土御門十二神〜赤の章〜

猫又

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破壊

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「鬼……だ。金色の鬼を召喚する事に成功したぞ……」
 起き上がった如月はよろける足で金の鬼の方へ近づいて行った。
 金の鬼は道場の破片を踏みつぶし外へ出た。
 見れば見るほど巨大で、その禍々しい身体。
 腕を一振りするだけで、その空気から生まれる暗黒の吐息。
 それに触れられただけで人間は正気を失う。
「如月様!! 危ない!!」
 桔梗が身体を引き寄せて逃げようとするが、如月はその桔梗を振り払い鬼の足下に跪いた。側へ寄れば寄るほどにその重厚な妖気に押しつぶされそうになる。
 「ど、どうか僕の……次期土御門当主の式神に成り給え……」
 と懇願するように言った。
 金色の鬼に如月の言葉は届かず、存在すらも認められていなかった。
「私で良ければ喜んで贄になりましょう! なにとぞ、なにとぞ如月様の願いを叶え給え!」
 桔梗が鬼の前に飛び出して叫んだ。
 床に頭をついて土下座の姿勢だ。
 鬼は目の前に飛び出してきた桔梗には気がついたようだが、特に関心は示さずそのまま踏みつぶそうとした。
「桔梗!」
 すんでの所で桔梗を救い出したのは左京だった。
 華奢な桔梗の身体を抱え込んで引っ張り出した。
「馬鹿者! さっさと逃げないか!! あの禍々しさが理解出来ないわけではなかろう!」
「左京様……しかし、如月様が……」
 左京はまだ鬼の足下にいる息子を見た。
 今までどんな悪霊、魑魅魍魎にも果敢に戦ってきた左京だが、この鬼はレベルが違う。
 肌がチリチリし、焼けるように痛い。
 騒ぎを聞きつけた弟子達が次々と駆けつけてきたので、左京は先に生徒達の救出を指示した。
「水蛇!! 緑鼬!」
 左京は式神を呼んだ。
 すぐに耳元で反応がある。
「ここにいるにょん」
 振り返ると、人間大の蛇と鼬がすぐ側に控えていた。
「あの鬼にはどうやって対抗したらいいのだ? お前達なら分かるか? 如月が潰されてしまう」
「赤狼と桜子がずいぶんと次代を止めたのに言うことを聞かなかったのは次代だにょん」
 と水蛇がきつい口調で言った。
「俺たちは御当主だけはお守りするっすよ。式神ですからね。けど次代の事までは責任を持てないっすね」
 と緑鼬も素っ気がない。
「一の位の鬼だにょん! あたしたちが敵うはずがないにょん! 気の済むまで暴れた鬼が闇へ帰るのを待つしかないにょん。日本人が全て死滅してからだと思うけど?」
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