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 実家のマンションで鬱々と過ごしていたが、私は行動を起こすことにした。
 達雄の事などもうどうでもいいし、理沙以外の浮気相手も義姉が対応してくれる。
 理沙と義母だけはどうしても許せなかった。
 どんな制裁を加えてやれば気が済むだろうか?
 娘を亡くした気持ちが済むなんてあるのだろうか?
 気持ちは済まないかもしれないが、私は復讐をせずにはいられない。
 その為に兄も義姉も全面的に力を貸してくれるだろう。

「ピンポン」とドアフォンが鳴った。
 見ると達雄の顔が映っている。
「助けてくれないか」と達雄が言った。
「嫌よ、なんで私が?」 
 画面の向こうの達雄の顔は青ざめている。
「帰って、忙しいから」
「電話に出てくれないじゃないか!」
「そりゃそうよ。話す事なんかないし、慰謝料と財産分与、きちんと払ってくださいね」
「待ってくれ! 無理だ、会社も……辞めたし……」
「そう、じゃあ、家の再建も無理よね。あそこの土地を売って払ってよ」
「そんな……」
「あら、だってご近所にもヒソヒソ言われて住み辛いでしょ? 理沙の家だって、買い物に外も歩けないらしいじゃない?」
「やっぱり、お前が妙な噂を流したんだな!」
「妙な噂ですって? 私は本当の事しか言ってないわ。住み慣れた婚家を離れるのだって、ご近所さんに挨拶もしなくちゃ。皆さん、優しいから親身になって話を聞いてくれたわ」
「何でそんな酷い事が出来るんだ!」
「あなたって、酷いの定義が違う国の人だったのね。娘を見殺しにして、女遊びで会社もクビになるような人間に酷いなんて言われる筋合いはないわ!」
「頼むよ、勘弁してくれ」
「勘弁の意味が分からないわ。決められた金を払えって言ってるだけ。お金が払えなければ理沙を連れて首でも吊ったら? それでも私は許さないけど」

 インターフォンを切って、高揚した気分を落ちつかせるためにソファに座った。
 手も身体も震えている。
 言いたい事を言った、ような気はするがまだ言い足りない気もする。
 しゃべってるうちに涙が出て、うまく言えない気もする。 

 その日のうちに義姉から連絡が来たが、土地を売って慰謝料を払うのは困難なようだ。
 土地は親戚からの借地で、今は亡き義父がその上に家を建てていたそうだ。
 そして近所に出回った面目の立たない噂で親戚は激怒、土地を更地にして持ち主に返却しなければならなくなり、その費用だけでも二百万。
 慰謝料、財産分与を足して合計一千万にはなるはずだ。 
 更に私は彼らを保護責任者遺棄罪で訴えた。
 それが実際に罪に問われて刑務所に入るかどうかなんて知らない。
 けどそれで社会的地位を失って、人様に後ろ指を指されて、生きていけばいい。
 理沙はすでに家族から勘当されて、家を追い出された。
 達雄と元義母も家を無くし三人で彷徨っているらしい。

 そして二日後、また達雄が来た。
 増殖して理沙と元義母を連れている。
 ゴキブリみたい。
 しぶとく生き残ってる。
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