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再会2
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リリカの出現に隠れ家は騒然となった。
再会を喜ぶ者や、突然いなくなったリリカを責める者もいた。
「まあまあ! リリカちゃん! あんた……」
ウルミラは言葉を失って、呆然となった。
「ウルミラさん、お久しぶり。今更会わせる顔もないんだけど……どうしても詑びを入れておかなくちゃと思って……親切にしてもらったのにさ」
「そんな事はいいんだけど……あんた、心配したんだよ! スリーキングを追っていったんじゃないかって」
ガイツは自分の洞穴でごろごろと寝転んでいた。ウルミラは顔を会わせれば所帯を持てとうるさいし、ライカやシンの幸せそうな顔を見るのもはがゆい。
だが、洞窟内がやんやとうるさいのでふと顔を上げた。
「何だ?」
ガイツはそっと外の様子を伺った。岩の橋から下を見る。
「!」
ガイツはさっと入り口を閉めた。
床に座り込んだまま、大きく息をついた。心臓がどきどきとする。
「リリカ!」
仲間が集まっている中心にいる赤い髪の女はリリカに違いない。
「ど、どうして……どうしよう」
ガイツは全くリリカに未練たらたらだった。どうしても忘れられない女だった。
もう一度会いたいと思っていたが、向こうから現れるとどうしていいか分からない。
「お頭! お客さんですよ! 珍しいお客さん!」
ウルミラが上ってきて、ガイツに声をかけた。
「何だ! うるせえな!」
ガイツは動揺を悟られまいと、平静を装った。
「全く。昼寝もできねえ」
ぶつぶつと文句を言いながらもまだ心臓が激しく動いている。
平気そうな顔で下に降りて行くと、仲間がいっせいに、
「お頭! リリカですよ!」
「リリカが、カーラを助けてくれたんですって!」
「お頭、よかったねえ」
などと、叫んだ。
「うるせえ! いっせいにしゃべるな! 何が何だって?」
リリカが輪の中心から出て来て、
「お久しぶり」
と言ってほほ笑んだ。ガイツの心臓がまた跳ね上がる。
「リリカ……久しぶりだな」
「ええ」
優しい笑みを浮かべるリリカは少し女らしくなったようだとガイツは思った。
少し背が伸びたようだし、身体つきも肉がついて娘っぽくなった。丸かった顔が細長く大人の顔に変わっている。髪の毛も随分伸びて、仕草も女っぽいし、変わらず白い肌で愛くるしい顔だった。だが、腕や足に無数の切り傷がついているのは戦っている証拠だろう。「今更、会わせる顔もないんだけど……」
リリカが口を開いた瞬間に、
「その通りよ!」
ライカがリリカとガイツの間に割り込んできた。
「あんた、今更のこのこ戻ってきて、居場所があると思ってるんじゃないでしょうね! あんたの事なんか、皆忘れてたわよ! 頭だってね、あんたには愛想をつかしてるんだからね!」
リリカはくすっと笑った。
「全く、ライカさんの言う通りだわ。本当に申し訳ないとは思ってるの。あんなに親切にしてもらったのに……でも、どうしても、借りた物を返しておきたかったから」
「借りた物?」
ガイツが不思議そうに言った。
「ええ、馬と剣を……」
「それはお前にやった物だし……」
「あたしには少し大きいみたいなの。今は自分に合った物を手に入れたから、いいの。それが気になってたから。馬は外につないであるわ。どうもありがとう」
リリカはまた優しく笑った。
「すましちゃってさ!」
ライカが面白くない顔で意地悪く言った。
「あんた、今ごろ帰って来ても、頭はもう渡さないわよ!」
ライカはその後ろで抱いていたシンから子供を奪うと、
「頭にはもう子供だっているんだから! あたしが生んだの! 頭の子供をね!」
いっせいに仲間達が、
「ええ!?」
と叫んだ。
ガイツ自身もぎょっとなる。
「まあ! 本当なの?」
リリカは嬉しそうな顔でライカに走り寄ると、
「まあまあ! 可愛いわね! ライカさんに似てるかな? まあまあ、おめでとう!」
と言った。リリカは続けて、
「知ってれば、お祝いに何か持ってきたのに! お祝いは何がいいかな?」
とガイツの顔を見た。
「……あんた、それ、本気で言ってるの?」
ライカがリリカを睨む。
「え? 本気に決まってるじゃないの! わあ、可愛いなあ。赤ん坊を見ると、自分も子供が欲しくなるよねえ」
と言ってリリカが笑った。
