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追憶の先にあるものはなんですか?

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 魔王に瀕死の状態まで追い詰められた俺は全身血みどろで立ち上がる気力も体力も底をついていた。

「こんなことなら最初から全力で行けば良かったな。ハァハァハァ」

「お兄ちゃん頑張ったよ。一生懸命戦ったよ」

「ごめんなぁミゼル。もうお前等を逃がしてやる気力も残ってないよ」

「お兄ちゃんだけを置いて逃げるなんてできないよ。死ぬときはミゼルも一緒だよ」

「ミゼル……。カイトはいいのか? いや、すまない。こんな時に聞くもんじゃないな」

「カイトも好きだけど、今はお兄ちゃんが一番好きだよ。やだぁ、恥ずかしいのに言わせないでよぉ」

 ミゼルは顔を真っ赤にして照れている。そんな頬を両手で抑えて顔を背けた。

「多分キャゼルもお兄ちゃんのこと好きなんだよ。私見てたらわかるもん。けど、誰がお兄ちゃんを好きでも、ミゼルがお兄ちゃんの事を大好きだよ」

「そうか、ありがとう。お兄ちゃんもミゼルのこと……ゴホッゴホッ」

 むせながら血を吐く俺の背中をミゼルは優しくさすってくれた。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「もう駄目かもしれないな。最後に一つだけ俺の願いを叶えてくれないか?」

「うん。ミゼルに出来ることならなんでも言って」

「じゃあお尻を撫でさせてくれないか。ミゼルの柔らかそうなお尻をずっと撫でたかったんだ、ゴホッゴホッ」

 咳込みながらバカな願いを言っている。ただこの世に未練を少しでも残しておきたくなかったのだろう。

「そんなことでいいの? お尻だけじゃなくていいんだよ。ずっと一緒に寝てる時からミゼル待ってたもん」

 ミゼルは着ていた鎧や衣類を脱ぎ捨て裸身になって抱き付いてきた。

「お兄ちゃん、ミゼルの猫耳を奪って……」

「ミゼル……、いいのか……」

 コクっと抱き付いたままミゼルは頷く。

 透き通るような白い肌。包み込んでくれるようなお尻にとろけてしまいそうな柔らかい胸。全身の痛みを忘れてミゼルに触れる身体のあらゆる皮膚に神経を集中させた。

「柔らかい、柔らかーい。これがミゼルの触りたくても我慢していたもちもちの肌なんだなぁ」

 ミゼルの淡い吐息が俺の耳元を擽る。

「アハ、アハ、アハハハハ、グフフ、ミゼルゥ……」

   ※

「ありゃ完全に変な妄想でイッてるで」

「お兄ちゃん! しっかりしなさい!」

 急に飛び掛かってきたミゼルに慌てて正気に戻る。

「ミゼル! アハハァ」

「お兄ちゃん! 変態みたいになってるって皆に言われてるよ!」

 ハッ!

 いかん、久しぶりに妄想の頂点にイッてしまってた。

 この妄想をする寸前、俺は魔王の最後の攻撃を受けそうになったのだが、魔王は今血みどろになって横たわっている。

 腹には聖剣ヨシミツが突き刺さっていた。

 ルーチェの拘束を自力で外したクラッチロウが駆け寄り魔王の安否を確かめている。

 ヨシミツを抜こうとしたが思ったより重そうで、他人が持つことによって改めてヨシミツの重量を体感してしまう。

 あの時、魔王が振り払ったヨシミツは天に舞っていた。落下地点を予測した俺はその場所に魔王が来るように仕向けながら攻防を繰り返した。

 作戦通りか運が良かったのかわからないが、魔王の最後の攻撃の瞬間に降り落ちてきたヨシミツは見事腸に突き刺さった。

 自分の先の行動を読まれながらの戦いに、精神的に疲弊しまくっていた。

 意図的に放り投げていたら先を読まれていたかもしれなかったので、咄嗟に思いついた攻撃でなんとか勝つことができた。

 同時にこの戦いで自分のチートの能力の再確認とそれに驕る気持ちがわかった。これが経験値を獲ることによ精神のる成長というものだろうか。

 皮肉にもそれが最終目的である魔王討伐の魔王本人との戦いによるものだと。

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