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第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

45 梓の謎

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「それは残念だったな」

 翌日の土曜日に事務所内でいつもの三人で昨日出番がなかった甘いもの達を食べながら、梓さんの淹れてくれた紅茶を飲みながらくつろいでいる。

 土曜日は基本的に休日なのだが自由に出勤しているのが現状だ。

「ブラック企業ですかね」

「最近はすぐにブラックだ働き方改革だと言ってるが企業と労働者は持ちつ持たれつでいいと思うのだがな。まぁ俺は固定給だし休みが多くてもすることないし、嫌々出勤してるわけではないからな。しかし国はこれらを纏めて取り締まろうとするから困るんだ。」

「確かに違反してる企業も多いでしょうし、言えない労働者も多いだろうな」

 その辺の所はわりかし緩いのがからし屋マタジの良いところだろうか。土日にからしの配達注文は殆どないので”W”対策に時間を費やせれる。

「しかしそのクラスも以上な位ハイレベルだな」

「そうなんです。実際頑張って点数取ったので本当に残念でした」

「残念なのは旅行のことか?」

「ち、違いますよ」

 慌てて俺は否定したが本当のとことはどうだったのか自分でもわからなかった。

 後にこのテストには”W”が関わっていたことが発覚した。なんでも担任に”W”が宿っていてテストのコピーが生徒に出回っていたのだ。おかしいのは意図的なのか曜子にだけ回ってこなかったことだったが、魔女狩り的に曜子を陥れようとすることあ分かったのは更に後になってのことだった。

 どちらにしても一人の少女の自信と希望を打ち崩した罪は思い。今回のテストがフェアに行われていた場合の順位はどうだったのか。実力であの点数を取ったのだからやはり曜子は出来る素材なのだろう。

 この時点では俺はまだ知らなかったことなので本気でクラスの実力が異常であるおもっていたと同時に曜子の落ち込み具合を気にしていた。

「まぁ傷心旅行ってことで俺が曜子ちゃんと旅行に行って混浴風呂で裸の付き合いで励まして来るって案も……」

「ありません。どこのオッサンが女子高生と混浴風呂の旅行計画に鼻の下伸ばしているのですか」

 梓さんに窘められるがごもっともだ。

「じゃあ梓ちゃんと今後のアルパカ支店について混浴風呂で……」

「ありません」

 即却下だった。そう言えば所長は何歳なのだろうか。聞いてもオッサンだよとしか答えてくれない。

「梓さんは休日は予定ないのですか?」

「ある時は忙しいが無い時は一日中寝て過ごして不健康だから出社してる」

「へーそうなんですか」

 余程事務所の居心地が良いのだろうか。

「ウタル、こう見えても梓ちゃんは彼氏いるんだぞ」

「こう見えてってのは余計です」

 確かに居るのが当然の見た目だが、会社での梓さんしか見たことないから彼氏がいるっていうのは実感がわかなかった。
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