孤独の魔女と独りの少女

徒然ナルモ

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二章 友愛の魔女スピカ

31.孤独の魔女と先輩と後輩と同期

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友愛騎士団の専属治癒術師ナタリア・ナスタチウムはかつて宮廷魔術師団に所属していた際、レオナヒルドという意地悪な魔術師に虐められていた というのは少し前から白亜の城に勤める者なら誰もが知っているほど有名な話だ

それ程までに、レオナヒルドはナタリアにキツく当たっていたし 当時まだ今ほど人として強くなかったナタリアは それに逆らえずにいた、と騎士達の多くは語るし 実際そうだった

レオナヒルド脱獄に際し ナタリアが疑われはしたものの 本当に脱獄させたと思った者は少ない、だってナタリアにとってレオナヒルドは未だに憎むべき相手のはず そんな相手の利になることするはずがないと…

騎士達の予想は的中し、ナタリアは犯人ではなかった、なら そもそも何故疑われたのか


それはここ最近のナタリアの謎多き行動にある

騎士団本部になかなか顔を出さず、数ヶ月間 広い皇都を彷徨うようにフラフラ彼方此方を行ったり来たりしている

見つけたと思ったら貴族の家にいたり 大商家と話しながら歩いてたり、このアジメクにおいて権威を持つ者の側をうろちょろしているらしい、多分オルクスの所へ赴いた時と同じような感じだろう

かと言って調べても何をしているかはいまいち不明瞭、話している貴族や商人達に話を聞いても『口止めされている』『態々話すほどのことではない』など突っぱねられ碌に情報も得られない

だがそんな中でもナタリアは騎士としての仕事はちゃんとしていた、それならデイビッドも大した文句も言えないだから今日の今日まで放置されていたが…

誰にも言っていない 誰も知らない行動をしているせいで、皆 もしかしたらと少し疑ってしまったのだ

やはり良くないと思う、仲間にも誰にも打ち明けないってのは 今回は偶々無罪が証明されたから良いものを、もしかしたら次は冤罪を被られるかもしれない

どうしてもいいたくないことなんてのは人間誰にでもある、私にもある だが…それでもこんな事があった後だ、いい加減話してくれてもいいのではないだろうか



そう思い、レグルスとエリスが行くのは仮設の医療施設、先ほどの戦闘で負傷した兵士や騎士達が運び込まれている場所だ 当然、ここにはエリス達を守って負傷したクレアや ナタリアが運び込まれている…

ここに来る要件は二つ、一つはここにいるナタリアへ話を聞く事、今までどこで何をしていたか 話してもらうつもりだ、嫌がっても今回は無理やり聞く

だが一応ナタリアの傷は治癒魔術によって治ったらしいのだが、些かダメージが大きかったようでまだ目覚めていないと聞く、…が 多分だから程なくして起きるだろう、勝手な予想だがな 起きてなければ少し待つつもりでもいる

そして二つ目、その待つ間にエリスの傷を治してもらう…、エリスは平気な顔をしているが この子もこの子で戦闘時に負った傷をそのままにこちらへ来ている、情けないことに私は治癒魔術を使えないので 軽くここで治してもらうつもりだ

治癒魔術とかポーションがあれば 軽く治るような傷だからね



そんなこんなで 医療『施設』とは名ばかりのテントを潜り、あっちへこっちへてんてこ舞いの医者にエリスを渡す、エリスが若干寂しそうな顔をしていたものの 傷をそのままにするわけにはいかないのでここで別れる


そして私は第一目的たるナタリアを探して 彼方此方を探していると…見つかった、怪我をして呻き声をあげるベッド群の中 一つ静かなベッドがあるからだ

彼女はベッドに横になり、死んだように動かず 眠っている…死んでいるように見えるだけで、ちゃんと生きてるのは言うまでも無かろう、余程受けた治癒魔術が良かったのか 大きな傷も残ってないしな

「……ナタリア」

ベッドの横に立つのはデイビッドだ、こいつもさっきの戦いでボロボロにやられ 目覚めたのはさっきだと言うじゃないか、一応治癒魔術は受けたらしいが…こちらはあまりいい治癒魔術を受けられなかったようで、折れた骨やらがそのままだ 一応包帯で応急手当てをしてあるが…重傷であることに変わりはない

「デイビッド、お前も病み上がりだろう 寝ていろ」

「魔女様…ハハハ、いや すみません、なんか 横になれなくて…」

乾いた笑いでそう返す、最近デイビッドは乾いた笑いをする事が多くなった気がする、それは団長としての業務が忙しいからか 或いはナタリアのサポートがなくて弱り始めているからか、どちらも同じか

「だとしてもだ、お前は1日でも早く傷を完治させねばならない立場だろう」

「そう…ですよね、俺今 騎士団長ですもんね…」

複雑そうな顔だ、最初会った時はざっくばらんとした気持ちいい男だと思ったが…いや、違うか こいつは最初から責任感溢れる男だった、此度のこともまた責任を感じているのだろう

