短編集【BLACK】

タピオカ

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ダイヤのようなロボット 2

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 せっかく修理をしているのにロボットから直さないように言われ、男は驚いた。

「…どういうことですか?直して再び主人の為に活動できるようにしないと」

 意味が分からないので、直して元の生活に戻るようにとりあえず言う。

「それが嫌なんです!だからワタシはわざと自ら壊れたのに…」

 彼女は泣きそうな表情を見せて言う。
 ロボットといえど、人間と同じく感情を顔に出すことが出来る。

「嫌?わざと壊れた?どうしてそんな事をしたんですか?」

 ロボットからの言葉に男は疑問ばかりが浮かぶ。

「それはワタシがこの家の仕事を上手くできず失敗ばかりしてしまうからです。だから壊れてロボットとしての生を終え、楽になろうかと」

 ロボットは壊れたい理由をとても苦しそうに話した。

「確かに生きづらさは感じそうですね。でもなぁ、僕も修理の依頼を受けてここに仕事に来たわけでこのまま直さないと…」

 状況を辛そうだと思いつつも、彼は仕事をする人間としての立場として伝える。

「…それでも駄目ですか………でも壊れたい理由は他にもあります。ワタシは失敗する度に、ご主人様から酷い扱いを受けているのです!」
「………そうですか」

 ロボットは壊れたい理由である、自分の現状が更に過酷なのだと伝えた。
 だが彼はそれを聞いて淡々とした反応をした。

(彼女の様子を見るに、主人が酷いってのはあきらかに嘘だな。まあでもここは騙されたふりをするか、その代わり…)

「分かりました、でも貴方を一旦直しますね。それが仕事なので…その後に壊れることの協力をします」
「…ありがとうございます。最終的に壊れることができればいいので、協力を感謝します!」

 男はロボットの願いを引き受けた。その事に対してロボットはとても嬉しそうな表情で喜ぶ。

「でも願いを叶える代わりに、あなたからも報酬を頂きたいです」

 だが彼はただ単に願いを叶えるだけはしたくない様子。

「私からの報酬ですか………あまり高価な物は買えないのですが例えば?」

 報酬と聞いたロボットは色々と考えたが、自分があげられる物ならあげても構わないと思って聞いた。

「あなたの体の1部…ダイヤを頂きたいのです。外側じゃなく内側のほんの少しの部分だけ。取った後は動作に支障が出ないよう、代わりの物を入れますので」

 男は真剣な顔で言った。
 この家に修理をしに来てダイヤを頂くなんてとんでもないことだが、これは取引という考えであった。

「…分かりました、私の体ならあげることができるのでいいですよ。これでやっと壊れることができます!」

 ロボットは少し驚いたが、生を終わらせる願いを叶える事で喜びに溢れていた。



 数日後、ロボットは直った。 

「流石ですわね、すっかり元通りに!なんとお礼を言っていいのやら」

 主人は自分が綺麗な姿になったかのように、ロボットが元に戻った事をかなり喜ぶ。
 嬉しさのあまり、ロボットに抱きついたり様々なスキンシップをする。

「…ありがとうございます、感謝してもしきれないです」

 ロボットも喜んでいた。ただし主人とは違い、元に戻ったことではなく壊れる事が出来ることに関して。

「じゃあ僕はそろそろ行きますね、では」

 修理が終わり、用が無くなったので男はすぐに出ようとする。

「もう帰るのです?報酬もまだ受け取っていないのに」

 報酬も受け取らずに出ようとする彼を、主人は呼び止める。

「…いえ、それはいりませんよ。早く戻らないといけないのでさようなら」

 男は適当に理由を付け、家を出ていった。



 帰り道、男は色々と思い出していた。

「…悲しいロボットがいたもんだな、かと言ってそれを止めることは違う気がする。まあ僕はあなたの事を忘れないよ」

 男は手に持っているダイヤに話しかける。

「新しく作るロボットにこのダイヤを入れるから、再び新たな命になってくれよ。さて…そろそろあの家は爆発して跡形もなく消える頃かな」

 男はロボットの修理をする時、ダイヤと小型時限爆弾を交換していた。
 ロボットだけ壊してあの家の者を生きたままにすると、修理をした自分があの家から追われるからだ。

「主人とロボット、ダイヤが砕け散ると同時に一緒に仲良く消えるだろう。…僕は人殺し?いや、ロボット助けだよ」

 世間から見たら悪い事をしていると思いつつも、男は自分を肯定する事にした。
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