56 / 58
転校生がたくさん
しおりを挟む
土御門本家半壊、式神の住まう庭半壊、神道会館全壊、駐車場、事務所を含む自社ビル全壊、被害総額○○億円也。
以上の損害を出して土御門家は修復工事が始まり、陰陽師達はまた祈祷、祓いなどの生業を勤め、弟子達は修行に励み、学園の生徒達も元の生活に戻った。
事件を起こした張本人の如月は次代を解任、一族も破門という処罰をくだされそうだったが、本人の反省もあり破門だけは免れた。他県の分家預かりになり、心身共に修行のやり直しという事態に収まった。如月が本家を去る日、その傍らに川姫の姿があった。彼女はにこやかな顔で如月に付き従い、共に去って行った。
如月の四天王としていた桔梗、弓弦、薔薇子、尊にもそれなりの叱責があり、特に薔薇子は人間の魂抜きをした罪を問われた。集めた千個の魂を元の人間に戻すまでは、土御門薔薇子の名を名乗る事を禁じられた。薔薇子の卜いの館も閉鎖、万が一、魂を千個元に戻せなければ薔薇子の霊能力を封じるにあたる、との勅命さえ出されたのだ。その沙汰に薔薇子は腐ったが仕方なくせっせと病人の所へ通い、加持祈祷と称して魂戻しの術を施している。
当主の左京は自ら退陣を表明したが、こんな壊滅状態で退陣される方が無責任で困る、本家の立て直しが先、さらに如月の抜けた次の代を育てなければならないという事でまだ忙しく当主としての責任を果たしている。
「ほな、授業はこれでおしまいや」
と教壇に立っていた紫亀が言った。
「桜子、お昼に行くにょん!」
ブレザー制服を着た水蛇が桜子の席に走ってきて立ってそう言った。
「う、うん」
「なんか最近、転校生多くない?」
と真理子が後ろの席から小声で言った。
「そ、そう?」
桜子はドキドキしながら答えた。
「だって、ほら、水蛇さんに、緑鼬君でしょ? 同じクラスに何人も来るなんてねえ。しかもみんなちょっと変わった名前よね」
「う、うん。この学園、私立だし」
と自分でも何を言っているのか分からない答えを言いながら、桜子はランチバッグを持って立ち上がった。
「真理子もカフェ行こうよ」
「うん」
「早く早くー!!」
幾ら私立の学園でも水色のポニーテールの髪の毛とかいいのか、と思いながら桜子は前をスキップで歩く水蛇を見た。
「ほら、早く早く、席取ってルっす」
といつの間に先回りしたのか、つんつんヘアーのパンク少年、緑鼬がカフェの店内で手を振っている。
「あり……がと……」
テーブルにはすでに赤狼が座ってコーヒーのカップを口に運んでいた。
その隣に金髪の少年が座ってパンケーキを食べていた。
「赤狼君、この子誰? 弟じゃないわよね? 金髪だし」
と真理子が言った。
「えーと、知り合いっていうか、親戚、みたいな感じ。今度小学部に転校してきた」
と赤狼が言った。
「可愛い~~金髪でグリーンの目なんて王子様みたい!!」
と真理子が言った。
「え?」
と桜子はまじまじと金髪少年を見た、というか意識を集中して視た。
うっすらと金髪の頭部に角が視える。
「よろしく」
とパンケーキのカスを口につけて、金の鬼がにっこりと世にも可愛らしい天使のような笑顔で言った。
「あの子供、あの金色の鬼よね?」
桜子は赤狼から一つ置いた水蛇の隣に座って小声で言った。
「闘鬼は位一位のくせに人に化けるのは下手にょん。どうしても子供になってしまうにょん」
「えー、でも、どうしてこの学園に?」
「楽しそうだからにょん。水蛇も緑鼬も御当主にお願いしたにょん」
「だ、だって闘鬼さん、赤狼君と殺し合うほどの勝負したじゃないの! あれは何だったの?」