「俺 やっぱりダメですよね、団長向いてないって言うか…やっぱりヴェルトの方が騎士団長に向いてるって…俺自身そう思いますし、何よりヴェルトがいたら 今回の件だってもっと被害が少なかったかもしれない」

「む、いやデイビッド それはちが…」

「いたんですよね、ヴェルト…あの場に 敵として」

私の否定の声を遮り、言葉を並べるデイビッド…なるほど 悩みのタネはそっちか、ヴェルトは騎士団の元団長 それが敵としてあの場にいた事実をデイビッドは後になってから聞いたのだろう、彼はあの場で気絶していたからな

「いたな、魔女に怒りと剣を向けていた」

「そうですか…、…結局 俺にはなんの相談もしてくれなかったんだなぁ、やっぱり ヴェルトにとって 俺ぁ眼中にも無い存在だったんだろうな」

悲しく 天を仰ぎ、力抜けたように椅子に座るデイビッドを見ていると かける言葉が思い当たらない、ヴェルトとデイビッドは学生時代からのライバルだと言う、事あるごとにデイビッドがヴェルトに挑み 負かされまた挑み なんて姿を見たことがある者は多いらしい

ライバルとは裏返せば親友にも似足る…、そんな相手がなんの相談もなしにフラッと消えれば そりゃあ傷つきもしよう

故に、デイビッドの事もヴェルトの事も知らぬ私は 余計な口出しなどできない…

「眼中にないことはないよ、きっとヴェルト団長もいつもデイビッドの事を意識してたと思う」

だが、デイビッドの事もヴェルトの事も知る者なら 余計な口出しも許されよう、其れは 二人を一番近くで支えてきた、二人にとっての 相棒…

「な ナタリア!気がついた」

「うん、目を開けたら辛気臭い顔が並んでたから 、起き抜け好調元気一杯ってわけにはいきませんけどね」

デイビッドへ 励ましの言葉を投げかけたのは、他ならぬナタリアだった

いつものおちゃらけた雰囲気も 今はなりを潜めている、本人の言う通り元気はなさそうだが 、其れほどまでに消耗しているということだろう、だが辛そうではない 無事そうだ

「お前…っ!色々言いたいことはあるけど、無事でよかった」

「…ははは、心配かけちゃいましたね 、しかしまさかあそこで不意打ちが飛んでくるとは…不覚も不覚、オマケに重いの貰って確実に死んだと思ったんだけど…悪運が強いことだねぇアタシも」

「ほんとだよ、誰が治してくれたかはしらねぇが 多分ヴィオラ辺りが頑張ってくれたんだろうよ、後で礼を言っとけよ」

「ほいほい」

二人とも、今回はボロボロになった お互い生死の境を彷徨いもしたが…こうして顔をつき合わせているだけで、自然と元気になっていくのだから 友人とは不思議なものだとつくづく思う

だが、そうだな…ナタリアの方は 手放しに元気 って言うわけじゃなさそうだ

「…ねぇ、デイビッド団長代行さん」

「なんだよ改まって」

「レオナヒルドってどうなりました?捕まりました?」

レオナヒルド…、ナタリアとエリスが追い エリスが激闘の末逃してしまった、彼女の行方だ 当然気になるだろう…

がどうにも、ナタリアの表情を見るに内に秘めた感情はそれだけではなさそうだ、どんな表情って…一言で言うなれば無表情、ただ 努めて表情筋を動かさぬよう必死に取り繕った仮面のような無表情は…どこか悲しげな雰囲気を纏っている

「レオナヒルドは逃げた、メイナードたちが追ってはいるが この時間になっても音沙汰がないってことは、あまり期待しないほうが良いと思う」

「そう…っすか」

包み隠さず話す、それは死にかけたナタリアの努力が徒労であったと伝えるも同然、でも話す デイビッドは相棒に隠し事をされる辛さを痛いほど知る男だ、どんな小さな事も ナタリアという相棒には隠したくないのだろう

だからこそ、ナタリアはその言葉を信じる 信じて…体を震わせ、その無表情が 崩れる

「そっか…そっか、逃げたか あのバカは、分かってたけどさ …ほんとバカだよな、アイツも…アタシもさ」

「ナタリア?…」

ナタリアから溢れでたのは 怒りでも呆れでもない、涙だ …悲しみから流れる涙ではない、これは 諦めと嘲笑の入り混じった 『やるせない涙』だ、逃げていったレオナヒルドを憐れむように その背中を眺めて嗤うように ナタリアは泣く…静かに

