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六章 探求の魔女アンタレス

157.孤独の魔女と最も長い一日

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……アマルトの過去を知り、生徒会設立の手伝いをし 冬季休暇が終わり やがて冬が明け 春の芽吹きが大地に祝福を齎し始めた

冬の間はずっと生徒会設立の為にエリス達は奔走し続け、会議をしたり 学園内での協力者を増やしたり、教師達へ説明したり色々やった

会議では役に立てないエリスも他のことならなんでもござれ、長期休暇はある意味充実した日々を過ごせたと言えます、でも…一つ気なる点が いや二つか

一つ目は魔女様…レグルス師匠達が現れなかったのだ、去年の長期休暇にはどちらも姿を見せたのに今回はなぜか全く姿を見せなかった、レグルス師匠との別れかたが別れただけに何かあったのではと心配になるが

エリスが心配したところで レグルス師匠を助けられるかと言えばそうではない、今は目の前のことに集中することにした

目の前のこと…そう、アマルトのことだが 彼こそが二つ目の気になる点なのだ

冬の間にノーブルズは事実上の解散を得た、まぁそうだろう だって生徒会を作る為に有識者集めたり協力者を増やしたりしてる時点でもう解散は確定していた、あとは正式な発表をするだけだそうだが

これはもう少し落ち着いた春頃にするとイオさんは言っていた…が、しかしノーブルズが解散すると共にアマルトが姿を見せなくなったのだ、目撃証言も何もない なんなら学園にも出席していないという

何故か どこへ行ったか、全く分からない…もしこのまま姿を現さなければ 当然課題にも参加しないだろう、そうなれば元の木阿弥…しかし探しても見つからない以上どうしようもない

課題には参加してくれることを祈るばかりだろう…

そして春を迎えた、今年でエリスとデティは十五歳 ラグナは十七歳 メルクさんに至っては二十歳だ、もう立派に大人だ…と言っても二十歳になりました でボーンと大人になるわけではない、メルクさん的にもまだ実感が湧かないようなので 大きな変化は何もないだろう

春を迎えて新入生も増えてエリス達は三年生になって…、平和な時間が続いた もうちょっかいかけてくるノーブルズもいないし、ただただ平和な時間だ

朝みんなで起きて みんなで学園で勉強して みんなで帰って みんなでご飯食べて、みんなで遊んで 話して 何事もない何でもない時間を一つ一つ大切にしながら過ごし


……そして、遂にその日は訪れたのだ 去年と同じように突如教室に乱入してきたリリアーナ教授によって 今年の課題の説明がされた、イオから聞かされた アマルトとの決着の舞台だ

課題の内それは

『大遺跡探求』

だそうだ、大遺跡…どこの遺跡なのかはリリアーナ教授も知らないらしいが、彼女はこう語っていた

『今年の課題は史上類を見ないものになる、あらゆる事が我等教師陣に秘匿されているから どのような課題というヒントは与えられないがこれだけは言える、…今回の課題は史上最大規模の物になる、覚悟をして 万全を期したまえ』

やや釈然としない様子で語っていた、教師陣にも秘匿されって…筆頭教授である彼女にさえ秘匿されるなんて異常だ、…やはり 今回の課題 探求の魔女アンタレス様が関わっていると見るべきだろうな

因みに今年もチーム選びに四苦八苦したかと言うと、そうではない というのももうジタバタするのはやめたのだ

ラグナの提案で五人目のメンバーは加えないことにした、というのも もう何をさせられるかも分からないこの状況では誰を加えていいかも分からないし、当日になって役割分担するよりもうこの四人で挑んだ方が手っ取り早いだろうと

確かにこの四人なら役割分担せずとももう各々が自分の立ち位置をわかってる、なら変に誰かを加えるまでもないだろうとチーム選びが始まった瞬間 エリス達はそそくさと帰って家でご飯食べた、美味しかった


そして…課題当日が やってきた、エリス達の学園史上最も長い そして最も過酷な一日が、始まる

…………………………………………………………………………

課題当日、チーム選びを終えた生徒達は皆学園の大講堂に集められる、数万 数十万はいよう生徒達がひしめき合う空間の中 エリス達もまた大講堂へとやってきている

去年のスタート地点が町の外であったのに、今年は学園の中でスタートらしい、というかまだどこを探索するかも教えられてないんだが、遺跡ってどこよ

「今年の課題 どうなるんでしょうね」

「さぁな、でも 今年こそは一位になりたいよな」

「そうだな、史上最大規模ということは 賞品も史上最大だろうしな」

「何もらえるんだろうね!お菓子の山かな!お菓子の海かな!」

人の海の中エリス達もまた待機する、去年は一位を逃してしまいましたからね アマルト云々は別にして 一位は取りたい、去年の雪辱を果たす!

「しかし、遂にアマルトのやつ現れなかったな…、課題には参加するのか?」

「さぁ…してもらわねば困りますが…」

アマルトは学園に姿を見せなかった、課題に参加するとの表明も聞いていない、…まさかもうこの学園にいないとかないよな…

『えー、お静かに』

その瞬間 声が響く、聞いているだけで落ち着くような されどなんの感情の揺らぎもないような、そんな無機質な声が ボンボンと講堂内に木霊する

なんの声か、確認するまでもない エリスは一度この場所で この声を聞いている、声の主が誰だか知っている

『全員揃ったみたいなので、そろそろ始めたいと思います』

講堂の奥、巨大な壁を背に壇上に立つ男が一人、特徴的な口髭をクルリと伸ばした老紳士 、この学園のトップ 理事長フーシュ・アリスタルコスだ

「フーシュ理事長か…」

壇上に上がったフーシュ理事長の姿を見てラグナがやややり辛そうに口を開く、気持ちはエリスも同じだ

少し前までなら 彼はまぁ優しい理事長なのかなと思っていたし、大して気にも止める人物でもなかった、じゃあ今はどうか?

少なくとも好意的な感情は抱けない、フーシュがアマルトにした事は…いくら役目や伝統を重んじていたからと言ってしていい事ではない

アマルトの母を子供を産んだからという理由で見殺しにサルバニートさえも切り捨て、アマルトの感情と夢を否定し踏みにじった

理事長としては好ましい人物、されど人間としてはどうかと聞かれると 交友関係にはなりたくないと思えるくらいにはちょっとアレだ

「あんな話を聞いた後ではな…」

「ちょっと怖い人に見えるよね」

コソコソとメルクさんとデティが話している、…エリス達は今 少なくともアマルト側に肩入れしつつある、そりゃフーシュの口から言い分を聞けば違うのだろうけど、今は…フーシュのことは好きではない、我ながら単純だと思うけどな

『皆さんも聞いていると思いますが、今年の課題はいつもと違います、例年のものより大規模でかつ 計り知れない、今までのものと同じと思ってかかると 少し危ない目にあいますので、最初に言っておきます 覚悟しておいてください』

