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謎の転校生
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「赤狼由良君です。皆さん、仲良くしてください」
私立皇城学園中等部、三年二組、担任の佐山綾子が言うと、赤狼由良は軽く頭を下げた。
ざわっと教室内が軽くざわめいた。
「ちょっと、超美形じゃんか~~」
後ろの席の藤村真理子から背中をつつかれて、土御門桜子はちょっとだけ振り返ってふふっと笑って同意を示した。
高身長で細身、うっすら赤味を帯びたような髪の毛、整った顔は切れ長の瞳に薄い唇。
赤狼由良は誰もがほうっとするような美形だった。
「じゃあ、赤狼君はそこ席に座ってください」
「はい」
担任に言われて赤狼は窓際の一番後ろの席まで歩いていき座った。
赤狼の歩く方向に教室中の視線が動く、特に女子は目がハートになっている。
好みのタイプかどうかはともかく、赤狼の容姿は誰もの目の保養になる。
「赤狼君、どこから転校してきたの?」
と運良く隣席になった真理子が小声で言った。
「四国の田舎の方」
とだけ赤狼が低い声で答えた。
「へえ。あんまり転校生なんて来ないんだけど、この学園。あたし、幼稚舎からいるけど、転校生って桜子に続いて赤狼君で二人目だよ」
「桜子?」
「そう、この子。土御門桜子」
と真理がまた背中をつついたので、桜子は首だけ回して後ろを見た。
「何?」
「転校生、桜子で二人目って話よ」
「ああ」
土御門桜子は肩ほどまでの黒髪を一つに束ね、前髪を頭のてっぺんでパッチン留めでとめてある。雰囲気のある美人だが少々冷たそうな印象を受ける。
「土御門ってあの土御門?」
と赤狼が聞いたので桜子は首をかしげた。
「あの土御門?」
「そう有名陰陽師を輩出して政治経済界にまでその顧客は広がり、さらに陰陽師だけでなく一族からは政治家まで出ている。今や日本を回してると言っても過言ではないって噂の土御門」
と赤狼は頬杖をついてからかうようにそう言った。
「この皇城学園だって支配に及んでるんだろう? 幼稚舎から大学部まですべて土御門姓の生徒が牛耳ってるって聞いたけど」
「ああ」
と桜子は笑った。
「確かにね。でも私は名字は土御門だけど、一族には名前がないの」
「名前がない?」
「そうよ」
桜子はふふっと笑って前を向いた。
「そう、だから土御門に取り入りたいなら桜子以外の土御門にする方がいいわよ」
と代わりに真理子が言った。
「取り入る?」
「そう、この学園でうまいことやりたいなら土御門に取り入るのが最良の手。気に入られればいい目が見られるかもね。相手にもされない人もいるけど、赤狼君ならイケメンだし大丈夫なんじゃない?」
と言う真理に赤狼はぷっと笑った。
「いや、全然そんな気ないし、土御門っていえばあの一族かなと思っただけ」
「あの、皆さん、授業を始めます」
おどおどとした声で担任の佐山綾子が言ったので、赤狼も真理も黒板の方を向いた。
教室の中はざわついている。
机の上には担任の教科である国語の教科書が広がってはいるが、その下では塾の問題集を広げている生徒もいる。
「そうだ、ねえ、お昼休みにでも学園の中を案内してあげるね」
と真理子が小声で言った。
美形の転校生には誰より先に近づかなければ、との気概が真理子の顔に書いてある。
真理子はふわっとした天然癖毛のボブヘアーで、可愛い顔をしている。少しぽっちゃりしているのが愛嬌だ。
だが今にライバルは学園中に広がるだろう、そうなると少しばかり可愛いだけではすぐに踏みつぶされる。幼稚舎から大学まであるこの巨大私立皇城学園には莫大な数の生徒数がいるからだ。
