失楽園パンツの魔王様?

木mori

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第二章

第七部分

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一方、ゲリラのように駐車場の植林の陰に隠れているユリ。いらだちを隠そうともしないし、隠すことができる性格でもない。さかんに長い髪を巻いたり、解いたりしながら、歯も軋ませている。
「全く、あのバカ、女の子と一緒にご飯とかいったい何をしてるのかしら。それってアタシのレギュラーポジション、じゃない、べ、別にどこの女の子と食事しても構わないけど、なんかムカつくわね。それに今いったい何をしてるのかしら。って、アタシもどうしてここにいるのか、よくわからないけど。」
騙流は引き続きだんまりプレイ。ダルマを道具に使用している以上、会話には回せない。初めてゴーヤを食べた幼女のように、顔を歪めていた。
《もう、こうなったら実力行使する!だんまり。》
 騙流は、ダルマをチェーン状に変えて、大悟の首を絞める。
「なにをする?苦しいぞ。」
《お前は女子生徒をブルマンにする極悪人。生徒会として許すわけにいかない。だんまり。》
「あ~、楽になった。そういうことか。」
喋るためにダルマをボードに戻した時点で、攻撃は終わっている。実にマヌケなアタックである。
《し、しまった。また失敗してしまった。会長に怒られる!反省ダルマだ!だんまり。》
騙流はダルマを集めて、反省ザルのイラストを描いた。
「反省するのはいいが、オレには言われのないこと。ブルマンにしてるなんて自覚はない。他人の庭に足を踏み入れるなら、きちんと根拠と理由を示してくれ。生徒会も校則に縛られてるだろう。」
《まるには難しいことはわからない。生徒会長に命令されてるだけ。だんまり。》
「とことん自分の意思がないかわいそうなヤツだな。」
《お前に何がわかる。身寄りのないまるを助けてくれているのは会長。このアパートも会長が借りてくれてるし、学校にも行かせてくれてる。これ以上の恩義はない。だんまり。》
 騙流はチェーンを再度作って、大悟の喉にしっかりと絡ませた。
大悟は喉に手をやるが、首に完全密着したチェーンは揺るがない。そんな中で、大悟は乾いた雑巾を絞るように声を出す。
「ど、どうしてこんなことをする。オレがお前に何かひどいことをしたとでもいうのか。それならば謝るぞ。とにかくこのチェーンを解いてくれ!首も摩擦で熱い!このままでは死んでしまう。」
騙流は首を横に振り、苦悶する大悟をじっと見つめる。その胸中は決して穏やかではなかった。
大悟に優しくされたことが騙流の心を揺さぶっていた。
《宇佐鬼大悟は弁当を譲ってくれた。体調が悪いのかと気遣ってもくれた。そ、それに、お姫様抱っこ・・・もう一度やってほしい。ぽっ。》
騙流は今の生活支援を受けているかりなには大いに感謝しているのではあるが、大悟の優しさはそれとは異質なものであった。経済的支援と気持ちの優しさ。どちらも大切なものであることに間違いはない。
声は出せないが、騙流の精神の葛藤は明らかだった。しかし、与えられたミッションには逆らえない。騙流はチェーンをさらに絞めた。
「ぐ、ぐ、ぐ~。」
もはや大悟は声を出すこともままならない状態となっていた。しかし、頭は解決策を巡らしていた。
ダルマは恐らく磁石で動いていて、磁石は熱に弱い。ならば、ちょっと痛いが、摩擦熱を出そうとチェーンを擦る大悟。首は真っ赤になり、出血も始まった。すると少しチェーンが緩んできた。しかし、騙流は目をしばたかせて、気合いを入れたのか、水をチェーンにかけた。所詮は摩擦熱、水にあっさり敗北して、磁力は見事に復活した。
《磁石が熱に弱いことは先刻ご承知。だんまり。》
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