その言葉を聞いて生徒達がドヨドヨと狼狽える、そりゃそうだ エリス達もなにも知らなければ同じ反応をしていた

…この課題は魔女様直々に出されるもの、例年と同じなわけがない…一体何をやらされるんだ

『課題内容の説明ですが…取り敢えず、発案者に発表してもらいましょう、どうぞ…前へ』

理事長であるフーシュが恭しく頭を下げて一歩引く、それは少なくとも今から壇上に上がる人物が理事長よりも上の人間ということを意味する

理事長より上、このディオスクロア大学園では考えられない…各国の王子や貴族が通うこの学園を率いる理事長は、時として王家コルスコルピと同格として扱われる、即ち 今から上がる人間は この国の 魔女大国の王より上であることを意味し…

『ご苦労様』


「え……」

思わず声を上げる エリスが、てっきり魔女様が壇上に上がると思っていたら 予想外の人物が壇上に上がってきたから…

女だ、彼女には見覚えがある…というか エリスは個人的に話したこともある、彼女は…いや 彼女がなんで

メガネと特徴的なピアスをした女…、魔術科魔獣学専任教師メアリー それが、悠然と壇上に上がってきた

「メアリー先生?…」

『あー…私の顔に見覚えがある生徒も何人かいると思いますし私が教えを与えた生徒も何人かいると思います…そうです 魔術科で魔獣学について教えていたメアリーです…けど すみませんね?それ本名じゃないんですよ』

するとメアリー先生は羽織っていた白衣を盛大に脱ぎ去る、するとどうだ…彼女の姿がみるみる変わって行くではないか、顔つきはより一層鋭さを増し 髪は地面につくほどに伸びきり、その衣はいつのまにかローブに変わっていた お世辞にも綺麗とは言えない年季の入ったローブ

…そして、魔力…魔力だ その身に滾る絶大な魔力、まるでいきなり目の前に大山が現れたかのような絶対的な存在感が爆裂の如く迫る、気を抜くと意識ごと吹き飛ばされそうだ…

メアリーさんは瞬く間に別の人間の姿へと変わった、いや 変わったのではない正体を見せたのだ、本来の姿へと戻ったのだ

そう、つまり…メアリー先生の正体はーーーー…………

『はい 静かに』

ピッと指先を軽く横に振る、ただそのワンアクション…たったのそれだけでその空間に静寂が溢れ出る

「ーーーッッ!?ーーッッ!!」

口が開かない、声が出ない まるで口を縫いとめられ喉に石でも詰められたように声が出ない、だというのに息だけは普通に出来るという奇妙な感覚に背筋が寒くなる

これは呪いだ、呪術だ 過程をすっ飛ばして肉体に直に影響を与える魔術のうちの一つ、それを詠唱もなく軽く発動させたんだ、呪術は条件を満たせば詠唱なしでも発動出来るらしいが…これは

あ!この呪い覚えがあるぞ?、確か…そう 確かレオナヒルドにも似たような呪いがかけられていた、アレをかけたのは多分ウルキさんあたりなのだろうけど 肝心なのはそこじゃない

確かこの呪い…無理やり喋ろうとすると頭が爆ぜるんじゃなかったか?…同じものではないのかもしれないけれど、そう思うと急に怖くなってきた、黙っとこう

「~~~ッッ!」

「ーっ!?ーーっっ!」

デティやラグナも口を触って驚いている、というかアマルトの呪術を軽々解くデティでも解除出来ないのか、見ればこの場に集まった生徒達全員が口を閉ざしている

やはり…別格なのだ、 探求の魔女 アンタレスの呪術は

『何故貴方が教師に化けてとか何故正体を隠してとかそう言う質問にいちいち答えるの好きじゃないんで質問は受け付けませんから私は今日貴方達に課題を与えるためにこの場に現れただけそこんところちゃんと理解してください』

アレが探求の魔女アンタレス様…師匠の盟友にしてこの国を統べる魔女、コルスコルピに三年も滞在してやっと目にすることが出来た…

しかし、なんか特徴的な喋り方だな…まくし立てるみたいな、ただただ用件を伝えるためだけに早口で喋ってるみたいだ、聞き辛い

『今日この日の課題は私が直々に用意しましたいつもの子供騙しの課題とは違う本物を用意したので楽しみにしていてください?ああルールは今から説明しますね』

そう言うとアンタレス様はゆったりと両手を天に掲げながらその絶大な魔力を更に高めて…

『さぁ!久々の起動ですよ!しっかり動いてくださいよ!…対天狼最終防衛機構ディオスクロア!屹立しなさい!』

…刹那、そのアンタレス様の咆哮が講堂に 構内に 街中に響き渡る、それを皮切りに それは引き起こされる

何が起こったか?…、うん分からない だってあんまりにも漠然としていて、ただエリスが感じたことを率直に伝えるなら

(大地が…鳴動してる…!?)

グラグラと地面が揺れて…いや ちょっと表現が可愛らしかったな、もっとドカンドカンとまるで足の下で爆発や崩壊が起こってるみたいな揺れ方だ、早めに避難したほうがいい奴

揺れに耐えきれずその場で尻餅をつく者も多い中 アンタレス様は一人微動だにせずこちらに向き直る

『ご存知の通りこの学園は八千年前から…私たち魔女の時代から存在していました…そして 大いなる厄災の時にはある一つの重大な役目も担っていました それがこれです』

学園が…学園の中が変形して行く、講堂の壁が光の筋を描いたかと思えばその通りに綺麗に割れて 外の景色を見せる…

『生き残った人類を次の時代へと輸送する最後の箱舟にして迫る厄災から希望を守る最後の砦…対天狼最終防衛機構 とどのつまり…要塞です この学園がじゃありませんよ?この街 ヴィスペルティリオ全域が一つの要塞なのです』

割れた壁の向こうに広がっていたのはなんだ、学園の向こうには本来街が見えるべきなんだ、なのにどうだ 今は…

見えるのはまるで天空を覆うような超巨大な壁…、眼下に広がる街も地面が隆起し 変形して迷路になっている…

民家はどこへ行ったんだ?と思ったが、よく見てみると多分 地面がひっくり返ったんだ、リバーシブルとでも言おうか、つまりエリス達の住んでいる町の地下には広大な地下迷宮が広がっていたんだ、それが 今は変形し地上に出てきた…

あれ?ってことは住民達はどうなってるんだ?、地面がひっくり返ったってことは、家の中も天地が逆になってるってことで…

『ああ ご安心を?予めこの街の住民は全てこの学園内部の避難区画に移動してもらっています…本来世界中の人間を収容する予定だったこの要塞なら 街の人間全員くらい軽く仕舞えるので』

あ、避難済みなんだ…ってことは今 ヴィスペルティリオの街全体が無人の遺跡迷路になってるのか…、って まさか大遺跡探求って…

『今から貴方達に与える課題は一つ! 私のこの五つの宝玉を見つけ出し確保すること!最終的に確保している宝玉の数が多いチームを優勝とする!ね?簡単でしょう?ガラス玉を見つけるだけなんですから』

そう言うとアンタレス様は赤青黄緑白の五つの宝玉…人の頭くらいある大きさのそれをふわふわと周りに浮かばせる、まぁ ルールは単純だけどさ

問題が一つある、このヴィスペルティリオの街全体が一つの巨大な迷宮になったんですよね?魔女大国の中央都市ってのは 下手な小国より大きいし、このヴィスペルティリオの街もその例に漏れず 非常に広大だ

そのただでさえ広い空間が迷宮になり入り組んだ状態で…あの宝玉を見つけろと?、砂漠の中から一粒の砂金を見つけるようなもんだぞそれ

お…おいおい、それって かなり難しいんじゃ…

『さ…課題の説明は以上です この対天狼最終防衛機構ディオスクロアの見学ツアーも兼ねて 楽しんできなさい』

と言うなり宝玉達は複雑な軌道でそれぞれの方向へ散らばるように飛んでいく…、あ やべ もう見失った

『では 魔女アンタレスの名において課題の開催を宣言します!行きなさい未来の申し子!運命を切り開く子らよ!汝らの運命に比べればこんなもん屁でもないでしょうから!!!』

そしてアンタレス様の姿も消え …場には静寂だけが残される…

え?…え?、つまり?