「もうどうでもいいですし、アタシが今の今まで何してたか教えましょうか?、どうせ二人とも其れが聞きたいんでしょ、今まで何を怪しいことしてたんだって」

「そんな事…いやそうだな、聞かせてくれ ナタリア」

こんな状況になってまでお前を問いただすつもりはない  そう言いかけては口を閉じ姿勢を正すデイビッド、そうだ ナタリアは聞いて欲しいのだ 

今まで何をやってたか聞いて『そんなバカなことをしてたなんて、お前はどうしようもないやつだな』と笑ってほしいのだ、そうでもしないと 今の彼女はやるせなさでどうにかなってしまいそうだから

「ふふん…じゃじゃーん これ集めてました」

「これは、…なんだこれ 紙の束?汚ねぇな」

力なく笑いながら胸の内から取り出すのは 汚い紙の束、懐に入れていたこともあり ナタリア自身の血で汚れ尽くし 最早中に書かれている文章は正式には読み取れない

「嘆願書です、レオナヒルド減刑の為の嘆願書…アジメクに顔が効く貴族のところ飛び回って集め回った嘆願書、コイツを手に入れるのに 数ヶ月かかってしまいまして」

「た 嘆願書!?、レオナヒルド減刑のって…なんだって そんなもんを、お前 レオナヒルドにいびられてたんだよな、さんざ酷い目にあわされて来たんだよな!、なんでそんな奴のために数ヶ月もかけてこんな…」

「んー、なんででしょうかね アタシにも分かりません、確かにデイビッドの言う通り…アタシはレオナヒルドに酷い目あわされましたよそりゃ、アタシが新人で逆らえないからっていい気になったし 機嫌が悪いってだけで罵られたし、ミスを粗探しして声高に責め立てて来たり 意地汚い事沢山されましたよ」

ナタリアが新人の頃 レオナヒルドから受けた仕打ちは、まぁ 酷いものだった、殴ったり蹴ったりと傷つけるだけが暴力じゃない、レオナヒルドはその立場を傘に着て ナタリアを理不尽な程いじめ抜いた 時に言葉で 時に屈辱を味わわせ …

だからこそ、不可解だ そんな目にあわされておいて、何故 レオナヒルドを助けようとしたのか、嘆願書…魔女に逆らった罪人を助ける為の嘆願書だぞ?、其れに貴族達に名を書かせるなど至難を極めたろう …其れこそ毎日赴いて頭下げまくって

そうか、オルクスの所に赴いたのも オルクスに嘆願書に名を書かせたかったのだ、オルクスはアジメク一の貴族 影響力は計り知れない、結局オルクスが嘆願書にサインしたのかは不明だがな…

「でもね、アタシ…もしかしたらそんなに レオナヒルドの事、嫌いじゃないかもしれないなぁ~って 思ったら、なんか 色々昔のことと思い出しちゃって、…確かに嫌な事は沢山されましたけどね、アタシはそれと同じくらいレオナヒルドにお世話になったんですよ」


目を閉じ思い返すのは五年前か はたまた十年前か、ともあれナタリアがまだ若くレオナヒルドがまだ真っ当に生きていた頃だ

みんなはあの頃のアタシを いじめられてて可哀想とか レオナヒルドへの恨みがどうとかいうけれど

アタシからすれば あの頃はそんなに悪くはなかった 、遠い目をしながらかつてを想起する彼女の目は 在りし日の過去を、慈しむように天井を眺めていた

………………………………………………………………

其れは、いつかの過去 まだナタリアが新米の宮廷魔術師として研鑽に励んでいた頃だ

ナタリアと言う新米の魔術師を育成する為、その世話係に選ばれたのが レオナヒルドだった、レオナヒルド自身 実力はあるもののイマイチ若く経験も乏しい上に性格が悪い、なので 一人新人を部下につけて様子を見よう というのが当時上の判断だったと思う

部下をつけたことで責任感が生まれ 上手くレオナヒルドが成長すれば、将来宮廷魔術師団を引っ張ってくれる逸材が生まれる 、という上の思惑とは裏腹にレオナヒルドは横暴を極めていた

上が想定していた以上にレオナヒルドの性格はねじ曲がっていたのだ


新米だったナタリアが逆らえないことをいいことに、ストレス発散に罵り 罵倒し 無闇に叱りつけた、まるで自分の立場を誇示するかのように 、ナタリアもロクに言い返せないのは相手が先輩だから上官だから 世話係だから そして何よりあの英雄バルトフリートの妹だったからだろうか

ともかくナタリアは何を言われても 押し黙ってそれを甘んじて受け入れていた、可哀想に、皆ナタリアに同情し なんとかナタリアを助けられまいかと思案していた…


だが、またもや 周りのその想いとは裏腹に 実はナタリア、あまり気にしていなかったのだ
そりゃあ口汚く罵られれば顔をしかめる 嫌なことを言われればムッとする、だがそれまでだ 引きずらないし気にしすぎない、罵倒の嵐の中から 本当に有意義な話だけを掻い摘んで自分のものにする、ナタリアには其れができた