「ありがとう」
と言って赤狼が微笑んだので真理子の顔はぽーっとなっている。
私立皇城学園中等部、三年二組、担任の佐山綾子が言うと、赤狼由良は軽く頭を下げた。
ざわっと教室内が軽くざわめいた。
「ちょっと、超美形じゃんか~~」
後ろの席の藤村真理子から背中をつつかれて、土御門桜子はちょっとだけ振り返ってふふっと笑って同意を示した。
高身長で細身、うっすら赤味を帯びたような髪の毛、整った顔は切れ長の瞳に薄い唇。
赤狼由良は誰もがほうっとするような美形だった。
「じゃあ、赤狼君はそこ席に座ってください」
「はい」
担任に言われて赤狼は窓際の一番後ろの席まで歩いていき座った。
赤狼の歩く方向に教室中の視線が動く、特に女子は目がハートになっている。
好みのタイプかどうかはともかく、赤狼の容姿は誰もの目の保養になる。
「赤狼君、どこから転校してきたの?」
と運良く隣席になった真理子が小声で言った。
「四国の田舎の方」
とだけ赤狼が低い声で答えた。
「へえ。あんまり転校生なんて来ないんだけど、この学園。あたし、幼稚舎からいるけど、転校生って桜子に続いて赤狼君で二人目だよ」
「桜子?」
「そう、この子。土御門桜子」
と真理がまた背中をつついたので、桜子は首だけ回して後ろを見た。
「何?」
「転校生、桜子で二人目って話よ」
「ああ」
土御門桜子は肩ほどまでの黒髪を一つに束ね、前髪を頭のてっぺんでパッチン留めでとめてある。雰囲気のある美人だが少々冷たそうな印象を受ける。
「土御門ってあの土御門?」
と赤狼が聞いたので桜子は首をかしげた。
「あの土御門?」
「そう有名陰陽師を輩出して政治経済界にまでその顧客は広がり、さらに陰陽師だけでなく一族からは政治家まで出ている。今や日本を回してると言っても過言ではないって噂の土御門」
と赤狼は頬杖をついてからかうようにそう言った。
「この皇城学園だって支配に及んでるんだろう? 幼稚舎から大学部まですべて土御門姓の生徒が牛耳ってるって聞いたけど」
「ああ」
と桜子は笑った。
「確かにね。でも私は名字は土御門だけど、一族には名前がないの」
「名前がない?」
「そうよ」
桜子はふふっと笑って前を向いた。
「そう、だから土御門に取り入りたいなら桜子以外の土御門にする方がいいわよ」
と代わりに真理子が言った。
「取り入る?」
「そう、この学園でうまいことやりたいなら土御門に取り入るのが最良の手。気に入られればいい目が見られるかもね。相手にもされない人もいるけど、赤狼君ならイケメンだし大丈夫なんじゃない?」
と言う真理に赤狼はぷっと笑った。
「いや、全然そんな気ないし、土御門っていえばあの一族かなと思っただけ」
「あの、皆さん、授業を始めます」
おどおどとした声で担任の佐山綾子が言ったので、赤狼も真理も黒板の方を向いた。
教室の中はざわついている。
机の上には担任の教科である国語の教科書が広がってはいるが、その下では塾の問題集を広げている生徒もいる。
「そうだ、ねえ、お昼休みにでも学園の中を案内してあげるね」
と真理子が小声で言った。
美形の転校生には誰より先に近づかなければ、との気概が真理子の顔に書いてある。
真理子はふわっとした天然癖毛のボブヘアーで、可愛い顔をしている。少しぽっちゃりしているのが愛嬌だ。
だが今にライバルは学園中に広がるだろう、そうなると少しばかり可愛いだけではすぐに踏みつぶされる。幼稚舎から大学まであるこの巨大私立皇城学園には莫大な数の生徒数がいるからだ。
「ありがとう」
と言って赤狼が微笑んだので真理子の顔はぽーっとなっている。
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