「もうスタートですか?」

あ、声が出た…もう呪いはないのか……

って……!

「急げーっ!」

「史上最高の課題!クリアするのは俺達だ!」

「宝玉!どっちに飛んでった!」

生徒達が一目散に動き出す、まずい 出遅れた というか、これ前年と同じでスタート地点が一番の激戦区になるんじゃないか!?全員が他候補者を落とし合う激戦の地、まずいぞ こんな生徒達に囲まれた状態じゃエリス達も消耗は免れない

「ラグナ!どうしましょう!」

「とにかくこの場から離れる!全員離れるなよ!」


『ああ一つ言い忘れましたけど……』

ふと、全員が武器を手に取り エリス達も構えを取った瞬間、天からアンタレス様の姿なき声が聞こえてくる

『また去年みたいに開幕いきなり泥臭い潰し合いとか見せられるとガン萎えするんで スタート地点はランダムします…舌噛まないでくださいね』

「ランダム?…」

そう エリスが疑問を口にした瞬間 ふわりとエリスの足が地面離れる…、旋風圏跳を使った感覚に似てるけど 当然ながらエリスは魔術を使ってない となると、使われたのだ魔術を

ってぇーっ!?エリスどころかその場の全員が浮いてますよ!?

「な なんだこりゃ!?」

「む!?まさかランダムとは…」

「ギャーッ!私浮いでるーっ!?」

「いや、浮いてるだけじゃありません…これーっ!?」

まるで襟を掴まれ投げ飛ばされるようにエリスの体が明後日の方向に向け飛んでいく、エリスだけじゃない この場に集まった参加者全員 ラグナもデティもメルクさんも宝玉のようにバラバラに飛ばされていく

うぎゃー!?ぶっ飛ばされてるー!?、エリス飛ぶのは慣れてますけど飛ばされるのは慣れてないんですよ!?

なんで慌てる間も無くエリスの体はみんなと引き離され 遠くへ遠くへ飛ばされていくのでした、…みんな どうか無事で 頼みますよ!

……………………………………………………………………

突如として始まった課題、いきなり魔女様が現れ いきなり街が実は防衛機構だなんて言われ いきなりスタートしていきなりみんなと引き離され いきなりすっ飛ばされて

少しは脳みそが理解するための時間というものを用意してほしい、いきなりすぎて流石に戸惑うと言うものだ

「…はぁ、かなり飛ばされたな」

ふと膝を叩き埃を払いながら立ち上がるのはメルクリウス、魔女の力によってこの対天狼最終…ええい名前が長い!面倒だ!、この大遺跡群の何処かに飛ばされたらしい

「しかしこれは…進むだけでも難儀しそうだな」

クルリと周りを見回す、街が変形して作られたこの場所…元々民家や商店があったであろう場所は地面がクルリと裏返りその下にあった遺跡群が表層化している、遺跡群…そうとしか形容できない

様々な形の赤茶色の遺跡が所狭しと並んでいる上 酷いところは遺跡と遺跡が重なって作られているところもある、あちこちに開いた入り口や遺跡と遺跡の間に生まれた微かな隙間を進んでいくんだろうがこれまた入り組んでいる、ちなみに私の立つ場所は遺跡と遺跡間だ…

…遥か向こうへ目をやれば変形した学園が見える、まるで台座が盛り上がったかのように学園は上へと押し上げられているおかげで学園の場所が非常に分かりやすい、位置関係的に私は学園から見て北側に飛ばされたようだ

そしてその奥…、街をぐるりと囲むように現れた巨大な壁 凄まじい大きさだ、魔女大国の国境砦にも比類するデカさだ…対天狼 と言うとおそらく想定した相手はシリウス あの史上最強にして最悪の魔術師を相手取ることを考えて作られた要塞か

恐らく、このヴィスペルティリオという街は 世界最古にして世界最強の要塞だったのだろう、三年も住んでいて驚愕の事実だ、なんてところに住んでたんだ私たちは

「さて、みんなとはぐれてしまったが…どう動くべきか」

右を見る左を見る、ついでにもう一回右

どこを見ても遺跡 遺跡 遺跡だ、外を通るか 或いは中を通るか、どちらにしても現在地の把握には難儀しそうだ、フラフラ歩けばあっという間に迷いそうだ

それに、我らの目的はあくまで宝玉の確保…しかし仲間と逸れてしまった以上 合流も考えければならない

(単独行動で宝玉確保か…合流して行動か)

流石に全員が散り散りになった時のこと話し合っていないからな、どう動くか…ラグナ達ならどうやって動くか

いつもならみんなに意見を聞けばいいが、今みんなは側にいない…つまり 言葉を交わさずに決めなければならない、全員の行動を

この課題 ポイントは一つだ…『如何にチーム内で行動指針を共有出来るか』、そこにかかっている

チーム全員が合流を目指しているのに一人だけ宝玉確保を目指せばその分だけロスになる、逆も然り 全員が宝玉を探しているのに一人だけ合流を急げば…とな

ラグナ達の行動を予測し 合流か単独行動かを選択しなければならないんだ…、仲間達ならどう動くかを考える それがこの課題の真意

「ふむ…」

頭の中に思い浮かべる、イマジナリーラグナやイマジナリーデティ イマジナリーエリスを、ホワホワとした三人は何かを話し合って

最後にラグナが腕を組みながらこう纏めるんだ

『みんな、単独行動で宝玉確保を目指そう、お互いどれだけ離れてるか把握出来ないなら 合流にも時間がかかるかもしれないしな、ここは宝玉を見つける方に力を入れる』

…と、仲間と合流したい気持ちもあるが 合流しなければ危う奴は我らの中にはいない

ラグナは言わずもがな、デティだってしっかりしているし エリスは単独行動させればピカイチの動きをする、ならここは仲間を信じて 

「宝玉を探すか」

そうだ、仲間を信じるのだ 我らが今まで培った時間、そしてその中で育んだ関係を信じるぞ

それに、仲間とどれだけ離れているか分からないと言うことは、逆に言えば案外宝玉も近くにあるかもしれんしな、そうと決まれば手早く動くぞ…!