何故か?ナタリアが人間として超越していたからか…違う、ナタリアとレオナヒルド この二人が歪ながらも先輩後輩として存外上手く付き合えていたからだ





「うへぇー、また怒られた…」

ここはアジメク商業区画の端も端の 安居酒屋、安いこと以外いい事のない不味い酒を出す酒屋のテーブルに 突っ伏し文句を垂れるレオナヒルド、まだ宮廷魔術師団に勤めていた頃故 今より若くそして何より身なりが良い

「またですか先輩、アタシみたいな幼気な新人虐めるからですよ、大人気なぁ」

そんなレオナヒルドの隣でジトーッと 呆れたような視線を向けるのは、若き日のナタリアだ
まだ宮廷魔術師になって日も浅く、若い と言うよりは幼い と言う印象が勝つ程に未熟さが目立つ、と言うのにこの時点で既に 今のようなどこか達観した風格を背負っているのは流石と言えるかもしれない

「うるせぇ!、お前新人のくせに私に逆らう気か!生意気だな!ナタリア!」

「逆らわれたくないならもっと威厳ある先輩になってくださいよ、 レオナ先輩?」

周りから見れば レオナヒルドが一方的にナタリアを言い責めているようにも見えるが、実際は違う いや違わないのだが、ナタリアはレオナヒルドという先輩の こうした性格が悪い部分も含めてか嫌いになれないでいた

なんでだろうか、仕事終わりにはこうして飲みに連れて行ってくれるからか?言い過ぎてしまったと感じた時は後で不器用ながらもフォローを入れようとするところか?、レオナヒルドがなんのかんの言いつつ ナタリアのことを評価しているのが伝わってくるからだろうか

理由はわからない、けれど こうして酒場でレオナヒルドの愚痴を聞いているこの時間は、…多分 誰にも理解できないだろうが、ナタリアは好きだった

「むぅ、…貴様 なんだその目は!、上官には逆らうなって士官学園で習わなかったか?、軍人何年めだ?お前、こんな簡単な事をわざわざ教えてやらなきゃダメか?」

「ダメも何も レオナ先輩だって いつも上官に逆らってるじゃないですか、先輩の教育がいいおかげですよ」

「当たり前だ!、私は私の上に立つ人間全員が嫌いだ!」

「あはは、じゃあ下っ端のレオナ先輩が好きなのはアタシだけってことになりますね」

「そ そうは言ってない!、が…嫌い…ではない、かな?」

レオナヒルドは他人に自らの力を誇示する為に ナタリアをいびり自分を強く見せようとする、だが同時に 自分について来てくれるナタリアを心底可愛がってもいた…自分だって安月給だろうに 毎日こうして飲みに行く時はレオナ先輩が奢ってくれる

そういう子供っぽいところも含めて、アタシはこの人が好きだ…半分まで減ったぶどう酒の水面を見ながら、自然と釣り上る口角を見る


「ふむ…クフフフ、安酒だな」

「またですか先輩、レオナ先輩お酒持ってるといつもそれやりますよね…酒の味だって分からないくせに」

「安酒なのは間違いないだろう、だが今に見ていろ?私たち二人で瞬く間に出世して じゃんじゃんお金稼いで、こんな安酒 シャワーに使ってやる!」

酒を揺らし くつくつと笑う、この人は考えて物を言わない だから他人を傷つけるし、他人に疎まれる…だがそこを理解してやれば、この人は子供っぽいだけの大人だと受け入れることができる

「えぇー、出世ですか?アタシに出来ますかね、アタシ先輩の言う通り魔術の才能ないですし」

「それは攻撃魔術に限った話だと何回言えばわかる、魔術は攻撃のものだけではない、補助も治癒も系統は様々だ、一つの方向がダメなら 別の方向を試せば良い…ヌハハ 何なら魔術に拘らず体でも鍛えてみるか?、くふふふ…もう一杯」

「ははは、体鍛えても宮廷魔術師として出世 出来ませんよ」

「それもそうか、ぬははは!」

くだを巻き 酒に酔う、ナタリアも楽しいが きっとレオナヒルドも楽しんでいるのだろう、

「ともかくだ!ナタリア…稼ぐぞ、出世して一緒に金を稼いで 偉くなって、凄いたくさんの奴らに頭下げさせて…世界で一番私たちが凄いことを周りに分からせてやろう、酒の風呂に入って金のベッドで寝るんだ」

「レオナ先輩 偉くなっても手に入れるものが酒と金だけって、俗っぽいですね」

「俗で結構、結局 この世で一番偉い人間ってのは 一番高い酒を飲む一番の金持ちなんだからな」

「名言風に酷いこと言わないでください」

この人は悪い人だ、凄い悪い人 いつか犯罪でもやらかすんじゃないかと、当時からヒヤヒヤしていた

だけどだ、考えて欲しい この世に善いばかりの善人がいるか?ただの一つも悪事を為さぬ善人がいるか?、そんな奴この世にいるわけがない

なら逆も然り、悪いばかりの人間なんていない 悪ばかりの悪人もいない、この人は悪人だけど 良いところだってあるのだ

「だからナタリア、私達の出世祝いのその時はまた酒盛りだ、だから高い酒を買っておけ?とびきり高い奴だ それを頂点に立ったら一緒に飲もうじゃないか」

「こんなに毎日飲んでたら体壊しちゃいそうですけど…いいですよ、たまにはアタシの方から先輩にお酒を飲ませてあげたいですし、いい奴を今のうちに抑えておきますんで 早い所出世しちゃいましょ?先輩?」

「おーう!、ふはははは!任せろぉー!私にかかれば一発一発!ふははははげぼげぼ!おおぇぇぇーーー!!!」

「笑いながら吐かないでください!!」

「いやだぁーつ!飲むーっ!」

「明日も早いでしょ!明日だって仕事いっぱいあるんですしそろそろ自制をしないと!」

「仕事が控えてるからこそ酒を飲むのだ!」

「わけわかんないですよ!」




まぁ結局、レオナヒルドは出世出来なかったんだがね 、宮廷魔術師団内で不正を働き剰えそれを隠蔽するため嘘をついたのがマズかった、瞬く間に皇都と宮廷魔術師団を追い出され放逐され、あの人はアタシの前から姿を消した

アタシはそれを機に宮廷魔術師団から騎士団へ名を移し 其方で活躍するようになる、周りのみんなはアタシがレオナヒルドによって虐めいびりが原因で騎士団へ移ったと言っていたけど…別にレオナヒルドの所為で宮廷魔術師団を抜けたわけじゃない

理由は特にない…強いて言うなれば寂しかったからデイビッドのところへ行ったくらいかな


アタシはレオナヒルドを恨んでないわけじゃない、嫌な思いもたくさんした…だけどそれであの人と過ごしたあの酒盛りがなくなるわけじゃない、あの日の約束がなくなるわけじゃない…だから ほんのちょっとした出来心で助けてやろうとしたんだ

嘆願書集めて 処刑されそうな所助けて『これに懲りたら次からは真面目に生きるように』なんて言って、真面目になったレオナ先輩とまた一緒にお酒を…私も偉くなったから今度は私が奢って、そんな夢物語のために下げたくない頭下げて寝る間も惜しんであちこちで頼み込んで 頑張ったのに

なのにそれを全部 全部無駄にしやがって…バカな奴、本当にバカな奴…どうしようもないくらい小物で クズで 外道…

………でも でもさ、これでもアタシ 待ってたんすよ 先輩が戻って来てくれるのを、また戻って来て一緒に戦ってくれるのを、待ってたんだ、先輩の言う 高いお酒買って ずっと待ってたのに…先輩の…


先輩の嘘つき



………………………………………………………………


「…………はぁーあ、この嘆願書も無駄になっちゃいましたね」

過去への追想が終わったのか、沈黙を破り 口を開くナタリア
きっと 思い出していたのだろう、何かは分からない 話の流れからしてレオナヒルドとの過去だろうか

ナタリアはレオナヒルドを恨んでる とは確かに周囲の評価でしかない、レオナヒルドへの感情と真意は

「な なぁ、ナタリア…大丈夫か?、悪りぃ 俺はてっきりお前がレオナヒルドを恨んでると思ってた…でも言ってくれりゃ手伝いくらいしたってのに」

「いやいや、これはアタシが勝手に思い詰めて 勝手にやった事ですから…言ったら迷惑がかかるかなと、それに寧ろ勝手な行動を慎めーッ! って怒ってもいいぐらいなのよ?」

「怒るわけねぇだろ、…情けねぇ お前がそんな思い詰めて努力してたってのに、俺はお前の事を疑って…情けねぇ」

デイビッドは詫びるように項垂れる、ナタリアの心中を察してやれなかったと 団長として誰よりもナタリアを信じるべきだったのに


「んー…じゃあデイビッド、今日お酒飲みましょうや…ちょうど高いお酒を買って取ってあるんで」

「高い酒?、…いいのか? 取ってあるって事は何かの為に取ってあるやつじゃないのか?」

「いいんですよぉ飲んじゃっても、もう…必要なくなりましたからね」

「そっか…」


…く 口を挟めん、ナタリアは何か自分の中の何かに区切りをつけたようだし、デイビッドはそんなナタリアを慮りその意思を尊重している

何故ナタリアが消えていたのか その理由も分かったが、同時にナタリアは今回の一件に全然関係ないことも同時に判明した 

一番の謎のあの女 …あの鎧姿の女だ、おそらくアイツがレオナヒルドの背後にいるという黒幕だろう、魔術の実力は少なくとも魔女に迫る程 下手したら私やスピカと同格、オルクスの仲間かと思ったらスピカ襲撃の際は姿を見せなかった

何者なのか、少しでもヒントが得られればと思ったが…まぁいい、道が完全に絶たれたわけではない、スピカ直属の部下達が今 オルクスを捕らえに言っているらしい、そちら方面はオルクスに直接聞けばいいか

