土御門十二神〜赤の章〜

猫又

文字の大きさ
上 下
24 / 58

陰謀

しおりを挟む
「術者を倒す?」
「そうだ、術者が死ねば術は解ける」
「え、それって」
 桜子は赤狼と紫亀を見た。
 赤狼はそうでもないが、紫亀は少しばつの悪そうな顔をしている。
「そうなんや、桜子ちゃん、如月をやっつけなけりゃあならんのや。しかしなぁ。今の世の中でそれが出来るか?」
 紫亀は頭をぽりぽりとかいた。
「俺は出来る」
 と赤狼が言ったが、
「だ、駄目よ、赤狼君!……死ぬって事は殺すって事でしょう? 赤狼君、駄目よ!」
 と桜子が言った。
「紫亀先生、術者が死ぬ以外に方法はないんですか?」
「如月が自ら術を解けばええ。問題なしや。如月がそれをやるならな? 解決やで」
「御当主の左京様に叱ってもらえば?」
 と桜子は言った。
「そしたら如月様だって……学園の先生を犠牲にしてるんだもの。左京様だってきっとお怒りになるわ」
「わしらはそれでええけどなぁ。果たして当主が如月を罰せるかな? 大事な大事な次代様やで。もしかしたら当主も込みの話かもな」
「まさか……」
「如月が人間の魂を集める目的は何やと思う?」
「……それは……?」
「鬼の呼び戻しか」
 と赤狼が言った。
「鬼?」
「わしもそう思う」
「鬼って何ですか?」
「鬼は鬼や、赤鬼、青鬼、金の鬼」
 桜子はぶるっと身体が震えた。全身に寒気が走ったのだ。
「鬼……」
 と現代に鬼なんて、と言いかけて桜子は口を閉じた。 
 目の前に赤い狼と紫色の亀がいるではないか。
 今は人に化けているが、変身すれば巨大な狼と亀だったのを桜子は見たはずだった。
 それならば鬼もいるかもしれない、と桜子は思った。
「何故、鬼を?」
「鬼を式神に出来たらめっちゃ格好ええやろ」
 と紫亀が言った。
「え、格好いいからですか?」
「人間のやる事なんかそんなもんやで。土御門十二神の一の位には闘鬼ちゅう金の鬼がいてるんやけど、赤いのんに勝るとも劣らん我儘な鬼でな。安倍から土御門まで千年の時を筆頭式神の地位にいてるのに、その間に主を持ったのはただの一度。気に入らん主には見向きもせん、姿も見せん。人間の間ではほんまにいてるんかどうかも疑わしいって言われてる伝説の鬼や。まあでも存在は間違いない。わしらも滅多に会わんけどな」
「その鬼を呼び出すのに、人間の魂がいるんですか?」
「人間の浅知恵や。そういう文献が残ってるのは確かや」
 桜子は赤狼を見た。
「京の都に出没する金色の鬼は牛馬も人も区別なくなんでも喰らいつくす鬼。人体だけでなくその魂もが嗜好品で鬼に出会って生きて戻った者はいない、と記されているのを読んだ事があるぞ。まあ、昔は人や獣だろうが怪異のモノだろうが腹に入ればなんでも良かったからな。あの鬼は」
「赤狼君、知ってるの? その金の鬼を」
「ライバルやもんな」
 ぎろっと赤狼に睨まれて紫亀は首をすくめた。
 その動作がいかにも亀が首を引っ込める時の動作に似ていたので桜子はつい笑った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

月華後宮伝

織部ソマリ
キャラ文芸
【10月中旬】5巻発売です!どうぞよろしくー! ◆神託により後宮に入ることになった『跳ねっ返りの薬草姫』と呼ばれている凛花。冷徹で女嫌いとの噂がある皇帝・紫曄の妃となるのは気が進まないが、ある目的のために月華宮へ行くと心に決めていた。凛花の秘めた目的とは、皇帝の寵を得ることではなく『虎に変化してしまう』という特殊すぎる体質の秘密を解き明かすこと! だが後宮入り早々、凛花は紫曄に秘密を知られてしまう。しかし同じく秘密を抱えている紫曄は、凛花に「抱き枕になれ」と予想外なことを言い出して――? ◆第14回恋愛小説大賞【中華後宮ラブ賞】受賞。ありがとうございます! ◆旧題:月華宮の虎猫の妃は眠れぬ皇帝の膝の上 ~不本意ながらモフモフ抱き枕を拝命いたします~

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

俺の知らない大和撫子

葉泉 大和
キャラ文芸
 松城高校二年三組に在籍する諏訪悠陽は、隣の席にいる更科茉莉のことを何も知らない。  何故なら、彼女は今年の四月に松城高校に転入して来たからだ。  長く綺麗な黒髪で、まるで大和撫子が現代に飛び出したような容姿をしている茉莉は、その美貌も重なって、瞬く間に学校中の人気者になった。  そんな彼女のせいで、悠陽の周りは騒がしくなってしまい、平穏な学校生活を送ることが出来なくなっていた。  しかし、茉莉が松城高校に転入してから三週間ほどが経った頃、あることをきっかけに、悠陽は茉莉の秘密を知ってしまう。  その秘密は、大和撫子のようなお淑やかな彼女からは想像が出来ないもので、彼女の与えるイメージとは全くかけ離れたものだった。  そして、その秘密のせいで更に悠陽は厄介事に巻き込まれることになり……? (※こちらの作品は小説家になろう様にて同時連載をしております)

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

処理中です...