「あー、鬼は寝起きが悪いにょん。自然に目が覚めたらそうでもないんだけど、妙な呪言で起こされたからめっちゃ怒ってたにょん」
「え、何よそれ!」
桜子は赤狼の向こう隣の闘鬼をそっと見た。
金髪の可愛らしい顔の少年がぱっと振り返って、にやりと笑った。
その顔は天使でもなんでもなく、金の鬼に間違いなかった。
「赤狼なんぞ弱すぎて話にならない。少し遊んでやっただけだ」
と闘鬼少年が言った。
「ぶっ」と赤狼がコーヒーを吹き出し、
「クソ鬼、何ならもう一回勝負してやろうか」
と隣の闘鬼を睨んだ。
水蛇や緑鼬がクスクスと笑った。
桜子は闘鬼にひきつった笑顔を見せた。
「そ、そう、よろしく」
と言って水蛇の影に隠れるようにして、ランチボックスを広げた。
その桜子を赤狼はじっと見つめている。
以上の損害を出して土御門家は修復工事が始まり、陰陽師達はまた祈祷、祓いなどの生業を勤め、弟子達は修行に励み、学園の生徒達も元の生活に戻った。
事件を起こした張本人の如月は次代を解任、一族も破門という処罰をくだされそうだったが、本人の反省もあり破門だけは免れた。他県の分家預かりになり、心身共に修行のやり直しという事態に収まった。如月が本家を去る日、その傍らに川姫の姿があった。彼女はにこやかな顔で如月に付き従い、共に去って行った。
如月の四天王としていた桔梗、弓弦、薔薇子、尊にもそれなりの叱責があり、特に薔薇子は人間の魂抜きをした罪を問われた。集めた千個の魂を元の人間に戻すまでは、土御門薔薇子の名を名乗る事を禁じられた。薔薇子の卜いの館も閉鎖、万が一、魂を千個元に戻せなければ薔薇子の霊能力を封じるにあたる、との勅命さえ出されたのだ。その沙汰に薔薇子は腐ったが仕方なくせっせと病人の所へ通い、加持祈祷と称して魂戻しの術を施している。
当主の左京は自ら退陣を表明したが、こんな壊滅状態で退陣される方が無責任で困る、本家の立て直しが先、さらに如月の抜けた次の代を育てなければならないという事でまだ忙しく当主としての責任を果たしている。
「ほな、授業はこれでおしまいや」
と教壇に立っていた紫亀が言った。
「桜子、お昼に行くにょん!」
ブレザー制服を着た水蛇が桜子の席に走ってきて立ってそう言った。
「う、うん」
「なんか最近、転校生多くない?」
と真理子が後ろの席から小声で言った。
「そ、そう?」
桜子はドキドキしながら答えた。
「だって、ほら、水蛇さんに、緑鼬君でしょ? 同じクラスに何人も来るなんてねえ。しかもみんなちょっと変わった名前よね」
「う、うん。この学園、私立だし」
と自分でも何を言っているのか分からない答えを言いながら、桜子はランチバッグを持って立ち上がった。
「真理子もカフェ行こうよ」
「うん」
「早く早くー!!」
幾ら私立の学園でも水色のポニーテールの髪の毛とかいいのか、と思いながら桜子は前をスキップで歩く水蛇を見た。
「ほら、早く早く、席取ってルっす」
といつの間に先回りしたのか、つんつんヘアーのパンク少年、緑鼬がカフェの店内で手を振っている。
「あり……がと……」
テーブルにはすでに赤狼が座ってコーヒーのカップを口に運んでいた。
その隣に金髪の少年が座ってパンケーキを食べていた。
「赤狼君、この子誰? 弟じゃないわよね? 金髪だし」
と真理子が言った。
「えーと、知り合いっていうか、親戚、みたいな感じ。今度小学部に転校してきた」
と赤狼が言った。
「可愛い~~金髪でグリーンの目なんて王子様みたい!!」
と真理子が言った。
「え?」
と桜子はまじまじと金髪少年を見た、というか意識を集中して視た。
