孤独の魔女と独りの少女

徒然ナルモ

文字の大きさ
上 下
21 / 308
二章 友愛の魔女スピカ

19.孤独の魔女と過去の因縁

しおりを挟む


「それでこのメイナード・ベランドナリリーが長年の経験で手に入れたレディ未来予測演算法によれば、将来エリスちゃんはかなりの美人になると思うのですよ、それも男性にモテるというよりは 同性から憧れられるような、そんな凛々しい美人に…今もその片鱗はありますがね」 
 
「そうか、確かにエリスは目鼻立ちが凛々しいからな 、師匠として将来が楽しみといえば楽しみだ」
 
商業区画の街中を歩く3人の男女…なんてありふれた言い方をするには憚られるような 異質な集団、黒髪の麗人を囲むように立つ弓の騎士と身なりのいい魔術師の3人は、ただ道を行くだけで周囲の人々の目を惹くのは致し方ないものだろう

とはいえ当人たちは気にしてないようだが?
 
「でしょう?、それこそレグルス様のような凛々しいレディになるでしょうね、ああ その時までに僕も自分に磨きをかけておかないと」

「すみませんレグルス様…コイツさっきからお弟子様のことしか話してませんね」

エリスと別れてより数刻、レグルスはメイナードとヴィオラの二人を連れ 昨日立ち寄ったパン屋を目指し歩いていた
 

というか、この道中レグルスはずっと感心していた、何にって メイナードの女性を丸め込む手練手管にだ

そもそもコイツは顔がいいしその上身なりもいい、それだけで付いていく女も相当数居るだろうが、メイナードは更に相手の興味のある話題を即座に分析するのが非常に上手く、そこから話を広げるのもまた上手い、自分本位で話さず飽くまで相手の為に話すその姿勢は否が応でも引き込まれる

私の場合ならエリスの話題を中心に話しをし興味を惹きトークに引きずり込む、この私が相槌だけでなく 返答してしまうくらいには、メイナードの話術は卓越していると言っていい

「いやいいよヴィオラ、メイナードの話は私も聞いていて面白いし、何より弟子のことを話されて 悪く思う師などいない」

「もう…レグルス様まですっかり乗せられて」

の 乗せられてるのか?私、だが話していて分かったがメイナードはそこまで軟派な男には思えんのだ

これでも魔女だ、他人の心の機微には聡いつもりだが、メイナードからは相手を丸め込んでどうこうしてやろうという下卑た下心は感じない、寧ろリスペクトに近い感情を常に振りまいている、それも私だけではなくレディ全員に対して

これが演技だというのなら、彼は相当な名優になれるだろう……いや確かに乗せられてるな、いつのまにか彼を良く評価してしまっていた、危ない危ない 

「本当ですか、いやぁ嬉しいなぁ なら今度喫茶店でも一緒に行きませんか、魔女レグルス様に合うとても清廉な茶葉を扱う店を知っていまして」

「いやいい、そこは遠慮するよ」

確かにメイナードと話しているのは楽しいが、態々茶を飲んでまでではないし、何よりそんなことしたらエリスがどんな反応するか分からん、あと怖いのはクレアか …コイツの方が何するかわからんな

「そうですか、いやいや残念残念それはそれとしてヴィオラ君僕の太ももを抓るのはやめてくれるかな?」

「仕事中にナンパする阿呆にはちょうどいい罰だと思うんだけれど?」

それに、こうやってみてるとメイナードとヴィオラは随分相性がいいようにも見える、というか 、これヴィオラ完全に嫉妬してるだろ…さっきも言ったが魔女は人間の機微に聡い、本気で憎くてやっているわけではないことくらい 容易く分かる

「ふふふ、若いな」

「もうレグルス様ったら…あ!、レグルス様!あそこではありませんか?、あの独特な香草を使ったというパン屋は」

そう言ってヴィオラが指差す先には、確かに昨日見かけたパン屋がある 客が入ってないところを見るとまだ開店前か?どちらにせよ話さえ聞ければそれで良いのだから、どちらでも良い

二人には既にこの散歩の概要は伝えてある…、エリスの出生場所を探す為に聞き込みをする、その第一段階としてパン屋に接触すると言った具合になる、だからここは別にゴールじゃない 寧ろスタート地点だ

故に、接触は早い方がいい と意気込むと、メイナードの方から呼び止められる

「ちょっと待ってください ヴィオラ君 レグルス様、あのパン屋と接触する前に確認をしておきましょう、まず レグルス様の素性は隠します、これは当然として僕とヴィオラ君の素性も隠した方がいいだろうね」

「なんで私まで隠す必要があるんですか、寧ろ何かを探すなら騎士としての地位をちらつかせた方が効率的じゃ…」

「理由はいくつか、まず 騎士の地位をチラつかせたからと必ずしも情報が引き出せるわけじゃない、相手にやましいことがあれば逆に騎士に告白はしづらいと思うんだ、そして二つ 態々近衛士二人で警護するこの黒髪の女の人は一体何者?といういらぬ勘ぐりを生む、どちらもスムーズかつスマートな聞き込みには不要なものだろう?」

確かにメイナードの言うことには筋が通っている、私の正体を隠すのはスピカからも頼み込まれた絶対条件だ、この街中でコソコソと名前を呼び合う分には別に構わんだろうが会話の最中『魔女レグルス様』なんて呼ばれりゃアウトだ 、一発でバレるとはまではいかんが疑われ動きづらくなるなろう

疑いは持たれない方が遥かにいい

「ならその騎士然とした鎧はどうするのよ、ここで脱ぐの?」

「あははは、この下は裸だから脱げないんだ申し訳ない……勿論ながら冗談だよ、でも態々脱がなくても商業区画なら冒険者だの用心棒だので通るだろう、友愛の騎士としての紋章でも見せなければ問題はないよ」

特に最近はね と妙な付け足しをしながらも的確に概要を伝えるメイナードを見て、なるほどコイツはコイツで確かに隊長を張れるタマだ と納得する、近衛士と言うことは将来的に騎士団長になるかもしれないが これなら問題あるまい

しかし気になるのは 『相手にやましいことがあった場合』と言う例が分からん、分からんが メイナードはメイナードで何かを警戒しているのだろう、そこには口を挟むまい

「分かった、では軽く誤魔化しながら 聞きたいことだけ聞くとしよう」

このままメイナードとヴィオラに会話の主導権を握らせ続けたら永遠に話してそうだし、軽く議題に結論をつけてからパン屋に接触する

掲げられた看板にはopenの文字が、人が並んでいないように見えるが 営業はしているようだ、軽く扉を叩いた後開ければ、小気味良いベルの音が我々の入店を祝う

「いらっしゃい、ってあら 昨日の…と隣にいる方達は誰かしら?」

そう言って出迎えるのは昨日のおばちゃん、店の中で忙しなくパンを焼いている、どうやら客が来ないからと言って暇というわけではないのか、思えば貴族区画に対して配達も行ってるんだったな

どうやら私の事は覚えていたようでどうもどうもと挨拶してくれるが、当然警戒するのは隣のメイナードとヴィオラ、だって武装してるもん これで怪しまない奴がいるなら逆にそいつの方が怪しいだろ

ふふんと鼻で笑いながら前に一歩出るのはメイナード…任せたぞ、、上手いこと誤魔化せ

「どうもはじめまして、貴方の愛の伝道師であいたっ!?」

「我々はこの方の知り合いの冒険者でして、このパン屋のパンのことを紹介していただいて是非とも食べてみたかったのです」

ヴィオラの神速の蹴りがメイナードの脛を弾き黙らせる、まさかとは思うがメイナード…このおばちゃんの事も口説こうとしたのか、本当に見境ないな…というか今思えば変に誤魔化さずこいつら置いてきた方が良かったな

「ああそう言い事だったのかい、態々知り合いまで連れてきてくれて …いいよいいよ 今日はちゃんと取り置きしてあるからね」

「それは良かった、ありがとう是非頂くよ」

どうやら私の為にいくつかパンを取っておいてくれたようで、そのパンは未だ焼きたての如く湯気を立てている、しかし このパン昨日城で食ったんだよな…非常に真新しさに欠ける、それに今日の目的はパンじゃなくて聞き込みだ

しかし私はこれでも小心者でね、聞きたい話だけ聞いてあとはさよなら なんて冷やかしみたいな真似は出来ない、店に来たからにはパンは買っていく、それに聞き込みをするなら商品を買っていった方が心象は良かろう

「うん、いい匂いだ この匂いはこの店でしか出せないんだったな」

「ええそうだよ、香草は組み合わせや分量で匂いも味も変わってくる、この分量や匙加減を知ってるのは私だけ つまりこれを作れるのもこの世で私だけさ」

「似たようなものないのか?」

「ないとは言い切れないけれどさ、似たようなのが乱造されてるなら 態々この店だけなんて看板掲げないさ」

そりゃそうだ、似たようなのが既にたくさん出てる物のマイナーチェンジなら『当店自慢のオリジナル』なんて名前つけて売りだしたりしない

つまりはエリスの言ったご主人様がよく食べていたパン屋というのはこれで間違いないだろう、エリスに限って記憶違いといことはないだろう、少なくとも今まではなかった

ならば聞こう、かつてエリスが住んでいた館 いやエリスのご主人様が住んでいたという館の場所を

とも思ったが 私はエリスのご主人様が昔パンをよく食べていたという情報しかない事にようやく気がつく、なんと聞いたものか…

「すみません、一つお伺いしたいのですが」

と悩んでいるとヴィオラが先立って聞いてくれる、私が聞きあぐねている事を察してくれたのか

「この店はパンを貴族区画に配達されていると聞きます、実は我々の友人が貴族区画にいるのですが一年前から連絡が取れません、どこに住んでいるかも分からない始末で 今場所の聞き込みをしているのですが何も掴めず、失礼ですが 一年ほど前から急に姿を見なくなった貴族 というのを知りませんか?」

適度に嘘を盛り込みながら 事情を話し、我々が何を探しているか伝える、もしかしたら騎士として何か聞き込みみたいなものをしたことがあるのかもしれないが、まぁ少なくとも私よりは手際がいい

何より私が与えた少ない情報でこれだけ真っ当そうな嘘つけるなら、彼女も大したものだろう

「んー?一年前から、貴族様は皆気まぐれですからね パタリと音信不通になることくらい沢山、…ああでも姿を見なくなったといえば、クスピディータ家のハルジオンさんが有名ですかね、ハルジオン・タクスクスピディータ様です」

「クスピディータ家?それはまた…詳しく伺っても?」

タクスクスピディータいきなり聞いたことがない単語が出てきた、いやともすればエリスに聞けばそう言えばと反応を返すかも知れんが 、というか言いづらい家名だな…口に出したら噛みそうだぞ、まぁだからみんなクスピディータと略しているのだろうが

「ええ、あそこの家はまぁ色々ありましたから印象にも残ってますよ、私が聞いた話じゃいきなり馬車で出かけたっきりだとかで、従者も何も連れずに…あの雨の日の数週間くらい前の話ですよ」

あそれだ、絶対それだ あの雨…、アジメクの大雨の日 エリスは惑いの森に落ちてきた、従者も殆ど乗らぬ馬車と共に、皇都からアニクス山の距離を考えると時期も合致する、多分そのハルジオンというのがエリスのご主人様だ

「なるほど、…いえありがとうございました、そうですか 帰ってませんでしたか、お手数かけました」

「いやいやこちらこそ、なにかの役に立てたならよかったよ」

いやおい、何勝手に話終わらせてんだよ 、館の場所聞けよと言おうかと思ったがそうか、彼らは騎士だ、それも要人警護をする近衛隊、なら貴族の家名や名前を聞けば館の場所くらい把握出来るか


パン屋のおばちゃんに軽く挨拶をし、メイナードは去り際に投げキッスをし、ヴィオラはそれに膝蹴りをし、パンを片手に外へ赴く…いや違うな、向かうのは路地裏 あまり人気のない、話を聞かれないような路地裏だ

周りに人がいないのをメイナードが確認すると、二人は口を開く

「レグルス様、恐らくですが エリスちゃんの住んでいた館の場所が分かりました」

「というか、思えば一年前いきなり消えた貴族といえば ハルジオン殿くらいしか思い当たらないね」

どうやらメイナードもヴィオラもそのイクシオンという男を知っているようだ、あのややこしい家名 えっと、タスクなんたら家は有名みたいだし

「ハルジオン・タスククスピディータ、あのクスピディータ家の三男坊ですね  、でっぷり太ったお腹がチャーミングな方でしたが、一年前行く先も告げず従者を置いて馬車でどっかに行ったきり、我々騎士団も捜索しましたが見つからず終いの方でしたよ」

いやあのとか言われても知らんが

しかし でっぷり太ったか、私が見たときはギリギリ人間の形を保っている程度だったが確かに贅肉は多かった気がした、流石に顔とか年齢までは判別出来ないが…

「恐らく、その男で間違い無いだろう」

「ええ、僕もそう思ってますよ 何せ彼奴隷を買うのが趣味でしたから…まぁある時期を境にパタリと辞めてしまいましたが、なんか奴隷事業にも一枚噛んでるような噂も聞きましたよ、レグルス様の話を総合するに まぁ一番当てはまるのはイクシオン殿を置いて他にないでしょう」

顎に指を置き考えるメイナード、その美しさは間違いなき町娘を落とす必殺の憂い顔と言ってもいい、しかし奴隷を買うのが趣味とはイカした趣味だ、それで暴力を振るわれる方は堪ったものではないがな

「しかしよかったですね、相手があのクスピディータ家の三男ともなれば、主人がいなくなっても館はまだ残ってるでしょう、もしかしたらエリスちゃんに関係する品もまだ残っているかもしれません」

「一年経ってもまだ館が残ってると、そのクスピディータ家はそんなに偉いのか?」

館が残ってる この可能性は実はあんまり期待してなかった、まぁ行方不明扱いとはいえ一年も消えてりゃ死人も同じだ、館が取り潰されても文句は言えないが、それでも残ってるということは そのクスピディータにそれだけ権威があるということ、彼らの顔を見るに相当な…

「偉いですね、アジメク貴族に序列があるなら間違いなく一位です、しかもぶっちぎりの一位です、クスピディータ家現当主 オルクス・タクスクスピディータ様は 確実に僕たち友愛騎士団の領分を超えた大物、それこそ魔女様と魔術導皇様でない限り相対できないでしょう…、いや まだ幼いデティ様ではそれも難しいから実際は」

今現在この国で相手出来るのが魔女を置いて他にいない程の大貴族か、魔女大国アジメクにおける大貴族はそんじょそこらの貴族とはレベルが違う、そりゃ相当な権威の持ち主だな、下手すりゃ小国の王よりも力を持ってる可能性がある

そんな所の三男坊、そこの奴隷だったのか…兎も角そんな有名人の館ならすぐに見つかるだろう、館に出向けばエリスに関わるなにか見つかるかもしれん

「なんでもいい、そのハルジオンとやらが住んでいた館に行こう、場所が分かったのなら直ぐにでも」

「ダメです…いや魔女様にこんなことをいうのは無礼であることは理解していますが、でもすみません、ここまで付き合っておきながら言うのもなんですが、今現在ハルジオン邸は現在の当主にしてハルジオン殿の父上でもあるオルクス卿の所有物となっているのです、立ち入りは許可できません」

む…いやヴィオラの言うことは正しい、なるほど確かに無人とは言え館は誰かが管理せねばならない、そしてそれを管理するのが大元の当主かつ父親のオルクスだというのは頷ける話

それに、私はいくら魔女とは言えただの客、ここまでの扱いを受けているのはスピカの友だから、ただの客とアジメクの大貴族なら立場は向こうの方が上、そんな人間が管理してる土地に無断で入れば問題になるのは目に見えている

だからといってスピカに口聞きして無理に立ち入れば、今度はスピカに多大な迷惑がかかるし、何よりそれを騎士団である彼らが容認できるわけがない…か

ここでメイナードとヴィオラを気絶させて、文句言う奴らも叩きのめして 力に任せて館を調べる手もある、勿論分かり切った話だがそんなことはしない、つまり魔女だからって何でもかんでも好きにできるわけじゃないのさ

「オルクス様は…近衛士である私がこう言うのはあまり良くないですけど、あまりいい人間ではありません、噂では魔女様を降し 自分こそがアジメクの支配者に、なんて噂も届くほどの野心家です 、もしここでレグルス様が下手に動けばスピカ様に多大な迷惑がかかります」

「スピカを…?、そうか スピカに迷惑がかかるのは嫌だ…」

「はい、スピカ様ではなくオルクス様に従う貴族も多く派閥が生まれているほどです、今はスピカ様が一切の隙を見せないことで成り立っていますが、何かあればオルクス一派が何か仕掛けてくるかもしれませんし、そうなった場合最悪アジメクが内戦状態になる可能性もあります」

魔力だけで言えばスピカはこの国どころか世界随一だ、だが権力争いともなるとそうもいかない、自分をトップの座から引きずり降ろそうとしそれが可能な者がいる以上、スピカでさえ隙は見せられないだろう、そして私が下手に動けば動くほど オルクス相手にスピカは隙を見せることになる

「なので大変言いにくいのですが、館へご案内することは出来ません」

「そうか…」

仕方ない、諦めよう エリスのことは気になるし、師としての義務だとは思うが、それでスピカが八千年守り続けたこの国を崩すようなことになっては意味がないしな

「…まぁ、今は無理ってだけで 許可を取ればオーケーですから 今は少し待ってくださいね、魔女様?」

「ちょっ!?メイナード!何貴方勝手なことを言って…!、許可って あの騎士嫌いのオルクス卿が自分の周りに人を立ち入らせるなんて事、許可するわけない!」

私が落ち込んでいるのを察してくれたのか、メイナードがウインクをしながら私の頬に触れようとする、のを すんでのところで避ける、悪い奴じゃないのは分かってる、だが体を許したわけではないのだ

しかし、そのオルクス卿とやら 相当気難しい人物と見えるな、ハルジオン邸が今どんな風に扱われてるかは知らんが 別にちょっとあがるくらいいいじゃないかと思えるのは、私が礼儀知らずだからか?

「だって目の前で困ってる淑女がいるんだから、ここで踏ん張らずして何が騎士さ!」

「その結果 オルクス卿に目をつけられたら、いくら近衛士隊のリーダーでもヤバイでしょうに…」

「大丈夫、上手くやるさ…レグルス様 そういうわけなんで、ハルジオン邸に行くのはしばらくお待ちくださいね?」

そう言いながら再びウインクを飛ばしてくれるメイナード…、別に許可取らなくとも深夜に忍び込んでもいいんだがな、もしバレたら なんて考える必要もない、私の隠密を見破れる人間がこの国にいるとは思えんし

いや やめておこう、勝手な事をした結果 スピカに迷惑がかかっては元も子もないのだから

「分かった、待つ…」

「ありがとうございます、では この後はどうされますか?」

「いや、もう予定はない 悪いな…時間を取らせて 帰ろうか」

「分かりました、ではお送りしますよ 直ぐそこに馬車も控えさせてありますし、何よりこれからの時間 商業区画はごった返しますからね、そうなれば我々でも移動に時間がかかってしまいます」

メイナードの言葉を軽く受けながら路地裏から足を伸ばす、ああそうだ エリスが白亜の城にいるから迎えに行った方がいいのか?、だがあんまり早く迎えに行っても二人の遊びに水を差すことに…む?