もしかしたら戦闘になるかもしれないので取り敢えず双銃は作っておく…さて、どこ探すか

「宝玉はどこにあるんだ?、遺跡の中か 外か…探すと決めても簡単に見つかるものでもなさそうだな」

取り敢えず動かないと始まらない、思考を終えるなり私は一人で歩み始める…すると

「ん…?」

ふと、音が聞こえた…これは そう 駆動音とでも言おうか、何かが動き始めた音が背後から聞こえ、思わずそちらに振り向くと

そこには、…大砲が見えた さっきまでなかった砲台が地面から音を立てて現れ…こちらを向く

……っ!?まさか!

「罠か!?」

私の言葉と砲撃音が被さる、やはり撃ってきた 咄嗟に横っ跳びに転がり砲弾を避けるとともにこちらも銃砲をいきなり現れた砲台に向け

「『Alchemic・bomb』!」

錬金術で放つ弾丸を爆裂弾に変えつつ砲台に向け放ち、炸裂させる 錬金弾の爆発により砲台は容易く崩され木っ端微塵に吹き飛ぶ、…危なかった あの砲台 直ぐさま二発目をこちらに向けて撃とうとしていた

…こんな罠があるなんて聞いてないぞ

『あーあーテステス すみませんねまたまた言い忘れましたがこの遺跡は防衛機構の名の通り防衛するための仕掛けがウンと積んでありますので悠々自適に歩き回っていると危ないですよ』

遅いよ!、つまりあれはこの遺跡の迎撃システムというわけか…いや あんなの貰ってたら怪我じゃ済まんぞ…!

「ひぃぃぃぃ!ななんだよこれ!だ 誰か助けてー!」

「む、誰か近くにいるのか…」

今度聞こえてくるのは悲鳴だ、何処からだと慌てて視界を周囲に走らせれば 見える、向こうの曲がり角から走ってくる生徒がいる、何かから逃げているようだが…

何に と思うまでもない、その生徒の後に続いて現れたのは…

「こんな怪物が出るなんて聞いてないぞー!?」

「なんだあれは…」

簡単に言うなればそれは巨大な石の蜘蛛、長く伸びた八つの足を巧みに動かして足の付け根 …おそらく胴体とみられる部分に取り付けられた砲台が眼球のように生徒を追いかけ…、そして狙いを定めたのか 音を立てて駆動すると共に

砲弾が生徒目掛けて放たれた

「ぎゃぁぁぁぁぁ!?!?」

危ない!と叫ぶ間も無く岩石の砲弾は生徒を捉え爆発と共に吹き飛ばす、…死んだんじゃないか?冗談じゃないぞ なんで学園の課題でそんなデスゲームを…

と思ったら、砲撃により吹き飛ばされた傷だらけの生徒はこちらに来た時と同様にフワフワと浮かび上がり学園方へと飛んでいく…傷だらけだが生きてはいるようだ

『ちなみに気絶したら学園の方に強制送還されます 大丈夫死にはしませんよ?死にはしませんけどその人は失格なので悪しからず』

そういうことか、あの迎撃システムから逃げつつ迎え撃ちつつ宝玉を探せと…またなんとも刺激的な

「ほう、今度は私に向かってくるか…」

目の前の生徒を叩き潰した後 例の蜘蛛型の砲台が何処を向くかと言えば、決まっている 私の方だ

「ラグナ デティ エリス…、大丈夫だと思うが しっかりやれよ」

誰にいうでもなく囁くと共に、向かってくるか迎撃システム相手に銃を向ける、私は私で頑張るからな…!

ここにはいない仲間達を思い、私も戦いを始める…大丈夫 あいつらならきっと大丈夫だ

…………………………………………………………………………

「もうダメだぁぁぁぁぁぁ!!!!」

走る走る、坂を転がるように走る とにかく前へ一歩でも前へ、逃げなくてはならない 何が何でも逃げなくてはならない

何せ背後には

「岩ぁぁぁぁぁああああ!!!」

デティフローアはエリス達と引き離された後 とある遺跡の中に飛ばされていた、暗くここが何処かも分からないが、ラグナ達はきっとそれぞれで動いて宝玉集めに向かっているだろう

なら私も宝玉を探さないと そう思い、この暗い遺跡の中を歩き始めた途端…これだ

いきなり何かの罠を踏んだかと思った途端、廊下を埋め尽くさんばかりの巨大な大岩がこちら目掛けて転がってきたのだ

「ぎゃぁぁぁぁ!!!死ぬ!死ぬ死ぬ!怪我じゃ済まないよこれ!アンタレス様のバカー!!あ!やべ!今のなしー!」

兎に角足を回転させるように一本道を先へ先へ進む、ラグナ達と一緒に体鍛えておいて良かった、でなければ今頃私はペチャンコだ

しかしなんとかしないと宝玉探しどころではない、というかそれ以前にスタミナが切れたらその時点でジ・エンド 可哀想な私はタオルみたいにペラペラになってラグナ達と再会することになる

…うう、それは嫌だ みんなのお荷物になりたくない!

「うおぉぉぉぉ!生き延びてやるぅぅぅ!!!」

「やや!そこにおわすは魔術導皇デティフローア様!」

「って、なんでクライス君がっ!?」

岩から逃げるため走っていると目の前から如何にもエリートですって感じの男の子、私たちの協力者たるクライス君が立ち塞がるではないか、後ろの岩見えてない感じかな?

「君達とは協力関係にあるがそんなもの今は無しだ、この課題が我々にとって最後の課題!ならばここで決着をつけていただきたく!」

「今っ!?ここでっ!?今っ!?」

どんな神経してんだこいつ!、余裕ないの!忙しいの見れば分からない!?くそ…邪魔を…

「邪魔するなぁぁぁっっ!『デリュージバースト』!!」

「私もこの三年間身を改めて鍛錬に鍛錬を重ね…ってまだ口上終わってないブッッ!?」

放つ 水の爆裂破、それは油断しきったクライス君を吹き飛ばし遺跡の壁へと叩きつける…

「…む 無念…」
がっくりと気を失うと共にフワフワと光に包まれ何処かへと飛んでいくクライス君、…ごめんね 決闘とかはさ、また今度受けるから 今私生死かかってるからさ ごめんね

「ん…?」

ふと、クライス君を吹き飛ばしてあることに気がつく、…これ普通に岩ぶっ壊せば良くね?あのくらいの岩なら私余裕じゃん、なんでお利口に逃げてんだろう

「ふぅー…『プロミネンスノヴァ』」

ゆっくりと立ち止まりながら迫る岩に向け手を掲げ、白色の閃光を放つ 強烈な熱線は瞬く間に岩を溶かし貫通させると共に粉々に打ち砕き、割れた破片が私の足元に転がる、他愛なし!

「はぁー…疲れたー、もう終わりにしてもいいくらい走ったよう…でも宝玉は見つけないとなぁ、何処にあるんだろう」

んんー と腕を組んで右へ左へ首を傾け考える、なんのヒントもなしに探してたらさっきみたいな罠に引っかかりまくっていつかバテちゃう、かといってヒントはなさそうだしなぁ

…いやあったわ、あれ あの宝玉、アンタレス様が作ったっていってたよね、ってことはアンタレス様の魔力が染み付いてるんじゃないか?、あれ程の魔力を持つ魔女様の作った宝玉だ

きっと、その残滓だけでも私なら感じ取れるんじゃないか?

