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第十一章 夜明けのホワイトクリスマス

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「昨夜はごめんなさぁい、またポカしちゃった」

「詩織ぃ、お酒は程々にしなきゃっていつも言ってるのに」

「わかってたんだけど、楽しくってつい……」

「ま、まぁお酒でハメ外すのは誰にでもあることだし、取り返しのつかないことがあったわけじゃないし」

 言った瞬間、雪実をチラッと見ると唇を尖らしてこっちを見ていた。

「詩織は怒り上戸の泣き上戸だったでしょ?」

「もう、言わないでぇ」

「それでもどんなに酔っても全部覚えているところは素直に凄いって思うけどね」

 カオリ君を止める詩織さんを見ながら昨夜のことを思いだしてくる。酔って出た言葉が本音か酔った勢いかは置いといて、全部覚えているのは恥ずかしいこともあるのではないか。逆にこっちも酔って言ってることも覚えられているとなると、恥ずかしいこと言ってないか心配になる。雪実とは逆だな、すっかり忘れてるからな。

「詩織はねぇ、寂しがりやなんだよ。そこが男からしたらガードが緩いって勘違いされるの。だからいっつも気を付けろって注意してんだけどな。昨日もお宅じゃなかったらやられてたかもな」

 今のお宅は君って意味か? オタクでも生で乳くらい揉もうとすることだってできるんだぞと威張りたいところだ。

「明君は、そんなことしないもん」

「ハイハイ、で? どうすんのアンア達。なんかイイ感じっぽいけどそんな話になったの?」

「えっとぉ……わかんないんだけど」

 ドキドキである。ただ、酔った勢いだったけど何も気が無いって皆の前で言われるのも辛いんだけど。

 いつになく雪実は黙って真剣な表情を浮かべている。そりゃ自分の寝床が変わるかどうかの問題だからだろう。目標達成と同時に出て行かねばならないのだから。

 コーヒーを口に含んだ後、大きく一度深呼吸をしてカップを置き、一気に語り出す。

「最初はホント感謝の気持ちでお礼がしたかったの。助けてくれた時は頼もしくて帰りの電車では静かだったけど雪実ちゃんと話せて楽しくって、シャイなんだなぁって思って。同じ会社なのに全然会えなくて、気付いたら毎日明君のこと探してて。やっと会えたら雰囲気も変わってて喋って楽しくて、二人で会う約束の日まで毎日楽しみで楽しみで。なんでこんな気持ちなんだろうってわかんなかったら明君が私の声が好きって言ってくれた時、嬉しかった……」

 恥かしそうにコーヒーを飲んで気持ちを落ち着かせている様子。シャイじゃなくて喋ってるつもりだったというのは内緒にしておこう。

「詩織は押しに弱い所があって、好意を持ってくれたら相手の良いとこだけを見てしまう盲目タイプなの。明君だっけ? 貴方が悪い人ではなさそうだけど詩織と付き合いたいって思ってるの?」

「そりゃぁ、できれば」

「ダメよ! そんなんじゃ!」

「ひぇっ!」

 大きな声で言われ全員肩をすくめて驚くも、更に大きな声が部屋に響いた。

「付き合いたいならどんな事をしてでも付き合いたいって強い気持ちじゃなきゃダメなのよ」

「お、俺、詩織さんと付き合いたいです」

「ダメよ!」

「えぇー?」

 三人とも不思議そうな顔でカオル君を見つめた。

「差し出がましいと思うだろうけど、詩織は私の親友なの。中学一年の時からの親友だから幸せになってほしいから、適当な気持ちで付き合ってほしくないの……」

「ありがと。カオル君の気持ち、凄く嬉しいよ。いつも心配してくれて、ありがとう」

「詩織……」

「カオル君の気持ちも大切にするよ。だから私は私を幸せにしてくれる人を選ぶよ」

 手を握り合う二人。カオル君の目が少し潤んでいるように見える。百合か? 百合じゃねーか、百合もいいな。いやいや、ってか俺、否定されたけど本人目の前にして付き合いたいって告白したようなものなんだけど、スルーなのか? 余計に恥ずかしいんだけど。
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