「レグルス様もどうです?、今晩あたり一緒に飲みません?」

「いやいいよ、お前ら二人で飲め」

ナタリアの誘いは断る、デイビッドとヴェルト ナタリアとレオナヒルド、コイツらがどんな関係でどれほどの仲だったか 私には窺い知れないが、少なくとも浅からぬ関係である人間を 二人とも今日一日で失った事になる

その穴を埋められるのは 失った物と同じ位の古くからの付き合いである相方をおいて他にあるまい、その間に入って飲む酒?うへぇ 不味そう…

「デイビッド ナタリア、お前ら二人揃って病み上がりだし仕事も山積みにあるだろうから、酒盛りは程々にな」

「仕事が控えてるからこそ、酒を飲むんですよ」

「なんだその理論は…」

なんて話も程々にその場から逃げるように立ち去る、この場で私は確実に邪魔者だ、当初の目的だって達したし 、こんな薬品臭い場所に長居する理由もない、…ほら 向こうでエリスが手を振りながらこちらに向かって来てる

怪我もすっかり治してもらったようで、元気もいっぱいと言ったところか?、回復したなら何よりだ

今日はもう廻癒祭は中止だそうで、街の復興にしばらく力を割くらしい 私も客人とは言え流石に傍観とはいかんだろう、スピカも頑張ってるんだ 私達も街の復興に力を貸すとしよう、当然エリスにも手伝ってもらう 疲れてるだろうがこれも修行と諦めてもらおう

……そういえば、クレアの奴 このテントの中にはいなかったな、ナタリアと一緒に運ばれて来たと聞いたが、まぁ 別にいいか






……………………………………………………………


流れる雲 青い空 飛び交う鳥は、地上の喧騒を忘れさせ ただ一人黄昏る

ふと視線を下に向ければ、あちこちで人々が荒れた街を元の姿に戻す為、兵士 民間人関係なく力を合わせて瓦礫の撤去をしている、あんな大騒動があったばかりだと言うのに、困難を前にした時の人間はかくも強いのかと 実感させられる

悶々と黄昏ている自分とは大違いだ、あの前向きさを少し分けて欲しい物だ

「………はぁ、なんでこんなモヤモヤすんだろ」

クレアは一人、目を閉じる

モヤモヤとムカつく胸の内を紛らわす為、治療もそこそこにテントを抜け出し あちこち歩いて回り、落ち着いたのは見通しの良い高台だ…腰を落ち着け空を見て、一息ついて下を見て…また上を見る

なんでこんなことしてるんだろ、別に悩みなんかない なのに気分が上を向かない…

いや理由は分かっている、思い浮かぶのはバルトフリートの最期だ


何故バルトフリートが裏切ったかは知らない、理由なんか知る間も無く戦い 知る必要もなく私はバルトフリートを斬り殺した、躊躇すれば私が死んでいた 迷えば私が死んでいた

私が死ねばバルトフリートはエリスちゃんを斬っただろう デティ様を斬っただろう、そう思えば躊躇も迷いも簡単に捨てられたが…、いざ戦いが終わって落ち着いてみると なんだか落ち着かないのだ

なんでこんなに落ち着かないんだろう、人を殺したから?騎士になった時いつかそんな日が来ると覚悟していたし 騎士としての役目だから割り切れる

仲間を斬ったから?、でも私とバルトフリートはあまり接点がない ほとんど他人だ、仲間という意識はあまりない、他のみんなはバルトフリートの事を尊敬してるみたいだったけど 飽くまで他人事だ 私は関係ない

ならなんでこんなにもバルトフリートの最期が私をかき乱すのか…

それは奴の最期の言葉の所為だ、奴は誇れと言った この死なずのバルトを斬った事を誇れと…それが私を悩ませる
いくら人を殺す事の覚悟ができていたとはいえ 仲間意識がなかったとはいえ、私は人を一人斬ったのだ 誇れるわけがない、罪人悪人構わず叩き斬りまくって私は英雄だ なんて誇れるほど私は厚顔ではない

だが誇れと言った、その真意を理解するまで 多分私は以前のように前を向いて進むことができない、そんな予感がするのだ

「…誇る、誇るってなんだ、私はバルトフリートを斬り殺しましたって喧伝すりゃいいのか、それとも今からバルトフリートの首でも掻っ捌いて部屋に飾るか?、ハッ…悪趣味極まるなそりゃ」

わからーん、分からんことは考えない主義だがこればかりはそうもいかない、勝った者には勝ったなりの義務がつきまとう、この義務を放棄すれば 多分次は勝てない…悩んだままでは、次戦う時 死ぬのは私になる

