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プロローグ 始まりの終わりの始まり

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 とある高校の屋上へと続く階段。
 そこでいかにもな男女が二人、なにやら良くないことを話していた。

「最近調子に乗ってる拓真に偽のラブレター出してやろうぜ。ぜってぇウケるから」
「えーかわいそー!」
「いや、お前そんなこと言いながら笑ってんじゃん」
「あ、バレた?」
「わかるってーの。はい、わざとらしい嘘ついたからお前がラブレター書けよ。なるべく頭が砂糖で出来てる奴が書いてる風にな」
「そんなのむりー!   『あなたの事を思うと夜も眠れなくて体がうずくんですぅ』とかしか書けないってば」
「うはははは!   書けんじゃねーか!  それでいこうぜ!   場所は明日の放課後の渡り廊下の下な!  クラスの奴呼んで笑ってやろうぜ」
「まっかせといて!   あ、でも……アタシ、あんたのこと考えるといつも疼いちゃうかも……」
「…………ならその疼き、解消させてやるぜ?」
「あっ……やんっ♪」

 そこから始まるイチャイチャタイム。しかしわずか五分程で終わり、二人は階段を降りていく。女の方は不満そうな顔で、「帰ったら続きね!  全然解消されてないんだから!」と言って男の背中をポコポコ叩きながら。

 そしてそれから更に五分後、本来ならば立ち入り禁止であるはずの屋上への扉が開き、先程の情事の場所に立つ姿があった。どうやら立ち入り禁止の屋上から校内に入ってきた様子。

「…………」

 無言で立つその姿は、光に透かすと少し青みがかって見える長い黒髪。背も高く、スラリとしたスタイルの美少女。可愛いよりは綺麗な感じで、美女と呼んでもいい。
 そして切れ長の鋭い瞳。その瞳がさらに細められたあと、

「…………」

 彼女は無言で階下へと足を進めた。

 ◇◇◇

 翌日、一人の少年が自身の下駄箱に入っていたラブレターを見つけた。
 少年の名前は赤坂《あかさか》  拓真《たくま》。一見特に目立つ部分もない普通の男子高校生。

「え、こ、これ……ラブレター!?   僕にもやっとまともな出会いがっ!」

 拓真は他の一般男子とはちょっと違う喜び方をすると、そのラブレターを大事にしまって放課後を待った。
 しかし……

「あれー?   拓真くんそんな所でなにしてんのー?」
「もしかして告白とかされちゃうのかなー?」
「やだぁ~モテモテじゃ~ん」
「「「あはははははは!」」」

 呼び出された場所に行くと、そこにあったのはクラスメイトからの拓真への嘲笑。

「そっか。騙されたんだ。これは嘘のラブレターだったんだ……」

 拓真は手にしたラブレターを破り捨てようとした時、後ろから声が聞こえる。

「あら、破いちゃうの?  せっかく書いたのに」
「え?」

 振り向いた先にいたのは、屋上から出てきたあの美少女。

「それ、出したの私なの。なんて書いてあるか言ってみて。その通りだから 」
「え?  うそ……。だって『夜も寝れなくて体が疼く』とか『目を閉じてもあなたの姿が浮かぶ』とか『付き合えたら何でもしてあげたい』とか書いてあるのに!?」
「…………そ、そうよ。私よ」
「そんな……まさか……渡瀬さんが僕の事を!?」

 美少女の名前は渡瀬《わたせ》  彩音《あやね》。
 拓真の通う高校で一番と呼ばれる程の美貌を持ち、その冷ややかな視線から周囲に【女帝】と呼ばれる存在。

 そして、拓真の片思いの相手でもあった。




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