魔法少女、吉田さん。

猫又

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「ほら、困った事になったよね。学校一の美少女の幼馴染みだからって、我が物顔で毎日ラインしたり、後をつけたり、細山さんの友人まで中傷したり。最終的には拒絶を恨んで絞め殺し、死体を犯すなんてさ。あんた散々に残念な人だねぇ。自分の事を客観的に見られない生き物って本当に可哀想。ゲゲゲ」
「な、なんだよ。なんで僕がそんな事を言われなきゃならないんだ! 理乃も竜樹も何とか言ってくれよ!」
 理乃へ向かって言ったけど、理乃はそっぽを向いて頭を抱え込んだ。
「何を言っても伝わらないでしょ? ずっとそうなの。何度拒絶しても駄目なの。話を理解しないの。どこか違う世界に住んでるの。こいつはおぞましい化け物なのよ!」
 と理乃が涙声で叫んだ。
 やっぱり何を言ってるのか分からないけど、僕だけは理乃の味方だ。
「理乃、君は疲れてるんだよ。生き返ったばかりで混乱してるんだ。ゆっくり休んだ方がいい」
 理乃がいきなり口を覆っておえっと嘔吐いた。
「理乃!」
 と手を出した瞬間に、竜樹が僕の身体を突き飛ばし後ろへひっくり返ってしまった。
「寄るな! 姉ちゃんの名前を気安く呼ぶな! 汚らわしい化け物め!」
「ててて、酷いじゃないか、竜樹、どうしてそんなに」
「吉田さん、姉ちゃんには復讐なんか出来ない。一刻も早くこいつを地獄に送ってくれないか。それで、姉ちゃんから嫌な記憶を消してあげて……お願いします」
 竜樹が吉田さんに向かって頭を下げる。

「ゲゲゲ、あい分かったよ。じゃ、行こうか、まっちゃん」
「え? ど、どこへ? 僕は理乃に話があるんだ。ずっと言えなかったけど告白したい……」
「ああ、もうそういうのいいから。黙って、しゃべるな。何も考えるな。お前はこれから地獄で鬼の糞を食らうウジ虫になるんだよ。何億年もね」
「え?」


 急激なめまいと身体の衝動。
 そしてきつい臭気。
「く、くさい。臭すぎる」
 目を開けるが、つんと臭気が染みて涙が出てきいし、長い間は目を開けてられない。
 腕を動かそうとしたら柔らかい粘土みたいな物に触れた。
 ねちょねちょしていて、身体が動かない。
 自分の身体は四方八方それに囲まれていて自由に動けないし、僕のすぐ側には大きな虫のような物が蠢いていた。
「ここが地獄? に、逃げなきゃ!」
 身体を必死に動かして移動しようにも、頭の上ならまたぼとぼとっとナニカが落ちてきて、僕の行動を抑制する。
「なんだよ! これ! 誰か助けてくれ!」
 僕は大声で叫んだ。
 口を開いた瞬間に、それが口の中に入ってきた。
「げええええええ!」
 それは糞だった。
 吐いても吐いても、逆に口内に入ってくる糞。
 隣を見ると僕と同じ大きさのウジ虫がいた。
 丸く白い身体がうねうねと動いている。
「ええええ!」
 こんな巨大なウジ虫、見た事がない。 
「助けてくれ……助けて!」
 大声で叫んではっと自分の手……手はない。足もだ。
 くねくねと動く自分が白いウジ虫だった。

 糞はどんどん落下してきて、僕らの上に溜まってくる。
 それから逃れる為に上に上に這い上がる。
 糞はどんどん落下してくる。
 次々とウジ虫達が生まれながら糞を喰いながら蠢いている。
 脳内に蘇る魔法少女吉田さんの残酷な言葉を反芻する。
 僕は糞を吐きながら糞を喰う。

「細山さんの具体的な記憶は消してもね、ずっとまとわりつく正体不明の不安。細山さんは記憶から消えた化け物に怯えて恋も出来ない淋しい人生を数回送る。他人に生まれ変わった弟と出会い幸せに暮らすようになるまでは何度も何度も、怯えて淋しい一人ぼっちの輪廻転生を繰り返す。お前のせいでな」
 と吉田さんの声がした。
「助けて! 僕が悪かった! 助けて! 理乃! 吉田さ……ぐばぁ!……た、たすけ」
「助けねーよ。お前は二度と輪廻転生しない。何億年もずっと糞を食らうウジ虫だよ。じゃーね、まっちゃん。あ、でも自我の崩壊を防ぐ魔法をかけてあるからお前は気が狂う事も出来ない。ま、がんばって、何億年もね。ゲゲゲ」

 何億年も……
 ウジ虫……
 鬼の糞を喰らう……

 誰か僕を殺してください……
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