「やってみる価値はあるよね」

静かに目を閉じる、私という存在を霞のように薄め 世界と同化しながら弄るように周囲を探る、普段は抑えている魔力感知 それをフルに用いる…やったことはないけど、この街の外までくらいなら正確に把握することができると思う

…事実、街中に広がる生徒達の魔力を感じることが出来る、多分メルクさんと思わしき魔力は遺跡の迎撃システム相手に戦ってるようだ、ラグナは…まぁ楽しそうだな

ただエリスちゃんの魔力は見つからない…何処に?いや ああ、見つけた…見つけたけど、なんて所に居るんだ…、あんな所に空間があるとは思えない エリスちゃんとの合流はほぼ無理だな…

まぁいい、今は宝玉だ えーっと宝玉宝玉…お!ラッキー!近くにあんじゃん!この遺跡の奥地だね、幸先が良い良い、というかこの課題私大活躍の予感しかないじゃん!私なら全部回収できんじゃね?

ん?、なんだこれ

「……っ!これは」

宝玉を発見し魔力探知を止めようとした瞬間、何か 異質な魔力を感じて慄く…なんだこれは、いや もしかして…

「…ヤバいかも、早く宝玉を回収してみんなと合流しないと!」

血相変えて走りだす、取り敢えず宝玉だけ回収してラグナとメルクさんと合流しよう!一個見つけりゃ御の字でしょ!、兎に角早く動かないと!

頑張れー!私のちっちゃい足ー!体ー!フルバーストっ!

…………………………………………………………

「ふーっ…流石俺 ついてるなぁ~」

ラグナは軽く足をついて息を吐き、顎に伝う冷や汗を拭う…ラグナは今現在 遺跡群の中央通りとでも言おうだだっ広い空間にて空を仰ぐ、エリス達と引き離されてさてどうするかとも思ったが

アイツらなら個々で動いてくれるはずだ、なら俺もみんなに負けないように頑張らないと…と気合を入れたはいいが…

まさかこんな事態になろうとは

「ははははははは!!!、いやぁ!こんなところで会えるなんて!僕達はきっと運命の友らしい!」

「助けてくれた恩義はあるけど、今そう言うの関係ないわよね」

「私的には恩とかそう言うのないんだけど…、やるならメルクとが良かったわ」

目の前に立つのは巨大な獣人と化したガニメデ 明らかに法律に違反してそうな大杖を構えるカリスト 、ぬいぐるみの兵を侍らせるエウロパ…そして

「エリスはエリスでアマルトと決着をつけるなら、私達も分かりやすい決着のつけ方が必要ではないだろうか?ラグナ陛下」

「イオ…まさかとは思ってたけどやっぱお前も強いんだな」

イオだ、その三人を率いるイオ・コペルニクスが悠然とラグナの前に立つ、こいつらはこいつらで一つのチームだ、所謂ノーブルズ中心メンバーだけで構成されたチーム…

全員が全員きちんと強い、というか…

「お前ら合流早くねぇか!?」

「はははは、ガニメデの力を使えば散り散りになった仲間の捜索も合流も、目当ての敵の探査も朝飯前なんだ」

そう言えばこいつだけは課題の内容を知ってるんだったな、だから予めガニメデに作戦を伝えていたんだろう、なんかずっこい気がするが言うまい…、この面子を集めて 態々俺のところに来てくれたんだから

「じゃあ一つ、聞いてもいいか?」

「構わないよ」

「お前ら四人だよな?、最後の一人 五人目は誰だ?アマルトか?アドラステアか?」

「居ない、君たちと同じ四人チームだ、アドラステアは不参加 アマルトはチームを組まず一人で参加している」

「へぇ」

アマルトは参加してるのか、其れを聞けただけでも十分だが…そうか、アドラステアは 前年の優勝者は参加してないのか、奴には辛酸を舐めさせられたから出来ればリベンジしたかったが…、まぁいい 今更とやかく言っても仕方ねぇな

「さて、質問は終わりかな…では 私達も続きを始めようか」

するとイオは懐から短槍を取り出し その鋒で指先を傷つけると…

「人を呪わば穴二つ、この身敵を穿つ為ならば我が身穿つ事さえ厭わず」

小さく詠唱を言祝ぐ、鋒に傷つけられた指先からは血が伝い やがて血は黒く染まりながら短い槍を包み込む、血に包まれた槍はその柄も刃も大きく大きく伸びて…一つの漆黒の槍へと姿を変える

「『呪装・黒呪ノ血槍』」

「ほほー、お前もアマルトから呪術を習ってたんだな」

「まぁね、と言ってもこれは単純に己の血を武器へと変質させるだけの魔術だ、特殊な力はない」

そうなのか?エリスは昔あの黒い刃で傷つけられたら体が動かなくなった言っていたが、もしかしたら傷つける以外にも条件があるのか…あるいはイオが嘘をついているか

どっちでもいい、結局傷をもらわなきゃいいだけなんだから

「さぁ行くよ?、これがノーブルズ最後の戦いだ!、長く続いた歴史の終止符に相応しい戦いをしよう!」

「おう!望むところだよ!」

イオとラグナ、二人の王の咆哮を嚆矢として 両雄の対決の幕が上がる

「うぉぉぉぉぉおおおお!今度は負けないからねっっっ!!!」

まず最初に動いたのはガニメデだ、その身を遺跡よりも大きな獣…狼型の獣人へと変えた彼はその脚力を以ってして飛びかかる、人を超える獣の筋力 人知を凌駕するその大きさ 重さは、ただそれだけで破壊力を生む

爪を突き立て、放たれるその一撃は岩でさえ容易にくり抜くだろう そんな恐ろしい一撃が容赦なくラグナへと降り掛かる

「前より速くなってるな!ガニメデ!」

されど、降りかかる巨爪を前に空を撫でるような軌道でラグナが手を払えば 、たったそれだけでガニメデの爪は打点を逸らされラグナの隣の地面へと突き刺さる

「『アイスフィールド』!!」

続けざまに放たれるのはカリストの氷の魔術、あの後コネと権威で特別に認可を降ろし使用可能となった巨大な杖ガンダールブルを掲げ、放つのは氷属性魔術 アイスフィールド、周囲をただ氷で包むだけの其れはガンダールブルの力により大幅に強化され

瞬く間に周囲を氷のせいに変え、地面から突き出る氷の槍達がラグナへと殺到する

「何度も効くかよ!」

されど…されどラグナは一撃地面に蹴りを入れ 震動を用いて足元の氷を全て遍く砕き切る、まさしく一挙手一投足が天災級 魔術を一切用いずこれなのだから彼の相手は本当に辟易する

「聞いてた通り、凄まじい強さね…、ぬいぐるみ軍団!かかりなさい!」

「ん…ぬいぐるみか、やり辛いな」

エウロパの号令により動き出す呪いのぬいぐるみ軍団、他人の生体情報をトレースしぬいぐるみに複写するこの呪い、事前にコルスコルピ王宮剣士団の団員達から髪を分けてもらい作った総勢五十人の軍隊

