17 / 69
第一章
第十七部分
しおりを挟む
「二階も調べよう。住居部分も調べないとね。」
「ちょっと、待ってよ。いくら借入を延滞してるからと言ったって、そんなところまで踏み込むなんて、不法侵入じゃん。」
いつきもさすがに怒ってクレームをつけてきた。
「不法侵入?つまり、あたしの、いや銀行の回収行為をそう位置付けるワケだね。ふふん。」
再び鼻を鳴らした美散。後向きで、いつきに視線を送っている。
「ではこの紙切れは何かなぁ?」
美散が示したのは事務所にあった電気料金の請求書。
「そ、それがなんなんだじゃん。」
返した言葉が少し震えているいつき。
「ほら、まともな電気使ってないって、顔に書いてるよね。」
「ギクッ!」
いつきは顔の色を失った。ダサい化粧の上からでもわかるような変貌ぶりである。
「このダサい女子にいったい何が起こってるのよ?」
事情がさっぱりわからない亜里栖は、眉間にシワして美散に詰問した。
「さっき請求書を見たら、電気料金だけでなく、ガス料金も払ってなかったよ。しかし、この暮らしぶりから電気、ガスを使ってないなんてあり得ない。つまり、まっとうな電気、ガス以外のエネルギー使用をしているということになる。あとはあんたでもわかるよね。つまり、魔力をエネルギーに変えたということ。それは国家使用だとか、特別に認められた場合を除いて、魔力の不法使用と結論付けられるっていうことになるよ。」
いつきがあっけにとられているうちに、どんどん差し押さえしていく美散。
美散は二階のいつきの部屋にズケズケと侵入した。
「これは回収財源の足しにはなるな。」
美散の視線の先には、いつきの妹の机があった。
「これこれ。延滞債務者は、返す魔力マネーがないとかいいながら、保証人ではない家族に隠しているものさ。」
「それだけはやめて!それは小学生の妹の進学資金じゃん。あたいがだらしない分、勉強に頑張ってる妹には、ちゃんとした道を歩いてもらいたいという両親が貯めた魔力マネーじゃん。」
「貯める魔力マネーがあるなら、返済しろっていうんだよ。むしろ、魔力マネーを隠す格好ないい場所っていうヤツじゃないのかな。」
「どうしてそんなことまで知ってるじゃん?まだ新人銀行員っぽいのに。」
「新人?これは立派な課外授業なんだよ。給料もらってやる以上、責任があるんでな。隣の人みたいに、新人だから知りませんなんて顔はしないよ。業務知識は自分で習得するさ。」
「ポンコツ新人オーラ出してて、悪かったわね。」
「本気でそう思うんだったら、ちゃんと勉強しなよ。あっ、厳密に表現するなら、自己啓発っていうんだけどね。」
「自己啓発?つまり、自分で自分を啓発するっていうこと?」
「読んで字のごとしだよ。社会人の勉強とはそういうものさ。アマチュアの女子高生とは違うんだよ。さあ、無駄話をやめて、他にも魔力マネーを隠していないかな。あったよ。」
美散が指したのは、クマさん貯金箱である。無形資産の魔力マネーが入ってるだけなので、固形の物体は本来不要なのであるが、貯蓄意欲増進のために、貯金箱の上にパネルがあり、画面上でいくら入っているのか、確認できるようになっている。入金は電子的にできるシステムである。
「ちょっと、待ってよ。いくら借入を延滞してるからと言ったって、そんなところまで踏み込むなんて、不法侵入じゃん。」
いつきもさすがに怒ってクレームをつけてきた。
「不法侵入?つまり、あたしの、いや銀行の回収行為をそう位置付けるワケだね。ふふん。」
再び鼻を鳴らした美散。後向きで、いつきに視線を送っている。
「ではこの紙切れは何かなぁ?」
美散が示したのは事務所にあった電気料金の請求書。
「そ、それがなんなんだじゃん。」
返した言葉が少し震えているいつき。
「ほら、まともな電気使ってないって、顔に書いてるよね。」
「ギクッ!」
いつきは顔の色を失った。ダサい化粧の上からでもわかるような変貌ぶりである。
「このダサい女子にいったい何が起こってるのよ?」
事情がさっぱりわからない亜里栖は、眉間にシワして美散に詰問した。
「さっき請求書を見たら、電気料金だけでなく、ガス料金も払ってなかったよ。しかし、この暮らしぶりから電気、ガスを使ってないなんてあり得ない。つまり、まっとうな電気、ガス以外のエネルギー使用をしているということになる。あとはあんたでもわかるよね。つまり、魔力をエネルギーに変えたということ。それは国家使用だとか、特別に認められた場合を除いて、魔力の不法使用と結論付けられるっていうことになるよ。」
いつきがあっけにとられているうちに、どんどん差し押さえしていく美散。
美散は二階のいつきの部屋にズケズケと侵入した。
「これは回収財源の足しにはなるな。」
美散の視線の先には、いつきの妹の机があった。
「これこれ。延滞債務者は、返す魔力マネーがないとかいいながら、保証人ではない家族に隠しているものさ。」
「それだけはやめて!それは小学生の妹の進学資金じゃん。あたいがだらしない分、勉強に頑張ってる妹には、ちゃんとした道を歩いてもらいたいという両親が貯めた魔力マネーじゃん。」
「貯める魔力マネーがあるなら、返済しろっていうんだよ。むしろ、魔力マネーを隠す格好ないい場所っていうヤツじゃないのかな。」
「どうしてそんなことまで知ってるじゃん?まだ新人銀行員っぽいのに。」
「新人?これは立派な課外授業なんだよ。給料もらってやる以上、責任があるんでな。隣の人みたいに、新人だから知りませんなんて顔はしないよ。業務知識は自分で習得するさ。」
「ポンコツ新人オーラ出してて、悪かったわね。」
「本気でそう思うんだったら、ちゃんと勉強しなよ。あっ、厳密に表現するなら、自己啓発っていうんだけどね。」
「自己啓発?つまり、自分で自分を啓発するっていうこと?」
「読んで字のごとしだよ。社会人の勉強とはそういうものさ。アマチュアの女子高生とは違うんだよ。さあ、無駄話をやめて、他にも魔力マネーを隠していないかな。あったよ。」
美散が指したのは、クマさん貯金箱である。無形資産の魔力マネーが入ってるだけなので、固形の物体は本来不要なのであるが、貯蓄意欲増進のために、貯金箱の上にパネルがあり、画面上でいくら入っているのか、確認できるようになっている。入金は電子的にできるシステムである。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる