シンデレラ白書～代々おめかけさんだけど、あたしは絶対に愛人になんかならない～

最終話

「未稀さんのおかげで助かったな」
　と湊が言ったがあたしは首を振った。
「それは違うわ。ローズ・キング・ホテルの話はあなたが行動した結果でしょう。未稀さんはただたんに静さんを見返したかったのよ。あの時の未稀さんの顔、最高級に自信満々でさぞかしスカッとしたでしょうね」
　とあたしが言うと、湊は笑った。
「会社も何とか維持できそうだし、良かったよ」
「うん」

　ただ、抜け殻のようになってしまった静さんは全てを辞めて、引退してしまったのだ。
　そして超高級老人ホームへと入居してしまった。
　入居金で八千万円、月々の費用二百万という、超高級ホテル装備の待遇だから、金持ちって奴は……
　美登利さんは酷く落ち込んでしばらくは引きこもっていたらしいけど、湊よりも金持ちなお見合い話が来てるらしく、それほど遠くない日にどこかのセレブへ嫁ぐだろう。
　そして炎ちゃんは静さんのホームの近くに家を買って愛さんと一緒に住む事にした。
　毎日のように二人で静さんのホームへ顔を出し、最初は拒絶していた静さんも今では穏やかに炎ちゃんと曾祖父の昔話なんかをするようになったらしい。
　ちなみに未稀さんはアレックスと暮らす為にアメリカに移住した。
　　

「あたし、行かなきゃ。講義に遅れちゃう」
　あたしは食卓の椅子から立ち上がった。
　最近は湊の部屋で過ごす事が多い。
「今日は英会話の日だから遅くなるわ」
　と残ったコーヒーを飲み干しながら言うと、
「分かった」
　と湊も立ち上がった。
　玄関で靴を履いているとまだスエット姿の湊が出てきて、あたしを抱き締めた。
　それからたっぷりと一分間はキスをした。

　毎日が楽しい。
　あたしはようやく踏み出せる未来への扉を開く事が出来た。
　今、学業の合間に英会話とお茶とお花と着付けを習っている。
　もの凄く忙しくて、もの凄く勉強しなきゃならないけど、あたしは自分で選択した未来を歩いて行っていいんだな、と実感出来る。
　この先も困難は起こるだろう。
　でもあたしは人を信じる事が出来るようになったから、自分の力で困難にも立ち向かえる。
　だから大丈夫！
「行ってきます！」


　王子様とお姫様は末永く幸せに暮らしましたとさ！　　　　　了



　ご愛読いただき、ありがとうございました。
　これにて終演となります。
　またどこかでお会いできますように！！　　猫又