殺人鬼転生・鏖の令嬢

猫又

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葛藤

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「ソフィア様! 落ち着いてください。今、それだけの勢いの魔力を放出すれば屋敷どころかこの辺り一帯、焼け野原ですよ」
 とローガンが言った。
「うるせえよ、お前の指図は受けねえ……」
「ソフィア様、ここで子供達だけ殺してそれで気が済みますか? 伯爵夫妻は子供達と弟が焼け死んでもたいして悲しみにはくれないでしょう。まだまだ復讐の相手はおりますよ」
 それに続いてワルドが、
「ソフィア様、明日、庭師の夫婦がやってきます。ようやく居所が判明しまして、呼び寄せる事に成功しました」
 と言った。
 それで気がそれたのか、ソフィアの髪と目の色が元に戻り、爆発しそうな魔力はその勢いを消した。
「庭師の夫婦?」
「さようでございます。屋敷を追われて苦労をしておりましたが、ソフィア様の元でまた屋敷の庭を手入れしてくれる事でしょう」
「そう。それは良かった」
「はい」
 ワルドは内心、胸をなで下ろした。
 凄まじいソフィアの魔力の爆発に巻き込まれれば、元魔王の右足だろうが今はまだなすすべなく消滅してしまう事は明白だ。
「そっか、まだ伯爵夫婦がいたっけな」
 ローガン、エリオット、マイア、メアリもほっと息をついた。
 ローガンだけは苛立ちを隠し平静を装ったが、ソフィアを説得したのがワルドであることに苛ついていた。
 眷属は増え続けるが、皆がソフィアの関心を引き、その素晴らしい魔力の恩恵にあずかりたいと願っている。
「ソフィア様、ケイトの死をお望みなら俺が真っ二つに引き裂きましょうか? それにフレデリックとオルボンも」
 とローガンが低い声で言った。
「駄目よ。オルボン様にはわざわざご足労いただいたのだから、ケイト姉様としばらく過ごしていただいたらいいんじゃないかしら。お酒とお食事も用意して差し上げたらどう? ローガン、オルボン様をお姉様のお部屋にご案内して差し上げて。マイアとメアリはケイト姉様を風呂で綺麗にしてあげて。初夜だもの」
 とソフィアが言い、マイアとメアリがニヤニヤと嬉しそうな顔をした。
「嫌よ、嫌ぁ」
 と泣き叫ぶケイトを引きずるようにマイアとメアリが連れて行った。
 ローガンがふうっと息をついて手の平をナイト・デ・オルボンにかざすと空間が歪み、オルボンの姿は歪みに飲み込まれ消えた。

 残ったのはソフィアとエリオットにワルド、そしてフレデリックだった。
 フレデリックはソファからずれ落ちて、テーブルとソファの間にいた。
 腰を抜かしてしまい立ち上がる事が出来ないでいたが、そろそろと四つん這いになって扉の方へ移動しようとしていた。
「ソフィア様、フレデリック叔父様はどうするの?」
 エリオットが言い、その声にフレデリックはギクッと動きを止めた。
「お願いだ……助けてくれ……死にたくない……君はソフィアじゃないのか? 何者? それにローガンやエリオットも……人が変わってしまったのか? 誰でもいいよ、ただ私を殺さないで……助けて」
 フレデリックはか細い震える声で懇願した。
 ソフィアはエリオットとワルドを見て、
「魔王の左足と右足だっけ? あなたたちにあげるわ。幼女に手を出す男は死んだらいいと思うんだけど。食うなり何なりすれば」
 と言った。
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