、表情には険しさが滲み出ていた。
凛子は空き部屋をストーカー部部室として勝手に使い、杏名と理世を集めて部活を行っていた。
「あんたたちは赤メイドの身内じゃろ。あんたたちは赤メイドに恨みつらみはないのか?」
「あんなはれらのこと嫌いでちゅ。全然言うこと聞かないし、あんなのことをちっちゃい言うし。でもたまにたかい、たかい、をやってくれるのはうれしいでちゅ。」
「そうだな。あたいは好きでも嫌いでもないかなあ。あまり害がないっていうか、文句言いながらも家事やってくれてるしなあ。」
「そうじゃろうな。でもそれじゃあ、困るんじゃよ。怒りにまかせて、爆発してもらわないと。」
「そう言われてもあんなはそこまで怒らないでちゅ。」
「あたいもアナちゃんに同じかな。」
「それなら仕方ないのう。強制的に怒ってもらおうかな。」
凛子はドリンクを二本手に持った。胸より下のポジションで構えている。
「なんなんだよ、それは。アナちゃんの目の前だから何かわかるかな?」
「『大王寺製薬徳製リンゴジュース』というラベルが貼ってあるでちゅ。ちっちゃい子のあんなにも飲めるでちゅか?」
「自分でちっちゃい、言うな。もちろん、飲めるぞ。このジュースは略称『徳リンゴジュース』と呼ばれておる。これを飲んだら、胸はパンパンになるし、背は伸びること請け合いじゃ。」
「本当か?それがホントならあたいは飲むよ。」
「あんなもほしいでちゅ!」
「大丈夫じゃ。大王寺製薬のロングセラーヒット商品で、厚生労働省認可済の医薬部外品じゃ。」
「それならあたいは飲んでもいいな。」
「あんなも飲むでちゅ。」
ストーカー部のふたりはドリンクを飲むと、『ぎゅるるる』という音がからだから鳴った。
理世は胸の辺りを押さえて、杏名の背筋がぎゅんと伸びている。
「おふたりさん。ほら鏡を見なよ。」
真白は鏡を二つ示して、理世と杏名をそれぞれ映した。
「む、胸が大きく膨らんだような感覚があるよ!ふあああ~。」
「長年待ち望んでいた背が伸びたでちゅ!ふあああ~。」
ふたりはあまりの嬉しさに、気持ちが切れて、目の色を失った。
「よし。うまくいったぞ。これでおまえたちはワシの奴隷じゃ。ストーカー部としても命令はできたかもしれぬが、心底言うことを聞かせるためには、こうしないとじゃな。なお、この商品が売れている理由は、ガラス製のオマケが付いていることなんじゃ。容器のビンを加工する技術を応用して、ガラスの指輪やブレスレット、定規やペンシルなどの文房具などを付けておる。それがミソなんじゃがな。」
凛子は鏡を床に投げ捨てた。ふたつとも凹面鏡であった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる