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35話 バカ三人娘
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「じゃ、失礼します」
「うん……よろしくね」
僕はそう言って職員室から出る──フリをして再び和野先生に振り返ってみた。なんか様子おかしかったからね。
「あ、そういえば────っ! 先生!?」
振り返った視線の先。そこでは右手で左の手首を押さえて涙ぐむ先生の姿。
えっと……近くに他の先生はいないね。一番近くて斜め向かいのおじいちゃん先生くらいか。よし。
「先生、ちょっと失礼します」
「……え? へ? 痛っ!」
僕は小声でそう言うと先生の左手の袖をまくる。するとそこは赤紫に染まっていた。アザだ。
「これ、どうしたんですか?」
「えっと……昨日間違えて車のドアに挟んじゃったり……? ってそんなことどうでもいいから! ほら、はやく教室戻らないと予鈴なるよ? ほらほら」
「……わかりました。早めに湿布貼ってくださいね」
「うん、ありがとう赤坂くん」
廊下に出てすぐにスマホを出す。さっき渡瀬さんから招待されたグループを開いてみると、どうやらみんな何とか逃げて家に帰ったみたいだね。これなら頼み事出来るや。
僕はある事を入力して送信。返事はすぐに来た。
『いいけど、どこに持っていけばいいのかしら?』
『放課後にマンションに行くから、そこで渡して欲しいな』
『りょうかぁ~い! 今ね、ボクとミオリンでナオちんの部屋に遊びにきてるんだ』
『サボりを満喫してるんだね』
『たっくん、それは否。この二人が勝手に来ただけ』
『奈央? それは酷いんじゃないかしら? 貴女が寂しいって言うから来たのに』
『そうだよ~! ボク、お菓子も持ってきたのに!』
『奈央、ケーキはモンブランが好き……』
『『わがまま!』』
この三人、自分が学校サボってる自覚ないよね? まぁ僕には関係ないからいいんだけどさ。
さて、とりあえずは放課後だね。アレを受け取らないと──。
◇◇◇
結局、和野先生は早退して病院行ったらしくて、先生の授業はどの学年も自習に。
更に、いつもの三人がいないことで実に静かに過ごすことが出来た。なんだろう? 今の状況になってそんなに経ってないのに、こんなに静かなのがすごく久しぶりな気がするんだよね。
一日一日がどれだけ濃かったんだろう。僕は薄味の方がいいんだけどな。
なんだかハーレムみたいになってるけど、未だにどんな理由で僕のことを好きになったのかがわからないんだよね。別に何もしてないんだけどな。
ってな事を考えているうちにみんなが住んでるマンションに着いた。
エントランスに入って奈央ちゃんの部屋の番号を押して鍵を開けてもらうと、エレベーターに乗って最上位へ。
「はい拓真、頼まれていたやつよ。それにしても何に使うの? 私、期待しちゃってもいいのかしら?」
「期待しなくてもいいよ」
「拓真くん。ボク、スマホの容量たくさん空けておいたからいつでも大丈夫だよ!」
「僕が大丈夫じゃないね」
「奈央、まだ見たことない。ワクワク」
「ははは。じゃ、僕は行くね」
そう言って背中を向けた。
「え、帰るの早くないかしら? 来たばかりよ?」
「ちょっとやることがあるんだ」
「そう。なら……はいコレ」
渡瀬さんがそう言って僕に手渡してきたのはタブレット。その画面には地図と何かマーカーみたいな物が映っていた。
「これは?」
「あの男の居場所よ。マンガやアニメみたいに点滅しながら動いたりはしないけど、再読み込みすれば今いる場所がわかるわ」
「場所って……なんで?」
「GPS付きの中古のスマホを買ってあの男に持たせたの。『これに連絡するから持ってて♪』って言ったらニヤニヤしながら受け取ったわ。安心して? 化粧して変装もしたから。私だってわからないように」
え?
「そしてそのスマホはボクが遠隔で通話状態に出来るようにしてあるから、その右下のアイコンをタップすれば声もこっそり聞こえるよ。注意しないといけないのは、通話状態だから聞く方は静かにしてないとバレちゃうかも」
は?
「奈央はそのスマホとタブレットを買った。お姉ちゃんのカードで買った。バレたら謝る」
へ?
「ちょ、ちょっと待って? なんで?」
いや、ほんとになんでこんなことを? 訳が分からないよ。
「決まってるでしょ? 私達は──」
「好きな人の為なら」
「なんでもする」
「「「ってこと」」」
「バカなんじゃないの?」
「まぁ、確かに私は赤点ギリギリだけれども」
「ボク、この前赤点三個あった」
「奈央、転入試験満点」
「「うそっ!?」」
はぁ……。頭おかしいとは思ってたけどここまでだったなんて思いもしなかったよ。
だけど──ちょっと好きな頭のおかしさだね。
うん。ホントにちょっとだけね?
「うん……よろしくね」
僕はそう言って職員室から出る──フリをして再び和野先生に振り返ってみた。なんか様子おかしかったからね。
「あ、そういえば────っ! 先生!?」
振り返った視線の先。そこでは右手で左の手首を押さえて涙ぐむ先生の姿。
えっと……近くに他の先生はいないね。一番近くて斜め向かいのおじいちゃん先生くらいか。よし。
「先生、ちょっと失礼します」
「……え? へ? 痛っ!」
僕は小声でそう言うと先生の左手の袖をまくる。するとそこは赤紫に染まっていた。アザだ。
「これ、どうしたんですか?」
「えっと……昨日間違えて車のドアに挟んじゃったり……? ってそんなことどうでもいいから! ほら、はやく教室戻らないと予鈴なるよ? ほらほら」
「……わかりました。早めに湿布貼ってくださいね」
「うん、ありがとう赤坂くん」
廊下に出てすぐにスマホを出す。さっき渡瀬さんから招待されたグループを開いてみると、どうやらみんな何とか逃げて家に帰ったみたいだね。これなら頼み事出来るや。
僕はある事を入力して送信。返事はすぐに来た。
『いいけど、どこに持っていけばいいのかしら?』
『放課後にマンションに行くから、そこで渡して欲しいな』
『りょうかぁ~い! 今ね、ボクとミオリンでナオちんの部屋に遊びにきてるんだ』
『サボりを満喫してるんだね』
『たっくん、それは否。この二人が勝手に来ただけ』
『奈央? それは酷いんじゃないかしら? 貴女が寂しいって言うから来たのに』
『そうだよ~! ボク、お菓子も持ってきたのに!』
『奈央、ケーキはモンブランが好き……』
『『わがまま!』』
この三人、自分が学校サボってる自覚ないよね? まぁ僕には関係ないからいいんだけどさ。
さて、とりあえずは放課後だね。アレを受け取らないと──。
◇◇◇
結局、和野先生は早退して病院行ったらしくて、先生の授業はどの学年も自習に。
更に、いつもの三人がいないことで実に静かに過ごすことが出来た。なんだろう? 今の状況になってそんなに経ってないのに、こんなに静かなのがすごく久しぶりな気がするんだよね。
一日一日がどれだけ濃かったんだろう。僕は薄味の方がいいんだけどな。
なんだかハーレムみたいになってるけど、未だにどんな理由で僕のことを好きになったのかがわからないんだよね。別に何もしてないんだけどな。
ってな事を考えているうちにみんなが住んでるマンションに着いた。
エントランスに入って奈央ちゃんの部屋の番号を押して鍵を開けてもらうと、エレベーターに乗って最上位へ。
「はい拓真、頼まれていたやつよ。それにしても何に使うの? 私、期待しちゃってもいいのかしら?」
「期待しなくてもいいよ」
「拓真くん。ボク、スマホの容量たくさん空けておいたからいつでも大丈夫だよ!」
「僕が大丈夫じゃないね」
「奈央、まだ見たことない。ワクワク」
「ははは。じゃ、僕は行くね」
そう言って背中を向けた。
「え、帰るの早くないかしら? 来たばかりよ?」
「ちょっとやることがあるんだ」
「そう。なら……はいコレ」
渡瀬さんがそう言って僕に手渡してきたのはタブレット。その画面には地図と何かマーカーみたいな物が映っていた。
「これは?」
「あの男の居場所よ。マンガやアニメみたいに点滅しながら動いたりはしないけど、再読み込みすれば今いる場所がわかるわ」
「場所って……なんで?」
「GPS付きの中古のスマホを買ってあの男に持たせたの。『これに連絡するから持ってて♪』って言ったらニヤニヤしながら受け取ったわ。安心して? 化粧して変装もしたから。私だってわからないように」
え?
「そしてそのスマホはボクが遠隔で通話状態に出来るようにしてあるから、その右下のアイコンをタップすれば声もこっそり聞こえるよ。注意しないといけないのは、通話状態だから聞く方は静かにしてないとバレちゃうかも」
は?
「奈央はそのスマホとタブレットを買った。お姉ちゃんのカードで買った。バレたら謝る」
へ?
「ちょ、ちょっと待って? なんで?」
いや、ほんとになんでこんなことを? 訳が分からないよ。
「決まってるでしょ? 私達は──」
「好きな人の為なら」
「なんでもする」
「「「ってこと」」」
「バカなんじゃないの?」
「まぁ、確かに私は赤点ギリギリだけれども」
「ボク、この前赤点三個あった」
「奈央、転入試験満点」
「「うそっ!?」」
はぁ……。頭おかしいとは思ってたけどここまでだったなんて思いもしなかったよ。
だけど──ちょっと好きな頭のおかしさだね。
うん。ホントにちょっとだけね?
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