土御門十二神〜赤の章〜

猫又

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誰にも視えないモノ

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 自分の席の方へ戻ろうとした桜子の背中に赤狼の声が追いかけてきた。
「簡単に再の気をたれ流してたら、すぐに自分が的になるぞ」
 桜子ははっと振り返った。
「どういう意味? 赤狼君、あれが視えていたの?」
「そこら中にいるな。だから人間の多い所は嫌いなんだ。すぐに沸いて出やがる」
 と赤狼が言った。
 人間が嫌いなのかしら? そういえば田舎から来たって言ってたっけ、と桜子は思った。
「手で潰すなんて凄いわね。動物霊といえ素手でやっつけるなんて、土御門の人でもなかなかやらないわよ」
「何をやらないって?」
 赤狼と桜子の間に割って入った生徒がいた。
「土御門君……」
 同じクラスの生徒の土御門潔だった。
 銀縁メガネをかけきっちりとした七三ヘアーで、ネクタイもびしっとしめ、ブレザーのボタンもきっちりと留めている優等生風の男子生徒だった。
「土御門が何だって?」
「別に……」
 と桜子が言いかけるのを潔は遮って、
「君に土御門を語られたくないな。君は土御門姓とはいえ門外の人なんだし。君、赤狼君、土御門に興味があるならこんな枝の末端の人間に聞かずに,僕みたいな本流の土御門に聞いた方がいいよ」
 と言った。
「末端?」
「そうだよ、彼女は一応土御門姓を名乗ってるけどね、土御門の血は半分だしそもそも霊能力なんて皆無の人だから」
 そう言った潔に赤狼は少しだけ驚いたような顔をして、そして桜子を見た。
「まあ、そういう事。私、本当に土御門の事はあまり知らないのよ」
 と桜子はそう言って笑った。
「君は土御門を名乗るべきじゃないと思うんだけどね。なぜ本家が君を許して、この学園に通わせているのかも見当がつかないよ。一般人の君が土御門を名乗るだけでも罪だと思うんだけどね」
 ふふん、という風な顔で潔は赤狼と桜子を見た。
「おいおいおいおいちょっと待て。本気で言ってるのか?」
 と赤狼が言った。それに対して潔は、
「そうだが?」
 と答えた。
「そろそろ授業が始まるわ」
 と桜子が言った瞬間にチャイムが鳴ったので、
「赤狼君も何かあったら、僕に相談するのがいいよ。僕は中等部総括の愛美さんに次いで地位をいただいてるからね」
 と言い潔はさっと自分の席へ戻った。
 一番後ろの席へ戻りながら赤狼が、
「中等部総括って?」
 と聞いてきたので桜子は、
「幼稚舎から大学部までそれぞれの学部での土御門の人間を総括する代表者がいるのよ。多分、霊能力の強い順で地位が決まるんじゃないかな。中等部は一組の土御門愛美さんって人よ」
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