短編集【BLACK】

タピオカ

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ただの石と蛇さん

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 山道に小さな石があった。

(今日も暇だな~)

 その石はとても暇を持て余していた。

(何か無いかな~)

 そう考えていると3人の小学生の男の子達が歩いてやってきた。

「山登りだー!」
「ひゃっほーい!」
「この自然!最高だぜ」

 小学生はテンションが高かった。
 その様子を石は見ているとその後蹴られた。そして小学生達は、そのまま石を蹴りつつ3人でパスをしながら歩く。

(痛て~!!俺を蹴るな!)

 何回も蹴られていて石はとても痛がっていた。
 そして小学生に対してかなり怒っている。

(くそ~!俺は石で何も出来ないが、このガキどもに仕返しをしてやりたい!)

 蹴られながら考えていると小学生達は飽きたのか蹴るのをやめ、石はその場に置いたまま山登りを続けた。

(やっとやめたか、しかし腹立つな!)



 石は怒りの気持ちが収まらないままでいると、丁度そこに大きな蛇が通りかかった。

(強そうな蛇だなあ…そうだ!いい事を思いついたぞ!)

『おーい!そこの蛇さん!』

 通り過ぎようとしていた蛇を石は呼び止めた。

『なんだ、ただの石か。どうした?』

 蛇は石に対して素っ気ない対応をする。

『……。実はさっき人間の子供が3人通ったんですよ~。蛇さんは興味を持ちそうだな~って!』

 石は自分の立場上、機嫌を損ねないように蛇に人間の事を伝えた。

『…なるほど、確かにそれは面白そうだ。会いに行ってくるか、情報をありがとうな』

 蛇は石に礼を言い、子供達の元へ向かった。

(やった~!蛇の行動次第だがこれで子供に仕返しできるかもな!)

 石は蛇に期待をし、気分が高まっていた。



 子供達は山登りを続けていた。

「ふぅ。だいぶ疲れたな~」

 山登りに体力を使いだいぶ疲れた様子。
 …すると突然蛇が後ろから子供達の前へ現れた。

「うわぁぁぁ!蛇だ!」
「な、なんのこれしき!…や、山に蛇が出るなんて想定内だ!」

 子供達は蛇と見つめ合い、ビビっていた。

(そろそろか?)

 蛇はこれからどうなるか考えていた。

「あ、あれ?体が動かない…」
「しかも体がどんどん石みたいな見た目になっていってるぞ!?」
「これってもしかして言い伝えの…」

 子供達は自分達の状態に慌て様々な事を言っている間に、完全に石になっていた。

(ふっ…久しぶりにこの力を使って面白かったぞ♪)

 蛇は自分の力を使える対象に出会えて嬉しかった。



『おい!子供達に会えたぞ。そして今からいい物見せに連れて行ってやる』

 蛇は石の場所に戻って声をかけた。

 『会えたならよかったです!いい物ですか、楽しみです!』

 蛇が子供達に会えた事に石は嬉しくなった。
 そして蛇は石を口に咥え、山を登って行った。



『着いたぞ、ただの石であるお前に俺から新たな仲間を与える。これで今後は退屈しないだろう…楽しく過ごせよ』

 蛇は自分の石化の力を示すと同時に、普段暇であるただの石を見てなんとなく、その生活を変えようと思った。

『ありがとうございます!蛇さん、このご恩は一生忘れません!』

 石は蛇に対し、とても感謝をした。そして石になった子供達を見る。

(ははっ…!これからよろしくな~)
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