うっすらと金髪の頭部に角が視える。
「よろしく」
とパンケーキのカスを口につけて、金の鬼がにっこりと世にも可愛らしい天使のような笑顔で言った。
「あの子供、あの金色の鬼よね?」
桜子は赤狼から一つ置いた水蛇の隣に座って小声で言った。
「闘鬼は位一位のくせに人に化けるのは下手にょん。どうしても子供になってしまうにょん」
「えー、でも、どうしてこの学園に?」
「楽しそうだからにょん。水蛇も緑鼬も御当主にお願いしたにょん」
「だ、だって闘鬼さん、赤狼君と殺し合うほどの勝負したじゃないの! あれは何だったの?」
「あー、鬼は寝起きが悪いにょん。自然に目が覚めたらそうでもないんだけど、妙な呪言で起こされたからめっちゃ怒ってたにょん」
「え、何よそれ!」
桜子は赤狼の向こう隣の闘鬼をそっと見た。
金髪の可愛らしい顔の少年がぱっと振り返って、にやりと笑った。
その顔は天使でもなんでもなく、金の鬼に間違いなかった。
「赤狼なんぞ弱すぎて話にならない。少し遊んでやっただけだ」
と闘鬼少年が言った。
「ぶっ」と赤狼がコーヒーを吹き出し、
「クソ鬼、何ならもう一回勝負してやろうか」
と隣の闘鬼を睨んだ。
水蛇や緑鼬がクスクスと笑った。
桜子は闘鬼にひきつった笑顔を見せた。
「そ、そう、よろしく」
と言って水蛇の影に隠れるようにして、ランチボックスを広げた。
その桜子を赤狼はじっと見つめている。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
月華後宮伝
織部ソマリ
キャラ文芸
【10月中旬】5巻発売です!どうぞよろしくー!
◆神託により後宮に入ることになった『跳ねっ返りの薬草姫』と呼ばれている凛花。冷徹で女嫌いとの噂がある皇帝・紫曄の妃となるのは気が進まないが、ある目的のために月華宮へ行くと心に決めていた。凛花の秘めた目的とは、皇帝の寵を得ることではなく『虎に変化してしまう』という特殊すぎる体質の秘密を解き明かすこと! だが後宮入り早々、凛花は紫曄に秘密を知られてしまう。しかし同じく秘密を抱えている紫曄は、凛花に「抱き枕になれ」と予想外なことを言い出して――?
◆第14回恋愛小説大賞【中華後宮ラブ賞】受賞。ありがとうございます!
◆旧題:月華宮の虎猫の妃は眠れぬ皇帝の膝の上 ~不本意ながらモフモフ抱き枕を拝命いたします~
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
あやかし居酒屋「酔」
碧
キャラ文芸
|其処《そこ》は人に似て、人とは異なる者たちが住まう世界。ある日、気づくと|其処《そこ》にいた。
“綾”という名前以外、自身の記憶を全て失くして。記憶も、|還《かえ》る場所も失くした綾を鬼の統領・|羅刹《らせつ》は「異界の迷い人」とそう呼んだ。恐ろし気な肩書と裏腹に面倒見のいい羅刹に保護され、なんだかんだですっかり世界に馴染んだ綾は店をはじめた。その名も あやかし居酒屋「|酔《すい》」。個性豊かでギャップ強めのあやかしたち相手に今日も綾は料理を振る舞う。◆料理はおつまみ、ガッツリごはん系メイン。繋がりのある話もありますが、単体でもサクっと読めるのでお好きなメニュー部分だけでもお読み頂けます!ひとまず完結です。……当初の予定まで書ききったのですが、肉祭りや女子会も書きたいのでストックができればいつか復活する、かも?(未定)です。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる