殺人鬼転生・鏖の令嬢

猫又

文字の大きさ
上 下
50 / 63

魔王の右腕

しおりを挟む
「賀茂さんからの報告だと、隼人の友人の宮田君は、悪魔崇拝の教団に関わっていると考えるのが妥当だな」、手にしていた皇宮警察本部からの報告書を正人は机の上に置いた。
「そうじゃな、知識なしにいきなり上位悪魔は、呼び出せんからな」と、長老は棚の上で丸まって寝ながら薄ら目を開ける。
「DDのデータベースとの照合で、最近世界中で活発に活動している教団がある。日本でも活動を始めているのかも知れないわ」と、茜はパソコンの画面を見ながら話した。
「茜、どこの教団か分かるか?」
「黒薔薇十字軍、アメリカを本拠地に活動している教団」
大事おおごとにならなければ良いが、俺達はいつでも動けるよう引き続き情報収集に専念するから」と、正人は煙草を加え給湯室に入って行った。
 
 賀茂は、宮田宅で押収した宮田千尋のパソコンの情報解析が出来たので、DDへは報告書で知らせて来た。彼は、黒薔薇十字軍のホームページにアクセスし、集会に参加していた形跡があった。
 誰もが持つ不安を材料にしたり、強い力が手に入るなどの文句で若者を中心に勧誘しているサタニズム教団、実際に怪事件を起こしたり悪魔を召喚させたなどの報告がDD本部にも入っていた。
 隼人には、何故、彼がこのような教団に関心を持ったのか分からなかった。
 宮田君に友人が少なかったのは事実だ。
 彼とは大学で知り合ったが、それまでの彼を知らない。
 もしかしたら、俺の知らない悩みや苦悩があったのかも知れないな。
 友人気取りで、本当は彼の事を理解出来ていなかったのかも。
 自分の机に着席し塞ぎがちに考え込む隼人に、給湯室から出て来た正人が声を掛けた。
「悩むなよ、隼人、君に責任がある訳では無いんだから」
「そうですが、友人と思っていたのに。悩んでいるなら話をして欲しかった」
 ドカッと勢いよく正人は自分の席に座ると、「誰しも話せない事はあるからな」
「そうですよね、悩むより宮田君が見つかるよう、今は僕が出来る事をするしかないですよね」
「そうだよ、それで良い」
「今日は、会議なのですよね? 桜は、参加しなくて良かったのですか?」
「ああ、今日も賀茂さんのサポートに行っているから参加出来なかったんだ」
「その方が、都合は良いのじゃ」
「そうよね、会議の本題はこれからだからね💛」
 
 長老と茜は、何かを企んでいる。特に茜の獲物を狙うような目に隼人は、何か嫌な予感がして額から汗が滲み出た。
「何か、不穏な空気が流れていますけど。本題とは何ですか?」
「本題は、お前と桜の事じゃ」と、寝ていた長老が正人の机の上に座った。
「桜と僕の事ですか・・・」
「凄く、重要な事なのよ。隼人君!」
 隼人は正人の方を見たが、彼はわざと目を逸らした。長老と茜が中心になってこれから始まる本題に突入する。
 な、何を話し合うの?
 正人さんは目を背けるし、茜さんと長老の目が真剣で怖い。
 嫌な感じしかしない雰囲気に隼人は、そそくさと事務所から逃げ出したくなった。
「薄々、気が付いていると思うけど、桜はあなたに気がある」
「僕にですか。それは、茜さんの女の勘か何かですか?」
「簡単な事じゃよ、小僧。命がけで自分を助けてくれた男性に一目置くのは当然じゃろ。惚れられたのじゃよ」
「桜が、俺に・・・、いや、僕に惚れたのですか?」
「そうよ、本人に直接聞いたら否定するでしょうが、私の見立てでは本気ね♪」
「冗談はやめてくださいよ、長老も茜さんも」
「だからこそ、君には理性をしっかりと保ってほしいんだよ」と、さっきまで自分には関係ない素振そぶりをしていた正人が口を開いた。
「僕には、良く分かりませんので、ちゃんと説明してくださいよ」
「桜にはね、トラウマがあるの。幼い時に負った心の傷、多分、それが原因で今まで異性を遠ざけ恋愛を避けていたようなの」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

悪役令嬢に転生したので、剣を執って戦い抜く

秋鷺 照
ファンタジー
 断罪イベント(?)のあった夜、シャルロッテは前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知った。  ゲームシナリオは絶賛進行中。自分の死まで残り約1か月。  シャルロッテは1つの結論を出す。それすなわち、「私が強くなれば良い」。  目指すのは、誰も死なないハッピーエンド。そのために、剣を執って戦い抜く。 ※なろうにも投稿しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

処理中です...