上 下
40 / 67
第三章

第一部分

しおりを挟む
遼斗は地下室で玲羅とずっと女子恐怖症克服特訓を継続していた。
「いくら訓練を繰り返しても全然治らないぞ。いったい、どうしたらいいのか?」
自室でメイド長と人生相談をする遼斗に対して、メイド長はいつものように、無表情+口の端を軽く吊り上げたブキミ系頬筋肉で、回答した。
「王子の病気を治すのことができるのは玲羅さんひとりです。地下室で定時特訓を行うというのは、どうしても非日常という意識がまさってしまいます。病気は根本から治していく必要があります。そのためには、女子と一緒にいることが自分の常であること、つまり女子が傍にいるという意識をなくしてしまうことが重要と考えられます。ニヒヒ。」
 口の端はさらに角度を上昇させた。
「それって、まさか。玲羅とい、い、一緒に。」
「そういうことです。玲羅さんと一緒にいる、これから同室でどうでしょうか。同室なら、王子のやりたい放題、玲羅さんはナスがバナナとなります。ニヒヒ。」
「言ってる意味がわからないぞ。・・・。で、でもオレは次期当主。弱点を克服するためには、どんな試練でもどんな苦行でもどんな快楽でも追求しないといけないからな。はは、ははは、はあ。」
「その意気です。これから行われることは、めくるめく快楽、悦楽、愉悦なのです。楽しみ過ぎて、枯れないようにしないいけません。ニヒニヒ、ニヒヒ。」
「メイド長、楽しそうだな。」
「いえ、いえ、楽しみK点超えです。ニヒヒ。」
「イヤな予感は昼サイズだぞ。」
 こうして、玲羅は自分の意思とは無関係に、遼斗の部屋専属メイドとなった。

 玲羅は廊下でメイド長に対して、口から泡の塊を飛ばしまくっている。
「どうして、あたしがここにいなくちゃいけないのよ。健全な女子が、制御不能な性心だらけの男子と同じ部屋にいたら、やることは一つじゃないの。」
「やることですか?そういうプレイなら、一つではなく、少なくとも四十八手はあろうかと。ニヒヒ。」
「それもそうね・・・って、そういう問題じゃないでしょ!男女がひとつの部屋にいれば、ダンジョンの中を彷徨って、出られなくなって、デレデレしてしまうんだからねっ!」
「それは大王寺家にとっては、却って好都合ですが。ニヒヒ。」
「そうじゃなくて、そういうことが前提となってしまうことが、むにゃむにゃで。」
「何をおっしゃってのか、よくわかりませんが、これは屋敷で働くメイドへの大王寺家としての命令ですから、拒否権などありません。とにかく玲羅さんは今晩から王子の部屋で寝泊まりしていただきます。四十八手を四十九日まで延長可能ですから。ニヒヒ。」
「いやだ~!」
 玲羅の苦情は市役所窓口へのものと同等扱いで処理された。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。 主人公は断罪から逃れることは出来るのか?

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...