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日常生活で浮かんだお話(お題なし)
変わらないもの
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幼い頃、公園でお菓子をくれたり、カリンバを演奏をしてくれるおじさんがいた。当時小学生だった自分は、親切にしてくれるおじさんに何の疑いも抱くことなく、友達のようにお話ししていた。家族や先生以外の大人と話す機会は貴重だ。自然の中で遊ぶ方法や、知らない時代の話、沢山のことを知ることができた。他の大人におじさんの事を話すと、いい顔をする人は少なかった。それでも、何も悪いことをしていないはずのおじさんとお話しすることをやめようとは思わなかった。
時は流れて、自分は大人になった。もうおじさんと話すことはない。忙しい生活の中で真昼の公園に向かうこともなくなってしまったから。あの頃は縁のなかったスーツを身につける。まだ自分に馴染んでいるように思えなくて、なんだか真新しいスーツが浮いて見える。
入社式を終えた帰り、なんとなくあの公園に向かった。少しの間、懐かしい気持ちに浸りたくなったのだ。
今でも、おじさんは温かいメロディを奏で続けていた。その横をほとんどの者が迷惑そうな顔で通り過ぎてゆく。
あの頃、皆はこんなに冷たい目をおじさんへ向けていたのだろうか。それとも、自分がそれに気づいてしまっただけなのだろうか。
ふと、目が合い、思わず立ち止まった。
もう自分のことなんて忘れていると思った。
だけど、おじさんはこう答えた。
「久しぶり。大きくなったね」
それから、時を埋めるように話をした。
本当に他愛もない話だった。帰り道に何を話したか、具体的には浮かばないほどに。それでも、温かい気持ちになったのは確かだ。何を話したか、それよりも、誰と時を過ごしたのかで気持ちが変わることもあるのだと思えた。
そういえば、子どもの頃は誰とでも話ができたのに、いつからだろう、人を会った瞬時に判断して、壁を張るようになったのは。そんな一瞬では、人を知ることなんてできないのに。だが、いつからか、すぐに手に入る情報で物事を決めつけるようになってしまった。
思えば、昔は余るほど時間があった。時間の余裕は、心の余裕なのだろうか。それとも、僕は昔からただ愚かで、あの公園の、名も知らないおじちゃんが心優しかっただけなのかもしれない。
少し暗い思考も過ってしまったが、それはともあれ、久しぶりに会えた友人のおかげで満ち足りた気分だ。時代と共に変わるものがあるなか、変わらないものもある。それを見つけられただけで、僕の心に温かい炎が灯ったようだった。
時は流れて、自分は大人になった。もうおじさんと話すことはない。忙しい生活の中で真昼の公園に向かうこともなくなってしまったから。あの頃は縁のなかったスーツを身につける。まだ自分に馴染んでいるように思えなくて、なんだか真新しいスーツが浮いて見える。
入社式を終えた帰り、なんとなくあの公園に向かった。少しの間、懐かしい気持ちに浸りたくなったのだ。
今でも、おじさんは温かいメロディを奏で続けていた。その横をほとんどの者が迷惑そうな顔で通り過ぎてゆく。
あの頃、皆はこんなに冷たい目をおじさんへ向けていたのだろうか。それとも、自分がそれに気づいてしまっただけなのだろうか。
ふと、目が合い、思わず立ち止まった。
もう自分のことなんて忘れていると思った。
だけど、おじさんはこう答えた。
「久しぶり。大きくなったね」
それから、時を埋めるように話をした。
本当に他愛もない話だった。帰り道に何を話したか、具体的には浮かばないほどに。それでも、温かい気持ちになったのは確かだ。何を話したか、それよりも、誰と時を過ごしたのかで気持ちが変わることもあるのだと思えた。
そういえば、子どもの頃は誰とでも話ができたのに、いつからだろう、人を会った瞬時に判断して、壁を張るようになったのは。そんな一瞬では、人を知ることなんてできないのに。だが、いつからか、すぐに手に入る情報で物事を決めつけるようになってしまった。
思えば、昔は余るほど時間があった。時間の余裕は、心の余裕なのだろうか。それとも、僕は昔からただ愚かで、あの公園の、名も知らないおじちゃんが心優しかっただけなのかもしれない。
少し暗い思考も過ってしまったが、それはともあれ、久しぶりに会えた友人のおかげで満ち足りた気分だ。時代と共に変わるものがあるなか、変わらないものもある。それを見つけられただけで、僕の心に温かい炎が灯ったようだった。
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