その笑顔は二年前にガイツが見惚れたままの笑顔で、ガイツはまた胸がぎゅっと苦るしくなった。
再会を喜ぶ者や、突然いなくなったリリカを責める者もいた。
「まあまあ! リリカちゃん! あんた……」
ウルミラは言葉を失って、呆然となった。
「ウルミラさん、お久しぶり。今更会わせる顔もないんだけど……どうしても詑びを入れておかなくちゃと思って……親切にしてもらったのにさ」
「そんな事はいいんだけど……あんた、心配したんだよ! スリーキングを追っていったんじゃないかって」
ガイツは自分の洞穴でごろごろと寝転んでいた。ウルミラは顔を会わせれば所帯を持てとうるさいし、ライカやシンの幸せそうな顔を見るのもはがゆい。
だが、洞窟内がやんやとうるさいのでふと顔を上げた。
「何だ?」
ガイツはそっと外の様子を伺った。岩の橋から下を見る。
「!」
ガイツはさっと入り口を閉めた。
床に座り込んだまま、大きく息をついた。心臓がどきどきとする。
「リリカ!」
仲間が集まっている中心にいる赤い髪の女はリリカに違いない。
「ど、どうして……どうしよう」
ガイツは全くリリカに未練たらたらだった。どうしても忘れられない女だった。
もう一度会いたいと思っていたが、向こうから現れるとどうしていいか分からない。
「お頭! お客さんですよ! 珍しいお客さん!」
ウルミラが上ってきて、ガイツに声をかけた。
「何だ! うるせえな!」
ガイツは動揺を悟られまいと、平静を装った。
「全く。昼寝もできねえ」
ぶつぶつと文句を言いながらもまだ心臓が激しく動いている。
平気そうな顔で下に降りて行くと、仲間がいっせいに、
「お頭! リリカですよ!」
「リリカが、カーラを助けてくれたんですって!」
「お頭、よかったねえ」
などと、叫んだ。
「うるせえ! いっせいにしゃべるな! 何が何だって?」
リリカが輪の中心から出て来て、
「お久しぶり」
と言ってほほ笑んだ。ガイツの心臓がまた跳ね上がる。
「リリカ……久しぶりだな」
「ええ」
優しい笑みを浮かべるリリカは少し女らしくなったようだとガイツは思った。
少し背が伸びたようだし、身体つきも肉がついて娘っぽくなった。丸かった顔が細長く大人の顔に変わっている。髪の毛も随分伸びて、仕草も女っぽいし、変わらず白い肌で愛くるしい顔だった。だが、腕や足に無数の切り傷がついているのは戦っている証拠だろう。「今更、会わせる顔もないんだけど……」
リリカが口を開いた瞬間に、
「その通りよ!」
ライカがリリカとガイツの間に割り込んできた。
「あんた、今更のこのこ戻ってきて、居場所があると思ってるんじゃないでしょうね! あんたの事なんか、皆忘れてたわよ! 頭だってね、あんたには愛想をつかしてるんだからね!」
リリカはくすっと笑った。
「全く、ライカさんの言う通りだわ。本当に申し訳ないとは思ってるの。あんなに親切にしてもらったのに……でも、どうしても、借りた物を返しておきたかったから」
「借りた物?」
ガイツが不思議そうに言った。
「ええ、馬と剣を……」
「それはお前にやった物だし……」
「あたしには少し大きいみたいなの。今は自分に合った物を手に入れたから、いいの。それが気になってたから。馬は外につないであるわ。どうもありがとう」
リリカはまた優しく笑った。
「すましちゃってさ!」
ライカが面白くない顔で意地悪く言った。
「あんた、今ごろ帰って来ても、頭はもう渡さないわよ!」
ライカはその後ろで抱いていたシンから子供を奪うと、
「頭にはもう子供だっているんだから! あたしが生んだの! 頭の子供をね!」
いっせいに仲間達が、
「ええ!?」
と叫んだ。
ガイツ自身もぎょっとなる。
「まあ! 本当なの?」
リリカは嬉しそうな顔でライカに走り寄ると、
「まあまあ! 可愛いわね! ライカさんに似てるかな? まあまあ、おめでとう!」
と言った。リリカは続けて、
「知ってれば、お祝いに何か持ってきたのに! お祝いは何がいいかな?」
とガイツの顔を見た。
「……あんた、それ、本気で言ってるの?」
ライカがリリカを睨む。
「え? 本気に決まってるじゃないの! わあ、可愛いなあ。赤ん坊を見ると、自分も子供が欲しくなるよねえ」
と言ってリリカが笑った。
その笑顔は二年前にガイツが見惚れたままの笑顔で、ガイツはまた胸がぎゅっと苦るしくなった。
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