「チッ、嫌な置き土産を残してくれたなぁ」

舌を打ち、寝転がる…何をする気にもなれない 嫌な気持ちだ、気持ち悪い
そもそもこの問いに答えはあるのか?この疑問に答えはあるのか?、バルトフリートが死ぬ間際 負け惜しみとして私に残した呪いじゃないのか?、なら気にしないのが正解なのか?、それも含めて…分からん

「ここにいたんだ…」

「あん?」

ふと、横になる私の頭の上から声が聞こえる…聞いたことある声だ、確かこれは

「オベロンニュース」

「メロウリースよ、もはやワザと間違えてるでしょ」

ワザとだ、流石に何度も間違えるほど馬鹿じゃない、メロウリース 私の学生時代の同期らしい、覚えてるかと言われれば イマイチ覚えてない、確かにこんな奴もいた気がする その程度だ、そもそもあの学園の記憶だって曖昧なんだ 人のことなんか覚えてられるか

「…バルトフリートさんに勝ったんですってね」

静かに、そう言って私の隣に座る、何馴れ馴れしく私の隣に座ってんだよ と言いたいが今はそんな元気もないので放っておく

勝った…か 殺した と言ってくれないあたり、コイツも気を使ってるのかもしれない

「ええ、なんとかね 」

「…私は一度も、バルトフリートさんから一本取ったことがない、…模擬戦の時もいつも軽くあしらわれてたし 一生勝てないと思ってたのに、勝っちゃうなんてね」

なるほど、コイツは私と違ってバルトフリートと同じ騎士団に所属してたんだったな、あれと模擬戦やったのか そりゃさぞ有意義な訓練だったろう

バルトフリートの技量は凄まじいものだった、私があの領域に達するのはあと十年は先だろう…そのくらい強かった、百回戦ったら九十九回は負ける そんな戦いだったし、バルトフリートがもう少し若く全盛期の力を有していたら そもそも戦いにすらならなかったろう

「もう一回やったら 死ぬのは私よ」

「…最高の騎士の条件は、百回やって一回しか勝てないような相手と相対した時…大一番にその一回を引っ張って来られる奴が 最高の騎士だって バルトフリートさんも言ってたよ」

「…………」

なんなんだコイツさっきから、私は考え事に集中したいのに ペチャクチャ隣で喋りやがって、お喋りしたいならその辺の犬と喋ってろよ、そんな元気ないから 追い払わないけどさ

「私はね、アンタには絶対負けないって誓ったの、絶対絶対 絶ッッ対負けたくないって…、あの館が襲撃された時 そのチャンスだと思った、アンタに先んじて手柄を上げてアンタに勝つ、そう思ってた」

「ああ、確か スピカ様の館が襲われたんだってね」

後から聞いた話だが私が離れている間にスピカ様が休んでいた館を オルクスの手先が襲ったらしい

数はそこそこ揃えていたらしいが、結局魔女レグルス様によって全て蹴散らされたらしい 
私からすれば当然の結果と言える、レグルス様はかつて大国の軍勢全てを一人で叩きのめし一国を滅ぼした逸話もある 、それに比べればオルクスの集めた雑兵など取るに足らないだろう

「でもダメだった、どれだけ奮起しても数の差には勝てなくて…私は負けた、情けないことに敵に囲まれて 命を取られる寸前だった、レグルス様がいなければ…私は」

「……そう」

「その時ね、思ったの あの場にいたのが私じゃなくてアンタなら、きっともっと上手くやったんだろうなって」

「さぁ、どうだろう」

流石の私だって何百人何千人単位の相手をなんとか出来るとは思い上がらない、思い上がらないが負けるつもりはない 後ろに魔女レグルス様がいるんだったら手足がもげても戦い続けるつもりだ

「…アンタは魔術導皇様を守って、私は無様に負けて 魔女様を前線に出してしまった、負けたのよ 敵にじゃない、アンタに私は負けた…結局私は どうやってもアンタに勝てないの?」

ふと目を向ければボロボロと涙を流し、唇を噛んで泣いている メロウリースが泣いている

「それ、私に言ってどうしたいの?、気の利いた答えなんか返せないわよ」

「アンタほんとに気を使えない嫌なやつね」

「別に、優しい言葉をかけて欲しいわけじゃないんでしょ」

「まぁ、そうだけど そうだけどさ!」

コイツは私に期待し過ぎだ 自分の持ってない答えは全部私が持ってると思っている、私は今自分のことでいっぱいいっぱいなのに、他人の答えなんざ知るわけないだろう…

「別に、アンタから真っ当な返答が来るとは思ってない!」

「はぁ なら、なんで私に言ったのさ…」

「アンタに言えば、私の中で 整理がつくと思ってたから…私は絶対にアンタに負けたくないの、でも心のどっかではもう勝てないんじゃないかっていう自分もいて 迷っでるから、アンタに言えば …答えが見つかる、そんな気がしたの」

