上 下
32 / 67
第二章

第二十八部分

しおりを挟む
「あのメイド長、若作りしてるけど、そうとうな年増だよ。頬っぺたをよくごらんよ。一見すると、ツヤツヤに見えるけど、ファンデーションを塗りまくってるよ。それも蛍光色を使って誤魔化してるんだよね。ほら、他の黒メイドさんたちとお化粧のレベルが違うよ。厚みが何倍もあって、地肌地層は深すぎて探し出すことすらできないよ。」
 理世の言葉を聞いた黒メイドたちは、メイド長の頬をガン見した。
「あちちち。」
 その熱過ぎるアイビームに耐え兼ねて、メイド長はすぐ近くにあった水道で手を濡らして頬を冷やした。
 理世は、今度は空に対して告げ口モードを継続した。
「ほら、頬っぺたオバサンの胸を見て見なよ。あの状態で、標準未満はあきらか。それにあれはパッドを入れてるよ、形でわかる。あたいもたまにやってるからね。ふふん。でもちょっと落ち込むけど。」
 慌てて胸をチェックするメイド長。
「そ、そんなことはありません。これはれっきとした本物に似せたモノです。・・・って、私はどうして自分で秘密を公開したのでしょうか?ナヒヒ。」
 メイド長はそれまでに見せなかったような表情で空を見上げて思考を回している。
「りぜ、もっとたかいたかいしてでちゅ。」
「アナちゃん、今そんなことやってる場合じゃないよ。それにこれ以上持ち上げるのは無理だよ。」
「でもどうしてもそうしたいという衝動に駆られているんでちゅ。」
「アナちゃんはしょうがないなあ。ほら二段ロケットだよ。たっ怪、たっ潰、たっ壊~。」
 メイド長が自分の世界にハマっている内に、理世は杏名の腰の辺りを持ち上げて、わずかに高さが上がった。
「怪、潰、壊って、嫌味な漢字でちゅ。そんなことより、雲の向こうに何かがあるでちゅ。」
 杏名が遠い空を指した。すでに夕暮れが深くなっており、わずかに星が見えそうである。
「アナちゃん。わかったよ。ウルトラの星があそこにあるよ。」
「違うでちゅ。何かわからないけど、何かを感じたでちゅ。」
「もうこれ以上、持ちこたえられないよ。あわわわわ~。」
 理世はよろけてしまい、ほぼ肩車状態だった杏名ともどもメイド長に激突した。
「「「あいたたたた。」」」
 杏名と理世は、仰向けに倒れたメイド長の上に乗っかる形で転倒した。
 その瞬間に姉妹はメイド長の年増とは思えないハリのある頬っぺたに唇を『交通事故』してしまった。
「うふ~ん。もしかしたら、私とこういうことをしたいために、わざと告げ口をしたんですね。ニヒヒ。」
「ち、違うでちゅ。これはタダのハダの触れ合いでちゅ!」
「そうだよ。そんな肌にキスとかしたいと思うはずないじゃんか。」
「本音を隠すところとか、ツンデレですねえ。私をこれ以上萌えさせてどうするのですか。もっと深くてキケンなゆりゆりワールドに誘おうとしているのですか?ニヒヒ。」
「やめて朝廷でちゅ!」
「そんな弱体政権はあっという間に交代させます。ニヒヒ。」
「イヤだァ!」
「今日からここで住み込みメイドとして働いてもらいます。これからはメイド長としてのあんなことやこんなことの命令をひたすら奴隷のように聞いてもらいます。ニヒヒ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。 主人公は断罪から逃れることは出来るのか?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...