熊や兎のぬいぐるみがギラついた鋼の剣を持って殺到するのだ、心臓の弱いものには到底見せられぬ衝撃的な光景

それを前にラグナはやり辛そうに顔を歪める

「っち!、案の定打撃が効かねぇか」

ラグナが一撃拳を放てばぬいぐるみはいとも容易く吹き飛ばされるが、逆に言えばそれだけだ ワタで出来た体はラグナの拳を受け止めて弾いてしまう、撃退は出来るが撃破は出来ない

こう言う時打撃しか攻撃法の無い己の弱点を悔やむ、帰ったら師範に聞いておこう 『ぬいぐるみと戦った時有効な攻撃って何ですか』って、すごい顔されそうだな

「本命はこちらだよラグナ!」

「来たか…イオ!」

ぬいぐるみの隙間を縫って飛んでくる黒色の刺突を前に仰け反り、髪先がハラリと舞う

イオの刺突だ 凄まじい速度で飛んで来た、あの呪術はただ武器を用意するだけの呪術、つまりこの一撃は純粋にイオ個人の実力によるもので…

「お前…王様にしちゃ強すぎないか?」

「それをあなたが言いますか!」

「それもそうだな!」

ぬいぐるみの大群を腕の一払いてまとめて吹き飛ばし、イオと向かい合うラグナ

イオは槍を柄の中頃で逆手に持ち 刃を下に向けた状態で構えると言う変則的な型を取る、いや 変則的なのは型だけでは無い 攻めもだ

「これでも幼い頃から武芸は叩き込まれていましてね!、私はこれで座学が苦手で…いつも鍛錬に逃げていましたが 、それがこんなところで役に立とうとは!」

柄での打撃と刃での攻撃が連動している、柄で叩き 引くと同時に尻の刃が突き出される、一つ防いだら続けざまにもう一撃が飛んでくる、上と下の連続攻撃 思い付きや咄嗟の判断で出来るものでは無い

イオは強いのだ、真っ向勝負で戦えばそこらの騎士や剣士と差がない程に、故にアマルトも下手に搦め手を教えずただ武器を用意するだけの術に留めたのだろう

「っちち…やるな、イオ」

イオの猛攻を全て受け止め軽く後ずさる、あの黒槍…古式魔術で作られてるだけあって硬いな、俺の全霊の拳を受けても刃の一つも欠けねぇとは

「驚くのはこちらの方ですよ、黒呪の刃を素手で受け止め弾き返すとは…一体どんな鍛え方をしたら人間そこまで硬くなれるのか」

「別に普段から硬いわけじゃねぇよ、これは剛健の法つって体を堅める武術の一種でな…っと!」

「おっと、当たらなかった」

こいつ!喋ってる最中に突いてきやがったぞ!、イオめ もっと厳格な奴かと思ってたが、ノーブルズという重荷が無くなったからか 最近はやけにフランクというか、有り体に言うなれば本性を遺憾なく発揮してくる

こいつの本性はあれだ、言うほど綺麗な奴じゃ無い 素知らぬ顔で騙し手搦め手を使うタイプの男だ、この短期間でノーブルズ解体に漕ぎ着けたのも 普段からノーブルズメンバー全員の弱みを握ってたからなんて話もあるしな

「あんまり油断出来そうにねぇな…」

「でしたらどうぞ、魔女直伝の付与魔術を使って見せてください、私も本気なんです 貴方もどうか本気で…」

「分かったよ、…遠慮も 加減もなしで行く、砕拳遮る物は無く、 斬蹴阻む物無し、武を以て天を落とし 武を以て地を戴く、我が四肢よ剛力を宿せ」

力を溜める、魔力だけではなく 全身に滾る全ての力を湧き上がらせ 滾らせる、イオという男が一人の武人として相対するならば、俺もまた戦士として向かわねばなるまい…

「『十二開神・光来烈拳道』」

体にいくつもの付与を重ね掛けし限界以上の力を出し切る、これがノーブルズとの最後の戦いだ、負けるわけにはいかないしな…ちょっとくらい 本気でかかってもバチは当たらない筈だ

けどさ!、ごめん!エリス!メルクさん!デティ!俺完全に足止め食らってるわ!宝玉のほうよろしくお願いします!

そう内心仲間達に祈りながら ノーブルズチームと相対する…


………………………………………………………………………………


…暗い、気がつけば ただただ何も見えぬ闇の中にエリスは投げ出されていた

「…ここは?」

アンタレス様の力によりラグナ達と引き離され、エリスはどこかへ飛ばされたようなのだが…途中から意識を失ってしまう、どこにどう飛ばされたのか それさえも理解出来ない状況にあるのだ

感じ的に、どこかの遺跡の中だとは思うのですが…、闇の中耳を澄ませるが 何も聞こえない、近くに人はいないようだ

「ラグナ達は何処へ飛ばされたのでしょうか…」

ラグナ達と合流すべきかな、いや、せっかくみんな別々の場所に飛ばされたのだし 手分けして宝玉を探したほうがいいか

もしかしたらこの近くに宝玉があるかもしれませんしね、なら 合流よりもこの近辺の捜索に力を割いたほうがいいでしょう

「でもここ、どこなんでしょうか…」

何にも見えない…、灯りが欲しいな…そうだ リバダビアさんの光魔晶の指輪…これがあれば光源が確保できるな、そう思い 指先に魔力を込めようとすると…

「え?」

ふと、部屋に明かりが灯り 視界が徐々に開かれていく…、見れば 天井に備え付けられた結晶が淡い光を放っているのだ、エリスの動きに反応して光がついたのか?

ともあれ 部屋の全容が徐々に徐々に明らかになる、ここは…やはり遺跡のようだ、古い石畳 古い石壁、それがずーっと向こうまで続いている、前も 後ろも…

なんか奇妙というか 変な空間だ、これも遺跡なのか?少なくとも去年見た遺跡とは様子がまるで違う

あっちの遺跡はただただ古いだけの…それこそ普通の遺跡だったが、こちらは何と言うか 古代都市の残された施設って感じ?、どちらも遺跡というには遺跡だが

…うーん、もしかしてエリス変な場所に飛ばされたんじゃ…ってあれ?

「何でしょうか…これ」

チラリと壁に目を向けると その異変に気がつく、ただの壁と思っていたが これ…よく見ると名前が刻んである、それも夥しい量の名前が壁いっぱいに刻んであるんだ

数百 数千 数万…ともすれば数え切れないくらい大量の名前…、見た感じ的に人命かな?それが延々と続く石壁に所狭しと刻まれてる

昔は壁に名前を刻む風習でもあったのかな、なんて考えながら適当に前へ歩きながら壁を見つめていると

「あれ?、この名前…」

名前の群の中に見たことのある名前を発見した

『グロリアーナ・オブシディアン』

『タリアテッレ・ポセイドニオス』

『マリアニール・モリディアーニ』

『ザカライア・スマラグドス』

『レナード・サッピロス』

『ソニア・アレキサンドライト』

エリスの知り合い達の名前だ、それが何でここに…と言うか何でこの人達?、接点があるようでないこの人達の名前が…

あ!違う!接点ならある!、この人達みんな学園の卒業生だ!