「整理が?」

なんだか、コイツも もしかしたら 私と同じ状況にあるのかもしれない 、迷ってる 迷ってるから私に言いに来たんだ、口に出して整理をつけようと来たんだ

そうだ その手があった、頭の中で悶々と悩んで答えが出なければ口に出しゃいい、他人に言えばいい 他人が答えを持ってなくても、口に出せばある程度の整理もつく、一人で悩む必要はないんだ…そうかそうか

「ねぇ、メロウリース」

「何?、って アンタ今私の名前…」

「もしさ、私に勝てたとするじゃん?そうしたらさ…、アンタ私に勝った!って誇る?」

「誇る?、そんなもん当たり前じゃない!その為に戦ってるんだから!」

バカにするなという風に目を吊り上げるメロウリース、ううん 聞き方を間違えたか?そうじゃないんだよなぁ

「ほら、こう みんなに言って回ったりとか自慢したりとかするの?」

「自慢?…ううーん、しないかも別に他人に褒められたくて 勝ちたいわけじゃないし、でも誇りには思うわ」

「違いが分からん」

違いが分からん、その言葉につきる 自慢と誇るとは同じ言葉じゃないか、でも メロウリースは自慢はしないけど誇るという、どういう意味なのか

「だから!、んんと なんて言うのかな…私はクレアというすごい騎士に勝ったんだって、そういう事実を胸の内に留めるの 誰かに言ったり形に残すんじゃなくて、胸の中にその事実があるだけで 私は何にも負ける気がしないから」

「…ふーん」

胸の中にその事実を、…私の場合はバルトフリートという騎士に勝ったという事実を留めるか…、なんだかこれは分かる気がする というより

「ああ、…そういうことね」

なんか、しっくり来た そっか、誇るからって 口に出して何か言って何かをするとか そんなんじゃないんだ、私はバルトフリートに勝った 勝てた、その事実は確かに私を強くする それでいいんだ、あの戦いを糧にして あの勝利を信じる それだけでいいんだ

うん、そう思うと幾分胸が軽くなった 気がした…、確実な答え ってわけじゃないけど、メロウリースがくれた言葉は確かに今私に響く言葉であった

「でさ、急にそんなこと聞いて何?」

「別にぃ、ただなんとなく気になったから聞いただけぇ」

「何それ、やっぱり馬鹿にして…!」

「ふふふ、馬鹿になんかしてないって …そうね、私の質問に答えてくれたからお礼に私も答えを返してあげるわ、アンタ私に負けたって言ったわよね?…まだ勝負は終わってないから、諦めるのは早すぎる 勝負の結果が出るのはきっと ずーっと後だから」

体を起こし、メロウリースの方を見てニッと笑う 別に気にしたことないやつだったけど、コイツ…メロウリースは私に出せなかった答えを持っていた女だ、些か 評価を改めないといけないかもしれない

「ずっと後…あ 当たり前よ!まだ諦めるなんて言ってないじゃない!、今回はアンタに譲っただけ!次は私の方がアンタより上に行くんだから!」

なんで私が声をかけてやればワタワタと激しく動いてまた騒ぎ出す、よくわからないけど 元気が出たなら結構だ、私もコイツに励まされた そのお返しができたならそれでいい

「あぁー!アンタアンタってうるさいなぁ、クレアって呼べばいいじゃん …私もメロウリースって呼ぶからさ」

「め…メロウリースって、呼んでくれるの?」

「当たり前じゃないのさ、私達 ライバルでしょ?」

同じ歳で同期で 同じ騎士、意識し始めたのは最近だけど コイツは間違いなく私に勝とうとしている その覚悟や意思は認めなければならない、その意思を認め 挑戦を受け入れた相手のことをなんと呼ぶか?私はライバルと称する以外の名を知らない

「ら…ライバル、私が…」

「そう、よろしくねメロウリース…いやメロウリースって呼ぶのメンドーだからリースって呼んでもいい?」

「間違えないならなんでもいいわ!、んふふ…そっか 私ライバルか」

なんでこんなに嬉しそうなんだコイツ、でもまぁ いっか…頼りになる同期が見つかったわけだし、今日は気分がいいから 言うのはよしておこう

「ねぇねぇクレア?、下の人たちみんな頑張ってるけど 私達も手伝いに行った方がいいんじゃないの?」

「いーのよリース、私達はさっき頑張ったんだから 活躍してない兵士たちにも少しは働かせなきゃね」

「どっちが瓦礫を多く片付けられるか勝負しましょうよ」

「えぇ、絶対やだ…」

「何?私に負けるのが怖いの?」

「一番怖いのはそれで私が乗ってくると思ってるリースの単純さよ」

流れる雲 青い空 飛び交う鳥は、地上の喧騒を忘れさせ ただ二人黄昏る、静かな世界 二人で過ごし、クレアは鼻提灯を膨らませ メロウリースはライバルという言葉に胸を高鳴らせる

こうして、アジメク皇都の一大事件を巻き起こしたオルクスの野望は その夕日と共に沈んでいくのであった 
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