42 / 58
金の鬼 闘鬼
しおりを挟む
「お前は一体何を学んで来たんだ。川姫の位が低いからだと? 馬鹿な、お前が川姫の力を育ててやるんだ。そうすれば川姫はお前の力を引き立ててくれる。自分では何もせずに、式神の力に頼ろうなどと、言語道断だ。情けない!」
「はいはい、そうです。僕は情けない駄目な人間でーす」
そう言いながらも如月の両手は印を結んでいる。
左京の言葉を頭を垂れて聞いているようなふりをしていたが、その間、如月はずっと呪禁の言葉を唱えていた。
『オンギョウ……キ、ヨル……セイギョウ……オンソカワ……イデヨ……』
「止めなさい! 如月!」
『日の本最強の式神にして誉れある金の鬼よ、土御門の前に姿を現し給え!』
『姿を現し給え!』
『御身に千個の魂を与える!』
『与える!』
如月の言葉の後に生徒達が復唱し、それは道場を揺るがすほどの大合唱だった。
「如月!」
左京は如月の肩を掴んで揺さぶったりしたが、何故だかびくともしない。
振り返って生徒達にも「止めなさい!」と叫んでみたが、全員がこの場の雰囲気に飲まれ一同がヒステリー状態になってしまい、当主の言葉すら届かない。
一同は何度も何度も『現れ給え!』と叫んだ。
『現れ給え!』
如月の気力を振りしぼった一声が上がった瞬間、千個の魂が積まれた上の空間に歪みが現れた。それは小さな亀裂だったが少しずつ大きくなり、やがてそれを見ている者は道場の空間が真っ二つ割れるような錯覚を覚えた。
その割れた空間から何かが出てきた。
金色に光る細く尖った物だった。
それが少しずつ表に出てきたが、誰もそれを生き物の爪だとは思えなかった。
巨大で金色に光る鋭利な爪に続いて逞しい腕と思われる部分が出てきた。
「あ!」
だがそれは尋常な大きさではなかった。
腕だけで人間の大人の男性一人分ほどサイズであり、それが空間を破った裂け目からにゅうっと出てきたと思うと床を力任せに叩きつけた。
道場の床がまるで薄っぺらい煎餅のように簡単に割れた。
その威力に如月の身体は吹き飛び、桔梗は慌てて道場の隅へと移動した。
腕の次に金色に輝く髪の毛が見え、頭、顔、肩、胴体が出てきた所で、生徒達のほぼ全員が気を失った。その禍々しい姿態は防御する力のない弱者には圧倒的な恐怖と憎悪、狂乱、焦燥、残虐、冷酷感など、様々な感情を引き起こし混乱させた。
「金の鬼……か」
当主である左京ですら圧倒され、ただただその美しく冷酷で巨大な金色の鬼を眺めるしか出来なかった。生徒達に逃げるように指示することすら頭に浮かばなかった。
鬼がその全身を露わにした時には、身体は道場の屋根を突き破り、怒りにまかせて建物の壁も床も全てを破壊し尽くそうとしていた。
「はいはい、そうです。僕は情けない駄目な人間でーす」
そう言いながらも如月の両手は印を結んでいる。
左京の言葉を頭を垂れて聞いているようなふりをしていたが、その間、如月はずっと呪禁の言葉を唱えていた。
『オンギョウ……キ、ヨル……セイギョウ……オンソカワ……イデヨ……』
「止めなさい! 如月!」
『日の本最強の式神にして誉れある金の鬼よ、土御門の前に姿を現し給え!』
『姿を現し給え!』
『御身に千個の魂を与える!』
『与える!』
如月の言葉の後に生徒達が復唱し、それは道場を揺るがすほどの大合唱だった。
「如月!」
左京は如月の肩を掴んで揺さぶったりしたが、何故だかびくともしない。
振り返って生徒達にも「止めなさい!」と叫んでみたが、全員がこの場の雰囲気に飲まれ一同がヒステリー状態になってしまい、当主の言葉すら届かない。
一同は何度も何度も『現れ給え!』と叫んだ。
『現れ給え!』
如月の気力を振りしぼった一声が上がった瞬間、千個の魂が積まれた上の空間に歪みが現れた。それは小さな亀裂だったが少しずつ大きくなり、やがてそれを見ている者は道場の空間が真っ二つ割れるような錯覚を覚えた。
その割れた空間から何かが出てきた。
金色に光る細く尖った物だった。
それが少しずつ表に出てきたが、誰もそれを生き物の爪だとは思えなかった。
巨大で金色に光る鋭利な爪に続いて逞しい腕と思われる部分が出てきた。
「あ!」
だがそれは尋常な大きさではなかった。
腕だけで人間の大人の男性一人分ほどサイズであり、それが空間を破った裂け目からにゅうっと出てきたと思うと床を力任せに叩きつけた。
道場の床がまるで薄っぺらい煎餅のように簡単に割れた。
その威力に如月の身体は吹き飛び、桔梗は慌てて道場の隅へと移動した。
腕の次に金色に輝く髪の毛が見え、頭、顔、肩、胴体が出てきた所で、生徒達のほぼ全員が気を失った。その禍々しい姿態は防御する力のない弱者には圧倒的な恐怖と憎悪、狂乱、焦燥、残虐、冷酷感など、様々な感情を引き起こし混乱させた。
「金の鬼……か」
当主である左京ですら圧倒され、ただただその美しく冷酷で巨大な金色の鬼を眺めるしか出来なかった。生徒達に逃げるように指示することすら頭に浮かばなかった。
鬼がその全身を露わにした時には、身体は道場の屋根を突き破り、怒りにまかせて建物の壁も床も全てを破壊し尽くそうとしていた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
月華後宮伝
織部ソマリ
キャラ文芸
【10月中旬】5巻発売です!どうぞよろしくー!
◆神託により後宮に入ることになった『跳ねっ返りの薬草姫』と呼ばれている凛花。冷徹で女嫌いとの噂がある皇帝・紫曄の妃となるのは気が進まないが、ある目的のために月華宮へ行くと心に決めていた。凛花の秘めた目的とは、皇帝の寵を得ることではなく『虎に変化してしまう』という特殊すぎる体質の秘密を解き明かすこと! だが後宮入り早々、凛花は紫曄に秘密を知られてしまう。しかし同じく秘密を抱えている紫曄は、凛花に「抱き枕になれ」と予想外なことを言い出して――?
◆第14回恋愛小説大賞【中華後宮ラブ賞】受賞。ありがとうございます!
◆旧題:月華宮の虎猫の妃は眠れぬ皇帝の膝の上 ~不本意ながらモフモフ抱き枕を拝命いたします~
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる