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第二章 人生初デートの相手があやかしなんて

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 時たま見かける行列に、人は並んでまで手に入れたい食べ物や飲み物があることに雪実は呆れていた。

 姿を消せるあやかしには並ぶ心理は到底理解できないだろうが、そんなあやかしだろうと死んで地獄に行けば閻魔大王の前に並んでいるのではないだろうか?

 これも人が作り出し古くから埋め込まれている勝手なイメージなのだが。

 仮にそれが本当であっても雪実なら親の権限で並ばなくて済むのだろうか。

 そんな事をここまで考えて、おそらく俺の人生で無駄な考えの五本の指に入るだろうなということで自己解決することにした。

 

「旅館で食べる物とはまた違った風味だね」

「洋食と和食、ファーストフードとかの分別からして全く違うからな」

「へぇ、そうなんだ。食べ物でも色々あるんだね」

「今まで勝手につまみ食いしてきたくせに、食べる種類は偏ってるんだな」

「そうかな?  あまり気にしたことないけど。あの旅館は出来た頃から食べてるから味も完璧に覚えているよ」

「つまみ食いが自慢できることかよ」

 呆れるところだが、年数が桁外れなので凄い記録的なつまみ食いだなと感心するような錯覚に陥ってしまいそうだ。

「これも美味しいけど、やっぱり旅館の料理の方が美味しいね。食べ慣れてるし」

「比べる方が可笑しいんだよ。つまみ食いで食べ慣れてるとか言わないの」

 てへ、っと笑う仕草は妹キャラのそれそのものだった。

 人には何でも慣れと免疫といものがあるのだろうと再確認するように、可愛い仕草の度に雪実はあやかしであると自分に言い聞かせる頻度が少なくなっていると後から思うようになる。

 

 店を出てからは、雪実の行きたいように任せて後ろからついて歩く形になった。

 いつものお決まりパターンのショップを廻るよりも新鮮味が感じられる。

 路地裏など、これからも一人で来てたら立ち入ることなどないような所を通る。同じ場所でも景色はこんなにも変わるものなのだ。

 かといって新しい発見も特になく、初めて通る場所を体験した日。になるはずと思っていた。

「いやよ!」

「いーじゃねーか!  今度ちゃんと返すからよ!」

「こないだもそんなこと言ってたじゃん!」

 楽器の機材を扱っている店から勢いよく出て来た女性と後ろから着いて出て来る男性。

 その男性は肩まで伸びた茶色の髪にパーマでもあてているのだろうか。縮れてそれが誠実さと真逆な印象を与える。

 ニヤケっ面で何かをせびっているのだろうか、黒のスラックスに両手を入れている態度からして頼みごとというより強制的な態度に取れる。

 間違いなく言える事は、俺の住む世界とは一生関わることがない人種だということである。
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