「ん?、妙に騒がしいな」

なんて考えていると大通りから伝わる喧噪が耳を突く、と言うか一目で分かる 人混みが出来ておりその中心から怒号が聞こえるのだ、それを取り囲む人間は差し詰め野次馬といったところか

「なんだよテメェ!もっぺん言ってみろや!」

「何度でも言ってやる、お前みたいなのが街をウロついてたら品が下がるってんだよ!ゴロツキ!」

喧嘩か…、中心ではそこそこにガタイの良い男二人が酒瓶片手に突っ張り合い、野次馬の外からでも分かるような罵声の浴びせ合い、浅ましいな 皇都とは言え、住まう人間のレベルはどこも変わらんと言うことか

「いやだねぇ、最近は喧嘩が多くていけないよ、みんな優雅に過ごせればそれが一番だろうに」

「確かに、最近は皇都でも暴力沙汰が多い気がします…」

二人曰く、普段はこんなんじゃないらしいが 実際今目の前でワイワイガヤガヤと騒がしく男達が掴み合いしているし、衆生はそれを見て楽しんでいる…場末の酒場の如き品のなさだ

「というか止めなくていいのか?、騎士だろうお前達」

「良いのです、別に ここで止めたって影で殴り合うんですから、他人に迷惑かけないなら多少の殴り合い取っ組み合いは許容範囲内ですよ、気持ち的にはやめてほしいところはありますがね?」

そう言いながらやれやれと肩を竦め歩き去るメイナード達、まぁ…そうか… 下手に仲裁したらこちらにヘイトが向きそうだしな

というか、私が注目していなかっただけで この喧嘩どうやら特別なものでもないらしい、なんというか この街、よく注目して見てみると風態の良くない者がチラホラ見える

昼間から飲む者 油断なく周囲を見回す者、気の弱そうな者を路地裏に連れ込む者…皆一様に体はがっしりとしており、普段から体を動かしていることが伺え、何よりめを引くのは腰に差した剣や魔術杖…恐らくそう言ったことを生業とする者達なのだろう

それがまぁ多いのなんの、恐らく一般的な商人と同数かそれ以上ウロついている、平和なアジメク皇都では考えられない人数だ

「何か…物騒な者が多いな…」

「ああ、あれですか?あれは冒険者や傭兵 用心棒と言った面子ですね、アジメクの商業区画にはああいうのを受け入れる傭兵組合ってのがあるんですよ、所謂ギルドですね」

冒険者達か、…私も見るのは初めてだが聞いたことはある、所謂魔獣や野盗などの退治を主に行う何でも屋だ、魔獣を倒しながら各地を転々とする様から『冒険者』と呼ばれるらしい

兵になり損ねた士官候補生や元軍人やらなんやらがそのまま転職する場合が多いため、中々に侮れない実力を持つ者も多いと聞く


しかし、だとするとおかしいぞ


「おい、メイナード 今この街は魔獣の被害にでも悩まされているのか?」

冒険者は言ってしまえば魔獣を狩る事を生業にしていると言ってもいい、故に平和な街に仕事が無いため早々に立ち去ることが多いのだが、この人数を見ろ 軽く見渡しただけで4~50人はいるぞ、これは大規模な魔獣の群れに遭遇した街でも見ない数だ

「気付かれましたか…いえ、魔獣などアジメクでは殆ど出ません、実はここ数週間前から 冒険者 もしくは傭兵崩れのゴロツキが、アジメクの商業区画に集まってきているんですよ、しかも急激に」

「え!?そうだったの!?、私気がつきませんでした」

吃驚と口を開けるヴィオラに対し、どうやらメイナードはこの事態を異様と捉えているようだ

メイナードも言ったがアジメクでは魔獣は殆ど出ないと言ってもいい、何せここは世界最強の生命体である魔女のうちの一人 スピカの縄張りだ、魔獣も立ち寄っていい場所とそうで無い場所の違いはわかる、故にこの街が危険な魔獣に悩まされることはないし この街に冒険者が立ち寄ることも殆ど無いはずなのに

「まぁ、それでもアジメク郊外にはそこそこ魔獣が出ますので ある程度仕事はありますが…この人数の冒険者達が居つける程の仕事量じゃ無いはずなんですよ」

「つまり、誰かがこの冒険者達を引き止めているというのか…しかし、この空気感 これじゃあまるで…」


戦争の前のようだ、いやこれは私の過去の体験談なのだが 

国が戦争を起こす前というのはまず市場から荒れる、というのは 国だって自国の兵隊だけで戦おうとはしない、手っ取り早い戦力としてこの手のならず者を起用することは多い、金さえ払えば人数が集まるんだ 使わない手はないしな

しかし、そうなると頭の悪いならず者達は国から金を貰って調子に乗り 街で幅を利かせ始める、昼間から酒を飲み あちこちで喧嘩して、市場が荒れる…そう ちょうど今この感じのように

