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由美
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「お店が忙しいクリスマス前に新井君に抜けられちゃ困るかしら?」
それからやかましく鳴り続ける音楽デッキの音量をストップさせてから、車外に出た。
もう一度トイレに入って、手を洗う。切れそうなほど冷たい水だった。
最初にやっつけたボディガードの死体はそのまま入り口で倒れたままだ。
美里は手をタオルで手を拭きながらその死体をまたごうとした。
「ぐっ」
足首を捕まれた。ボディガードの男だ。
首を切られているのに、まだ息絶えてなかったようだ。
男の力は強力で、締め付けられる足が痛んだ。骨が折れてしまうかもと思うほどの力だった。体勢が崩れて、トイレの壁に背中が当たった。足を捕まれたまま中腰になってしまって、逃げられない。完全に油断していて、美里は他の道具を車の中に置いたままだ。
男が這いずりながら美里に迫る。首が半分切れて息も絶え絶え状態なのに、美里を睨みつけて立ち上がろうとした。美里は足を掴まれていて、やつは美里の足を掴んだまま、力の均衡がぎりぎりでどちらも動けないでいた。ポケットに携帯電話があるはずだと思った瞬間に力の均衡が崩れた。男はがっと力任せに起き上がった。目は白濁して、首の切り傷はぱくぱくと動いている。上から襲いかかられ、逃げようと後ろを向いた時に羽交い締めにされた。
ああ、もう駄目かも。と思った。
力技ではとても大男には適わない。頭を掴まれたので、そのまま首をねじ切られると思った。ぎりぎりと頭が締め付けられる。骨がきしむ、今にも頭蓋骨が砕けそうだ。
だが、ぎゃっという妙な声がして男の太い腕が首から外れた。
美里はその場にしゃがみこんで必死で空気を吸い込んだ。その背後でどだっと音がして、再びボディガードの男の身体は床に倒れ込んだ。振り返るとボディガードは宙を見上げて、
「ゆ、許してくれ……」
と言った。それから急に頭をかきむしるような動作をした。
ぶちぶちっと自分の髪の毛を引きちぎる。
爪が顔の皮膚に食い込み、何本もの赤い筋が走った。
それから身体を起こすと、自分の半分切れた首筋に手を差し込んだ。
ずぶずぶずぶと手が首の傷に入りこんでいく。
新たな傷が広がり、また出血が始まった。
肉が掻き出され、白い骨が見えた。
男は自分の首の骨を掴んだまま、息絶えた。
男の行動が不可解で、さすがの美里もしばらくは動けなかった。
気がつくと目の前に女性が立っていた。
顔は青白く、目には生気がない。口の周囲は赤黒く汚れている。
黒髪がばさっと広がって、乱れていた。
着ている物は酷く乱れ、破れ、血や泥で汚れていた。
素足のままでそこに立っていた。
ざわっと鳥肌がたった。
彼女はこの世の人ではない、と感じた。
彼女の血で汚れた口元が動いたような気がした。
だが、実際には美里のすぐ背後の耳元で声がした。
すうーっと寒気がして美里は凍り付いた。
だが、彼女は、
「ありがとう、お兄ちゃんをよろしくね」
と言ったのだ。
それからやかましく鳴り続ける音楽デッキの音量をストップさせてから、車外に出た。
もう一度トイレに入って、手を洗う。切れそうなほど冷たい水だった。
最初にやっつけたボディガードの死体はそのまま入り口で倒れたままだ。
美里は手をタオルで手を拭きながらその死体をまたごうとした。
「ぐっ」
足首を捕まれた。ボディガードの男だ。
首を切られているのに、まだ息絶えてなかったようだ。
男の力は強力で、締め付けられる足が痛んだ。骨が折れてしまうかもと思うほどの力だった。体勢が崩れて、トイレの壁に背中が当たった。足を捕まれたまま中腰になってしまって、逃げられない。完全に油断していて、美里は他の道具を車の中に置いたままだ。
男が這いずりながら美里に迫る。首が半分切れて息も絶え絶え状態なのに、美里を睨みつけて立ち上がろうとした。美里は足を掴まれていて、やつは美里の足を掴んだまま、力の均衡がぎりぎりでどちらも動けないでいた。ポケットに携帯電話があるはずだと思った瞬間に力の均衡が崩れた。男はがっと力任せに起き上がった。目は白濁して、首の切り傷はぱくぱくと動いている。上から襲いかかられ、逃げようと後ろを向いた時に羽交い締めにされた。
ああ、もう駄目かも。と思った。
力技ではとても大男には適わない。頭を掴まれたので、そのまま首をねじ切られると思った。ぎりぎりと頭が締め付けられる。骨がきしむ、今にも頭蓋骨が砕けそうだ。
だが、ぎゃっという妙な声がして男の太い腕が首から外れた。
美里はその場にしゃがみこんで必死で空気を吸い込んだ。その背後でどだっと音がして、再びボディガードの男の身体は床に倒れ込んだ。振り返るとボディガードは宙を見上げて、
「ゆ、許してくれ……」
と言った。それから急に頭をかきむしるような動作をした。
ぶちぶちっと自分の髪の毛を引きちぎる。
爪が顔の皮膚に食い込み、何本もの赤い筋が走った。
それから身体を起こすと、自分の半分切れた首筋に手を差し込んだ。
ずぶずぶずぶと手が首の傷に入りこんでいく。
新たな傷が広がり、また出血が始まった。
肉が掻き出され、白い骨が見えた。
男は自分の首の骨を掴んだまま、息絶えた。
男の行動が不可解で、さすがの美里もしばらくは動けなかった。
気がつくと目の前に女性が立っていた。
顔は青白く、目には生気がない。口の周囲は赤黒く汚れている。
黒髪がばさっと広がって、乱れていた。
着ている物は酷く乱れ、破れ、血や泥で汚れていた。
素足のままでそこに立っていた。
ざわっと鳥肌がたった。
彼女はこの世の人ではない、と感じた。
彼女の血で汚れた口元が動いたような気がした。
だが、実際には美里のすぐ背後の耳元で声がした。
すうーっと寒気がして美里は凍り付いた。
だが、彼女は、
「ありがとう、お兄ちゃんをよろしくね」
と言ったのだ。
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