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第六章 窓から見えた月は、二人を優しく照らしてくれている

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 夜露が残る窓辺に小鳥が居るのだろうか、さえずりが聞こえた気がした。

 こんな季節だしなにかの聞き間違いか夢の中で聞こえてきたのが現実と錯覚しているのかもしれない。

 部屋の明るさからして、程好い時間なんだろうなというのを感じる。

「ウフ、小鳥さん……」

「そうだね」

「やだぁ、お兄ちゃん……起きてたのぉ?」

「ちょうど今覚めたとこ」

 布団から出るのに決心をしなければならない程、この中が心地よい季節になった。

 狭いシングルベッドで暖められた温度は毛布のお陰だけではないのだろう、体温がお互いを暖め合う。

 何度も見慣れた天井を眺めその日の予定を思ったり目を閉じて少しの睡魔と相談したりもする。

 長年連れ添った夫婦なら毎晩同じ布団で寝ても何も感じず何事もなく、浜辺に打ち寄せる波の様に毎日朝を迎えるのだろうか。

 そもそも長年連れ添った夫婦なら別々の布団で寝ているのか。

 じゃあやっぱり兄妹、幼児のようなまだ小さな子供の兄妹ならなんの意識もなく朝を迎えるだろう。

 青年世代なら意識をするという意味ではなく、拒否反応を示すだろうという意味である。

 俺は同じ布団の中で無防備に眠る見た目完全な人間のあやかし雪実に対する感情が、どの世代の関係に値するのか考えるも答えが出てこなかった。

「寒い。お兄ちゃんコーヒー煎れてよ」

「やだよ、日曜日の朝くらいはゆっくりしたいんだから自分で煎れろよ。ついでに俺も飲むから」

「えぇ? か弱い女の子を寒い朝に布団から追出しコーヒーを要求するなんて、酷いわ」

「いや、自分が欲しいって言ったんだし俺のはついでで、そもそもか弱いって所敢えて突っ込むけど、誰も同調してくれないからな」

「あぁ、酷い。あの優しかったお兄ちゃんは何処に行ったの? あの夜初めてプレゼントをくれた優しいお兄ちゃん。わらわをそっと抱きしめて二人はそのまま初めての夜を過ごし……」

「いやいやいや、勘違いされるような表現やめようよ。あの後ご飯も適当に済ませてさっさと寝たよね。疲れたー、我が家が一番とか言って。俺の部屋だし」

「細かい事は言いっこ無しで煎れてよ、お兄ちゃぁん」

 渋々ながらもベッドから起き、上着を羽織ってコーヒーの準備をする。

 頼まれたからというのもあるが自分が飲みたいというのもあるし、一人暮らしなら自分が煎れるのが当たり前だったので億劫さは特に感じてはいない。

 それに、朝でも誰かと話をしながら美味しいコーヒーを飲めるということは、ささやかながらも孤独な生活と離脱している自分の心が弾んでいるのがわかる。

 トーストを仕掛け、フライパンに火をかけてベーコンエッグの準備をする。

 どの香りにつられたのか色違いのパジャマを着た雪実はベッドから起き上がり、煎れたちのコーヒーを美味しそうに飲む。

「さぁ今日は何を観てコンプリートするか」

「あのさぁお兄ちゃん、日曜日の度に朝からアニメ全話観るのもそろそろ休憩にしないの?」

「何言ってんだよ、この俺が提供する事前情報と解説付きで一気に全話観られる日曜日を有効活用しなくてお前は一体何を学んできたんだ!」

「そうやってわらわをアニオタに引っ張り込もうとするの、やめてぇ。もう何週間も続けてるじゃん」

「仕方ないだろ! 同じ給料でお前が増えた分の食費含めた生活費、休日の度に買い物に行ってたら足らねえんだし。だからと言ってアニメが安上がりだから観てるんじゃないんだぞ! そんな気持ちで観るんじゃない。隠れた伏線の回収や演出、最初に観た魔法少女は何度観ても新しい発見がありだな……」

「あぁ、朝からそのテンション勘弁してよぉ。美味しいコーヒーが苦く感じるわ」

 朝からアニオタのテンションがマックスになってしまったのだが、雪実はこのテンションにうんざりしている様子。

 一体どうしたというのだろうか、アニオタの俺にとっては至福のことなのだが敢えて理解ができない風にしてみる。
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