「…アジメクは、戦争でもするのか?」

「まさか、と言いたいですけど これだけの冒険者達がいれば それも可能でしょうね、少なくとも僕達は上から何も聞いてませんが」

昨日聞いた限りじゃスピカはどこかと戦争をする気が無いような気配を感じた、スピカが嘘をついて着々と戦争の準備をしている ということもないだろう、何せ する理由がないからだ

じゃあ、この冒険者は一体なんなのかと言われれば さっぱり分からないのだが、まぁ街を破壊して回ってるわけじゃないしいいか、それよりとっとと帰ろう


……………………………………………………


「どうだエリス、友達との初めての遊びは」

あれから一時間ちょいかけて商業区を抜け、騎士区画に停めてあった馬車で移動し十数分…その間ずーっとメイナードに口説かれ続け…ようやく白亜の城に到着する頃には 城の門の前でエリスとデティが待っていた

「はい、とっても楽しかったです」

「ははは…ごめんねエリスちゃん」

これがどういうわけか、エリスは非常に楽しそうだったのに対してデティはなんだか申し訳なさそうな表情を浮かべていた、何があったか…いやこれは弟子同士の話 私が入る話ではないか

「というかクレアはどこへ行った?、デイビッドも…お前達二人の護衛についていたのではないのか?」
 
「ああはい、クレアさんは部屋の片付けをしています、エリスとデティの二人で片付けきれなかった分を片付ける メイドとしての使命が燃えています と仰られまして」

「片付け?、ダメじゃないか自分達で散らかした分は自分達で片付けなければ」

なんだなんだ、エリスが片付けを出来ない子だとは意外だな、それとも友達と一緒でついはしゃぎ過ぎてしまったか?、どちらにせよ 自分の始末は自分でする、それは子供のうちからの常識だ 

「何大丈夫 私も手伝おう、エリス一緒にデティの部屋を片付けに戻ろうか」

「っっ!大丈夫です!レグルス様!私が後で片付けておきますので!態々お手を煩わせるまでもありません!」

「んなっ!?どうしたんだデティちゃん!?急に…」

「大丈夫です!大丈夫です!」

エリスの手を引こうとした瞬間、私の太ももに抱きつきもう必死に首を振るうデティに度肝を抜く、いや 必死すぎるだろうこれは、冷や汗をかき顔を青くし…これは

(マズい!魔女レグルス様はスピカ先生の朋友、魔女レグルス様に部屋で魔術を使ったことがバレればそのままスピカ先生にバレる…、スピカ先生にバレたら私は…こ 殺され…はしないけど、怒られる!メチャクチャ!)

……さては、何か隠しているな?あまり魔女をなめないほう方がいいぞデティよ、エリスのように無機質な子ならまだしも 君は表情に出過ぎる、さては何かやらかしたな?それで私を部屋に近づけないためにエリスとここで待っていた…と言ったところか

エリスもエリスで、デティの隠蔽に手を貸すとは だが、まぁ良い 嘘とはいずれ詳らかになる物、それが嘘をついた者に不都合であればあるほどバレやすいもんだ、多分だが既にスピカにはバレてるだろうしな

私がここで説教せずとも、エリスと私が帰ったくらいにスピカから呼び出しがあるはずだ、なら ここは騙されたふりをしておいてやろう

「そうか?、ならお言葉に甘えよう、私とエリスもこの後修行があるからね そろそろお暇させてもらおうかと思って居たんだ」

「はい、デティ 今日はとても楽しかったです、また遊びましょう」

「あうあう…」

両手を取り囁くように述べるエリスと、それを受け口をパクパクと開閉するデティ…なんだこれ

なんか想像してた距離の縮まり方と違くないか?、仲良くなったというよりエリスがデティを手玉に取っているように見える、いや仲良くなってはいるんだがこれは…

そう言えばメイナードも言っていたな『エリスは同性からも憧れられる存在になる、そしてその片鱗は今も見え隠れしている』と、なるほど エリスはまだ幼いが目元は凛々しい上に距離感がおかしい、無自覚に詰め寄り キリリとした表情で好意を源泉掛け流しでぶつけてくる、人の耐性の無いデティではイチコロだろう

タラシと言おうか スケコマシと呼ぼうか、どちらにせよ 物の数時間でここまで心に入り込むとは末恐ろしい事よ

まぁ、エリスはエリスで友達として大切に思ってるようだし、問題なさそうだが …これは将来が楽しみというより 怖いな、エリスがメイナードのようになったら手がつけられんぞ



「んん、エリスちゃんとデティ様…将来は二人とも美人になる事でしょう、美人コンビにお仕えする僕はなんと幸せなことか」

「メイナード…貴方何ナチュラルにエリスちゃんにも仕えようとしてるの」

後ろの方で様子を伺っていたヴィオラもメイナードもコソコソと耳打ちをしているのが聞こえる、魔女の聴覚を侮らない方が良い

こいつらもまだ若い、将来は大きくなったデティに仕える可能性があるのか、その時までエリスとデティの関係が続いていれば、きっとエリスのことも守ってくれる頼り甲斐のある騎士となることだろう