「もしかしてこの部屋…、あの学園の卒業生達の名前が刻まれてるんじゃ…」

目を走らせ壁を確認する、確かに見つかる 学園を卒業したと言われる有名人達 偉人達 そしてつい最近卒業していった人達の名前

どう言うことなのかは分からないが、この壁には学園卒業生の名前が刻まれているようだ、多分 エリス達も学園を無事卒業したら この部屋に名前が刻まれるのかな、というか 誰が刻んでるんだ?

「でもなんか面白いなぁ、他にも知ってる名前とかないんですかね」

不思議な石壁を前に ちょっと興味が湧いて知ってる名前を探しながら進む、すると 

『トラヴィス・グランシャリオ」

『ウェヌス・クリサンセマム』

デティのお父さんの名前とその師匠の名前?だったか?もある、世界で活躍する偉人達も、昔はあの学園で学んだんだろう

『イージス・ネビュラマキュラ』

『ルードヴィヒ・リンドヴルム』

『アーデルトラウト・クエレブレ』

『ニコラス・パパラチア』

知ってる名前がいくつか見つかった、ニコラスさんだ…あの人この学園の卒業生だったのか、そんなこと一言も言ってなかったが いやまぁ聞かなかっただけだが

というか 一瞬びっくりする、ネビュラマキュラの名前があったから…けど、バシレウスじゃない イージス・ネビュラマキュラ…聞いたことない名前だな、バシレウスの兄か…親か、分からないがその辺だろうな

他にもないかと探してみると…

『エクスヴォート・キルクイトゥス』

『レナトゥス・メテオロリティス』

知り合いというかなんというか、レナトゥスの名前があった、マレウスで宰相をやってるあの人…舞踏会の場で話したのは記憶に新しいが、そっか あの人もここの卒業なのか…

そうやって名前を探しているうちに、名前の並びに一つの法則性を見つける

「これ、年代順なんですね」

先へ進むと時代が遡り 後ろへ戻ると新しいものになる、さっきの年代も一番古いのがニコラスさん達 その次がレナトゥス…一番新しいのでグロリアーナさんと言った順番だ

ということはどんどん進んでいくと、エリスの知っている名前は少なくなる ということか

「んん、も結構進んだからか 知ってる名前はありませんね」

先へ進めば進むほど、名前は古いものになっていく、もう知り合いとかそんなレベルではなく 教科書で目にする偉人達の名前ばかりだ、この辺は今からざっと五百年くらい前かな

「へぇー、この人も学園の卒業生だったんだ…」

歴史の教科書を見るような感覚で古い石壁を眺めていると、…気がつく 知っている名前を目にする、それは…

『ケイト・バルベーロウ』

…ケイト・バルベーロウ というと、確か冒険協会の立役者として知られる人だ…、エリスやバシレウスを遥かに上回る魔力を持つと言われる冒険者史上最強の魔術師…

けど、それが500年600年前の偉人達に混じって名前が刻まれている

おかしい、どう考えてもおかしい…だってそんな昔の人間が今生きてるわけがない、もしかして同姓同名か?…そう考える方が普通か、少なくとも 500年前の人間が存命していることに比べれば…

…ん?、500年前?

「そうだ!、そんな昔の名前がここにあるんなら もしかしたら魔女様達の名前も刻まれてるんじゃないでしょうか!」

あの人達だってこの学園の卒業生!、ならここに名前があっても不思議ではない、この壁にいつから卒業生の名前が刻まれているかは知らないが、この遺跡になら ひょっとして!

ただなんとなく そんな好奇心でエリスは駆け出す、知ってる名前があるなら見てみたい、そう考え前へ前へ走り出す

千年前 二千年前 三千年前、走れば走るほど名前が古くなり 刻まれている壁もまた古くなる、それでも進む

四千年前 五千年前 六千年前 七千年前、もうとてつもなく古い…刻まれてる名前も今はもう現代には伝わっていないような古いものになり…そして

『アルデバラン・アルゼモール』

『トミテ・ナハシュ・オフュークス』

あった、アルデバラン…確か師匠達と同じ年代で学園を守ったと言われる英雄の名前、まさか実在していたとは…驚きだ

そして同じく名前の刻まれる人物 トミテ・ナハシュ・オフュークス…聞いたことのない名前だが、確かオフュークスって名前の国が八千年前にはあったはず、ということはここら辺が師匠達が生きてた時代なはずだから

探せばきっと…あった!

『フォーマルハウト・ヌース』

デルセクトの支配者にして歴代最強の錬金術師…栄光の魔女フォーマルハウト様の名前だ、…というか ヌース?、フォーマルハウト様の姓ってヌースって言うのか、というか姓あったのか、誰にも名乗らないからてっきり無いものとばかり

いや、当然か あるに決まってる、だって魔女様達も昔は普通の人間だった、少なくともあの学園で過ごしている頃は

即ちこのヌースとはフォーマルハウト様が魔女ではない人間だった頃の名残…人間だった証なんだ、あの超絶した人も 人間の家に赤ちゃんとして生まれ 子供として生きて 学生として学んだ時代があるんだ、エリス達と同じように…

謎の感動を覚えていると、すぐ近くにまだまだ知った名前があった

『アルクトゥルス・ゾーエー』

『スピカ・ロゴス』

『アンタレス・エンノイア』

アルクトゥルス様達だ!、…へぇ アルクトゥルス様の姓はゾーエー スピカ様はロゴス アンタレス様はエンノイアって姓なのか、なんか…得した気分だ まさか魔女様達の所為を知ることが出来るなんて

きっと魔女様の姓を知るのは、魔女様達以外にはエリスだけだろう そう思うと、なんか優越感に浸れる、楽しいぞこれ!他にはないか!

『プロキオン・アントローポス』

『カノープス・プロパトール』

『リゲル・エクレシア』

まだ会ったことのない魔女様達の名前だ、閃光の魔女プロキオン様は確かエトワールを統べる方

無双の魔女カノープス様はアガスティヤ帝国 夢見の魔女リゲル様は教国オライオン、どれもポルデューク大陸の魔女様で エリスがこれからの旅で出会うであろう魔女様達

どんな人達なのかな…、というか 師匠はないんですかね?

「気になる、師匠の姓ってなんなんでしょうか」

レグルス師匠はエリスに昔のことは何も語らない、語りたがらない エリスが知ってることといえばレグルス師匠は昔は気性が荒くて誰彼構わず殴り倒してたってことくらいだ

俄かには信じがたいが師匠にもそういう時代があったんだろう、…でも だからこそ気になる

師匠はどういう姓を背負い どういう家に生まれ どういう風に生きてきたのか、師匠の誰も知らぬ根幹の部分、他の魔女様同様 師匠の名もここに刻まれているはずだ

そう思いその場で立ち止まり必死に探す、探す探す 血眼になって探す…

そして

「あった!師匠の名前!」

『レグルス・………』という名前を見て歓喜する、と 同時に…

「え?…え?、ちょ ちょっと待ってください…これ、どういうことなんですか…」

驚愕する、レグルス師匠の名前の後に続く姓を見て その文字を見て 驚愕するんだ、これはどういうことか…この姓は確か…、いやだとすると…

「これって…もしかして」

エリスは今、知ってはいけないことを 知ってしまったんじゃないか?

