失楽園パンツの魔王様?

木mori

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第二章

第三部分

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すでにたくさんの客が割引シールを貼る若い男性店員を肉食恐竜のように、じっと見つめている。その中に大悟もいる。このような食品スーパーでは大多数が近所のオバちゃんたちであり、男子高校生がいるのは珍しい。しかし、それを恥ずかしいと思わないのが大悟。桃羅からのミッションを果たすという使命感に燃えていた。
「ピー!それでは特売弁当、ご自由にお買い上げタイム、スタート。店内にお客様による弁当争奪暴風警報を発令します!」
 男性店員の笛と共に、弁当コーナーへの猛ダッシュが始まった。
 大悟は意外に俊足で、真っ先に本日のターゲットであるヒレかつ弁当2個を手にした。
「やったぜ!オレの自慢の足と手捌きテクは今日も健在だ!これであと一個だな。」
 右手を突き上げてガッツポーズの大悟。左手には燦然と輝くヒレかつ弁当2個。と思ったら、左手の上に、もうひとつもみじのような手が重なっていた。
「う。無籠、どうしてこんなところに。」
《まる、毎日、ここで夕食買ってる。だんまり。》
「毎日だと?まさか、ここの弁当がお前の主食なのか。家で料理してくれる家族とかいないのか。」
《その言葉、正解。だから、どうしてもその弁当、必要。だんまり。》
「どうやらわけありのようだな。わかった。じゃあいいや。ひとつはお前のものだ。」
 大悟がヒレかつ弁当のひとつを騙流に渡そうとすると、騙流はもうひとつの弁当も、からだ全体を使って、柔道の横四方固めのように押さえこんだ。
「家族はもう一人いるんだな。まあいい。今回は全部譲ってやるぜ。」
《弁当譲ってくれて。うれしい。でも違う。まる、ひとり暮らし。これ、宇佐鬼大悟の分。だんまり。》
 騙流は妙に恥ずかしそうに、ヒレかつ弁当のひとつを大悟に渡した。
「はあ?どういうことだ。わけがわからないぞ。」
《宇佐鬼大悟、これからまるのうちに来る。だんまり。》
「なんだと?どうしてそんなことをしないといけないんだ。オレもこれから家に帰らないといけないんだが。」
《う、う、う、うえ~ん。まる、宇佐鬼大悟にイジメられた。だんまり。》
 騙流は夕方の買い物客でごった返すスーパーで、迷子になった幼稚園児のように泣き出した。当然、周囲の目線が大悟に集中する。但し、声が出ていないのはいつもの通り。
 大悟は慌てて、超小柄な騙流を抱き上げて、脱兎のごとくスーパーから脱出した。
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