若い…とはなんといいことか、未来がこれほど楽しみなのは初めてだ、過去の遺物たる私は せめて、明るい未来の為少しだけでも尽力せねば

そう 物思いに耽りながらエリスの手を取った瞬間、異様な気配を感じて視線を走らせる




異様、そうさな 異様と称する以外に説明するならば、それは胸を破り 体から漂う人間の悪意、魔女は 私は その手の物敏感故に理解出来る

それは自らの利の為なら他者を陥れる事を 然もありなんと受け止め、当たり前のように流せる 人として、社会に生きる其れとして到底受け入れる事のできぬ、外道の気配を感じ眉を顰める

一体何者と 振り返ると、そこに其奴らは立っていた


「騒がしいですな、栄えある白亜の城の門前がこれではゴロツキの溜まり場も同じです」

枯れ枝のようにヒョロリと痩せた体と口元を覆い隠す白髭そしてどんよりと暗い瞳孔、身につけているコートが豪奢でなければ死神と見間違えていたであろう老紳士が、杖をつき 我々を忌む者を見るかのように見下ろしていた

誰だこいつ、背後に甲冑を着込んだ二人の兵隊を連れ 随分剣呑なやつだな

「こ これは!、オルクス卿!」

ヴィオラがギョッとしながら敬礼し、道を開ける あの不真面目なメイナードも顔を引き締め同じく恭しく敬礼をしている、オルクス…なるほど こいつが例のオルクス・タクスクスピディータ…今現在エリスの元ご主人様であるハルジオン邸の管理権を持つと男にしてその父親、人の身で魔女とバチバチに権力争いをする 怪物

「…おや?、其処な子見覚えがあるかと思えば魔術導皇様ではありませんか、このようなところで如何なされましたか?」

「う ううん、なんでも ないです」

あのいつも朗らかなデティが、オルクスの視線を受け肩を震わせエリスにしがみつく、オルクスの視線に敬いとか慈愛といった念は見受けられない、なんとも厳しい目だ 子供に向けていい目つきじゃないぞあれは

「民と触れ合うも上に立つ者の責務の一つ、しかし あまり品位を落とすような事をされては困りますよ、貴方には魔術を司る象徴としての役目があるのですから」

「は はい」

とだけいうと我々に退けとでも言わんばかりに押し退け通り抜けていく、成る程なぁ 貴族としての手腕は如何程かは知らんが あんなのにスピカも国を渡したくはあるまいよ
為政者とは非情冷淡であるべきとの言葉はよく聞くが、非情と他人を見下すのは別だ


しかし、あのオルクスという男 害意に満ちてはいたが私を戦慄させる程ではないぞ?、今の感覚は一体誰のだ?後ろの兵隊か?

オルクスの後をついて歩くあの二人、共に全身を甲冑で覆い 兜の所為で顔は伺えないが、体格は分かる 、片方は山のように大きな体からして恐らく男、そしてもう一人は痩せたスレンダーな鎧を着た 恐らく女?かな?、ん?女の方が私に会釈してきた 、オルクスも男の方も私を無視したのに、誰だ? 一体何者

なんてな、いくら鎧や兜で隠そうとも私には透視の魔眼術がある、一丁顔を拝んで…

「ッ…何…!?」

「どうされたのですか?ししょー?」

透視の魔眼で あの女の鎧の中を覗こうとしたら、弾かれた 見えなかった…魔術による透視をジャミングされ 中を伺う事が出来なかった

いや、魔眼を弾く事自体は不可能ではない 現に我々魔女は全員魔眼殺しという技を持つ、がしかし それを現代の魔術師の中に使える者がいるとは驚きだ、あの女 相当やるぞ

「いや、なんでもないよエリス…おいメイナード、あのオルクスが連れてる兵士、あれも友愛の騎士か?」

「いいえ、あれはオルクス卿の私兵ですね、各地で活動している冒険者や傭兵 果ては他国の騎士団長やらを財力に物を言わせて引き抜き 自分の手駒にしてるんです、その実力は我々騎士団でさえ 把握していません」

「そうか、注意した方がいいかもしれんぞ、特にあの女の兵士の方 」

「成る程、忠告痛み入ります…んん、確かに あまり声をかけないほうがよさそうな雰囲気ですね」

オルクスが立ち去り 白亜の城の中へと消えるのを確認し、ホッと一息 胸をなでおろすメイナードとヴィオラ…いや デティもか、オルクスは独特の雰囲気を纏っている たまに居るんだ、立つだけで相手を威圧出来る風格を持った奴が

そうだな あれは無双の魔女が持つ重圧に近いかもしれん、重さは天と地ほどあるが

「しかし、オルクス卿が態々白亜の城に赴くなんて、珍しいこともある者ですね」

「普段は来ないのか」

「はい、余程のことがない限りは…そして今、オルクス卿を動かす『余程』に身に覚えがありません」

私がアジメクに現れたのは余程ではないらしい、まぁ無視されたし…いや私がレグルスだと気がついていないのか?、それとも気がついていてなお 相手をする価値がないと思われたのか、どちらも同じこと 眼中にないのだろう