レグルスの名の後に続く文、それはエリスを混乱の只中に放り込む程に驚くべきものであった、だって…だって!

その姓は……!

…………………………………………………………………………

「ここにいたか、アンタレス」

「見つかってしまいましたねレグルスさぁん」

変形し様変わりした学園の頂点…屋根の上にレグルスは降り立つ、そこには普段あの地下室から動かないはずのアンタレスの姿があり 彼女は悠然と変形した街並みを眺めていた

街が変形している…これは確か対天狼最終防衛機構、大いなる厄災の時に我々の力を結集して作られた超巨大要塞だ

まさか 今尚残り続けているとは 些か驚いたが…

「防衛機構を生徒の授業に使うか?、何を考えているんだ全く…これはオモチャではないだろう」

「わかってますよけど暫く使ってなかったんで点検も兼ねて動かしたんですよ…しっかり動いてくれてよかったです」

そうだな、これは我々の思い出と努力の結晶だ…我々八人の魔女だけではない、あの日 あの時代…大いなる厄災を共に生き抜いた 今は亡き我らが友達の生きようと言う信念と執念の結晶

それが朽ちていくのは物悲しい…、こういった形ではあるが またこの目で見ることが出来て 喜んでいる自分がいるのも確かだ

「懐かしいですねレグルスさぁん…あの苦しい時代は この防衛機構があったから乗り越えられた」

「そうだな、ある意味ではこれは 我らが第二の故郷とも言える…」

アンタレスの隣に立ち 遺跡群を眺める、カノープスの案により街を丸々防衛機構に改造したんだ、最初は無茶だとも思ったが…これがあったから今の世界は実在する

いや、この防衛機構ともう一つ…アルデバラン、彼女が居たから と言うのもあるな、…口うるさく面倒な奴だったが、あいつも他の魔女達に並ぶくらい 大切な友だ

「さて、アンタレス…私がお前を探し回っていたのは知ってるな」

「はいどうせアルクトゥルスさぁんから聞いてるんでしょう?私が暴走だとかなんだとか」

その通りだ、かつてのアルクやフォーマルハウト同様 アンタレスもまた己の魔力に押しつぶされ 自我を失っていると聞かされたからこうしてアンタレスを探していたんだが…

…見た感じ、普通だな 暴走してる感はない

「暴走してないのか?」

「…アルクトゥルスさぁんから聞いてませんか?私はこれを この一連の魔女の凶行を暴走とは考えていません」

聞かされている…アンタレスはこれを暴走ではなく別の要因からなる物だと、私の見立て間違いだと、しかし だとするならあれは一体なんなんだ あれを暴走と見ずして一体なんと?

「どうせシリウスの一件と重ねて見てるでしょ?シリウスのは確かに暴走でしたけど私達のこれはまた別の問題です」

「別?…だがしかし、ならお前は一体何故それを黙っていた、何故知っていることを私に話さなかった!」

「貴方には話せないからです」

拒絶するような物の言い方に思わず胸がチクリと痛む、私には言えないか…そうか お前はそう考えているんだな

「私には言えないことなのか?」

「…出来れば話したくありませんでした」

「何故か聞いてもいいか?」

「レグルスさぁんの考える通りですよ…貴方だからです」

それは…、それは…

「レグルス…いいえ ここでは本来の名で貴方を呼びましょうか?」

「っ…やめろ、もうその名は捨てた…私はもう二度と姓を名乗る気はない!」

「それでも向き合うべきです…向き合う時が来たのです…レグルス いえ貴方の抱える真の名と」

其れはかつて私にとっての祝福であり 全てであった名前、今はただ呪いでしかない その癖いまだに私の全てであり続ける忌むべき言葉

孤独の魔女レグルス…人としての名を

「原初の魔女シリウス・アレーティアにこの世で最も近しい存在でありシリウスの生み出した全ての魔術の立証者…レグルス 否 『レグルス・アレーティア』」

「っ……」

「分かりますよね 私が警戒する理由…何せ貴方とシリウスはこの世で唯一血を分けた者同士…姉妹なのですから」

そう、我が真の名をレグルス・アレーティア…私はシリウスの シリウス・アレーティアの弟子であり…唯一の妹、大いなる災いであるシリウスは私の姉なのだ

「貴方こそが…第二の大いなる厄災になり得る可能性は大いにあるのですよ レグルスさぁん?」


……………………………………………………

『レグルス・アレーティア』

その文字を見てエリスは驚愕する、だってアレーティアって言ったら シリウスと…、あの大いなる厄災 シリウス・アレーティアと同じ姓…

偶然の一致、な訳ないよな…関係性は分からないが シリウスとレグルス師匠が血を分けた家族であることは間違いない

だとすると …、レグルス師匠は全てを教えてくれたと言う師匠であり血を分けた肉親でもあるシリウスをその手にかけたことになる、その痛みたるや想像を絶する…

「いや違う、そこじゃない…シリウスとレグルス師匠が肉親である、…これはもっと別の…何か重大なことを意味するんじゃないのか?、でなければ…」

でなければ 師匠が頑なに己の出自を明かさなかったことの意味が…、くそ 見るんじゃなかった 知らないままでいた方が良かった

師匠がシリウスの肉親?、…あの世界を滅ぼそうとしている恐ろしい存在と師匠が…、モヤモヤする

凄まじくモヤモヤする、師匠が内緒にしていることを無理矢理暴き立ててエリスはどうするつもりだったんだ…、知ってはいけないことを知ってしまった後悔

既知は未知にはならない、されどさらなる未知の呼び水となる…分からない 分からない…、何が分からないのかも分からない、けど …とても重大なことの気がする

「…師匠に聞くか?、いや…師匠は触れて欲しくないみたいだし、じゃあエリスはこの事で一生悶々として生きていくのか?…師匠とシリウスの関係はただの師弟じゃないもっと特別なもの…」

だから師匠は他の人じゃ使えないような 虚空魔術のような特別な魔術を使えたのか…ああ

「あー!見なかったことにしたい~!」

「何騒いでんだ一人で」

「ッ……!?」

居るはずのない別人の声に驚いて、咄嗟に 何の意味もなく壁の師匠の文字を隠しながら立ち上がる、誰だ 別の人間がいたのか?師匠の事で頭がいっぱいで接近に気がつけなかった…

一体誰…

「って、貴方…」

「よう、やっぱお前もここに来てたんだな…アンタレスはどうしても 俺とお前に決着をつけて欲しいようだ」

気怠げに伸ばした茶色の髪と 赤黒い瞳…、彼に会うつもりでいたけれど まさかこんなに早く邂逅することになるとは…

「アマルト…」

「お前もそのつもりで来てんだろ?エリス」

アマルト・アリスタルコス その人が、エリスの目の前に立っていた…
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