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day 9 志渡暁
day 9 志渡暁
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俺は自分が何をやったかを知っている。最愛の人を手にかけてしまった。あいつは俺のものになったのに、気づいた時にはこの世にはいなかった。俺は至って冷静だったけど蓮がこの世からいなくなった途端全てどうでも良くなってしまった。もう本当に何に対してもやる気が出ない。案の定顔を青くした母親が俺の状態を確かめ、質問攻めにされる。煩いな。お願いだから俺を異常者として見ないでくれ。俺はちゃんと蓮を愛していたのだ。
数十分で警察が駆けつけ、俺は身柄を拘束される。どこか拘留所らしき所へ連れていかれるらしい。母親が泣き叫びながら俺を呼び止めたが無視した。どうせ人を殺した身。早く罰を受けて楽になりたい。蓮と会えないなら全てどうでもいい。
そんな数日前の記憶に想いを巡らせていると、1人の婦警が俺を呼びに来た。
「面会です」
「パスで」
「それは出来ません」
俺はどんな罵詈雑言を浴びせられるのかと少し身構える。ところが俺に一番最初に会いに来たのは東雲だった。
「…東雲」
「おう。お前元気でやってるか」
「まあまあだな。お前はどうなんだ」
「俺は何も変わらないよ。あ、部活でレギュラー取れそうかも」
「すげえじゃんか、頑張れよ」
「うんありがとう。お前話し方新倉に似てるな。」
新倉、その言葉が口から出た時俺はどんな顔でいたかわからない。ただ、必死に弁明しようと口をぱくぱくさせていた。
「あ、すまんなそう言う意味で言ってねえよ。俺がお前を糾弾するのもお門違いな話だろ。」
「……。」
「まあなんだ、お前新倉といる時だけ生き生きしてたな。心から笑ってたというか…惜しい友達を亡くした」
「………。」
じゃあな、というと東雲はすぐ出て行ってしまった。今更東雲がどうでもいいとは思えなくて、後ろ姿に寂しさを覚えた。
しばらくして東雲と入れ替わりに入ってきたのは新倉の母親だった。俺が本当に蓮を殺したのかという事実確認をし俺がそれを認めると堰を切ったように母親は泣きながら俺にありったけの恨みをぶつけてきた。好きな人の母親だからどれだけ噛みつかれても俺は怒りひとつ覚えなかった。ただ、可哀想だと思った。俺が原因なのに。この人を哀れに思うしかなかった。心が冷え切ってしまって何も響かなかった。
結局俺は俺の親族とも長々と話をしたけれど、何一つ会話を覚えていない。それどころかそれぞれ俺を猟奇的な殺人鬼やおぞましい悪魔の子として見てくるもんだからたまったもんじゃない。もう俺は疲れ果ててしまった。こんな長い人生いらない、どうでもいい。早く新倉に会いたい…
俺は舌の下にしまっておいたプラスチックを齧る。中から粉が溢れる。それを乾いた口で必死に飲み込み、独房でひっそりと眠りにつく。苦しいだろうか。俺の人生はこれで終わりだ。何とも味気ないといえばそうだが。人を殺しておいて苦しみたくもないし、この分際で新倉と会いたいなんて奢りなのかな。意識が、遠のいてゆくー。さようなら。来世に期待。そこで意識はプツッと途切れた。
数十分で警察が駆けつけ、俺は身柄を拘束される。どこか拘留所らしき所へ連れていかれるらしい。母親が泣き叫びながら俺を呼び止めたが無視した。どうせ人を殺した身。早く罰を受けて楽になりたい。蓮と会えないなら全てどうでもいい。
そんな数日前の記憶に想いを巡らせていると、1人の婦警が俺を呼びに来た。
「面会です」
「パスで」
「それは出来ません」
俺はどんな罵詈雑言を浴びせられるのかと少し身構える。ところが俺に一番最初に会いに来たのは東雲だった。
「…東雲」
「おう。お前元気でやってるか」
「まあまあだな。お前はどうなんだ」
「俺は何も変わらないよ。あ、部活でレギュラー取れそうかも」
「すげえじゃんか、頑張れよ」
「うんありがとう。お前話し方新倉に似てるな。」
新倉、その言葉が口から出た時俺はどんな顔でいたかわからない。ただ、必死に弁明しようと口をぱくぱくさせていた。
「あ、すまんなそう言う意味で言ってねえよ。俺がお前を糾弾するのもお門違いな話だろ。」
「……。」
「まあなんだ、お前新倉といる時だけ生き生きしてたな。心から笑ってたというか…惜しい友達を亡くした」
「………。」
じゃあな、というと東雲はすぐ出て行ってしまった。今更東雲がどうでもいいとは思えなくて、後ろ姿に寂しさを覚えた。
しばらくして東雲と入れ替わりに入ってきたのは新倉の母親だった。俺が本当に蓮を殺したのかという事実確認をし俺がそれを認めると堰を切ったように母親は泣きながら俺にありったけの恨みをぶつけてきた。好きな人の母親だからどれだけ噛みつかれても俺は怒りひとつ覚えなかった。ただ、可哀想だと思った。俺が原因なのに。この人を哀れに思うしかなかった。心が冷え切ってしまって何も響かなかった。
結局俺は俺の親族とも長々と話をしたけれど、何一つ会話を覚えていない。それどころかそれぞれ俺を猟奇的な殺人鬼やおぞましい悪魔の子として見てくるもんだからたまったもんじゃない。もう俺は疲れ果ててしまった。こんな長い人生いらない、どうでもいい。早く新倉に会いたい…
俺は舌の下にしまっておいたプラスチックを齧る。中から粉が溢れる。それを乾いた口で必死に飲み込み、独房でひっそりと眠りにつく。苦しいだろうか。俺の人生はこれで終わりだ。何とも味気ないといえばそうだが。人を殺しておいて苦しみたくもないし、この分際で新倉と会いたいなんて奢りなのかな。意識が、遠のいてゆくー。さようなら。来世に期待。そこで意識はプツッと途切れた。
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