恐らく彼が見ているのはスピカ…いやスピカの座っている椅子だけだ、もし スピカに危害を加えるなら 容赦はしないが、細々権力争いしてるうちは手を出す必要もなかろう、むしろ私が手を加えたらアジメク勢力図をしっちゃかめっちゃかにする可能性があるし

「まぁよかろう、 エリス 帰って修行をするぞ」

「はい、ししょー!エリスはまだまだ元気いっぱいです!」

何はともあれ、予定に変更はない…まだ太陽は少し傾いたくらいか、今からなら数時間くらい魔術制御と体力強化を行えそうだ、昨日はなんだかんだ修行を行えなかったからな、基礎とは毎日やってこそ 、魔術師にせよ何にせよ高みに登るなら例え少々の無理があれど毎日のルーティンとして修行を行う必要がある

「あれ、レグルス様 スピカ様にはお会いしないのですか?」

「ああ、忙しそうだしな、それに このまま会いに行けばまた料理をご馳走されることになりそうだしな、そう毎日もてなしてもらうのは悪いよ」

スピカは忙しいそう というか、これから忙しくなるだろうという予想だ、普段現れないオルクスが城に現れた以上、スピカはそれなりに対応せねばならない…となると私が行けば邪魔になろう、毎日会えるのだから 毎日会う必要はないだろ

「そうですか、分かりました では私達がお送りしますね」

そう言いながら笑顔で胸を叩くヴィオラ、ここは甘えよう 

いつものように魔術使ってすっ飛んでってもいいが、街中じゃ流石に目立つからな

帰って 修行して、飯食って 寝る前に少し勉強して それで寝る、皇都に来たからと生活ルーティンを変えることはない、惑いの森にいた時のように やる事は変わらん、金の心配をしなくて良くなったのはかなりデカイがな

アジメクに何日居るかは分からんが しばらくは似たような日々が続くだろう、この環境を活かして 今のうちにエリスを強くしておかねば


……………………………………………………

「………………」

一人、誰もいない薄暗い部屋の中 パイプを燻らせ、その煙をボッーっと眺めるナタリア…なんでこんなことしてるんだアタシは、なんでこんなことになったんだ…アタシは

全部アイツのせいだ、アイツ…レオナヒルドの所為だ、アイツの顔を目を見ているとあの頃の記憶を思い起こさせる、アタシの …忘れかけていた過去を

『お前がナタリアかぁ?、私がお前の教育係に任命されたレオナヒルドだ、レオナヒルド・モンクシュッド…そう あのバルトフリート・モンクシュッドの妹さ、あんまり私を見縊るなよな 新人』

『おいおい新人、こんな簡単な魔術も扱えないのかぁ?所詮は士官学園で成績が良かっただけの愚図だなぁ、お前みたいな愚図 この私の雑用として使ってもらえるだけありがたく思えよ!』

『なんだその目は!、上官には逆らうなって士官学園で習わなかったか?、軍人何年めだ?お前、こんな簡単な事をわざわざ教えてやらなきゃダメか?』


「ッ……!」

堪らず机を殴りつけ、鈍痛で意識を覚醒させる…レオナヒルド、アイツはまだ新人だったアタシの教育係として常にアタシにつきまとっていた、お世辞にも善人の呼べぬアイツに付き纏われて楽しいわけがない…いつもいつも優越感に浸る為だけに抵抗出来ない新人のアタシをイビリ倒してきた

「このまま、アタシの前から消えていてくれたなら…どれだけ良かったか」

アイツは宮廷術師として信用を欠く行いばかりしてきた、立場に物を言わせ好き放題し 宮廷内でも嘘をつき回り、弱者を甚振り…最終的にアイツは皇都から追放された、その挙句偽魔女に身を落としているなんて、らしすぎて最初は笑っちまったよ

アイツはこれから処刑されるだろう、アイツからの尋問が済めば 直ぐにでも縛り首…或いは打ち首、どちらも同じだ 助かる道はない

「バカだよな…本当に、本当にバカだ…」

だが、それでも その前にどうしてもやらにゃならんことがある、レオナヒルド…死ぬなら勝手に死んでくれて構わないがな、その前に アンタにしなくちゃならない事がアタシにはあるだよ、楽に死ねるの思わないことだ、レオナヒルド

「さて、…もーいっちょ頑張りますか」

体についた汚れを手で払い、小休憩を終える…しばらく家に帰ってないから、だいぶ汚くなってきたな、でも まだ帰るわけにはいかない





しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:79,505pt お気に入り:3,407

転生したかも?・したみたいなので、頑張ります とにかく、頑張りま!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:247

第7皇子は勇者と魔王が封印された剣を手に、世界皇帝を目指します!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:188

最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:285pt お気に入り:403

拝啓、殿下♡私を追い出して頂いて感謝致します【完結】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28,629pt お気に入り:2,316

あなたに愛や恋は求めません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:103,299pt お気に入り:9,041

処理中です...