短編集【BLACK】

タピオカ

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針の痛み

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 とある病院にて、お母さんと5歳ぐらいの男の子が来ていた。
 インフルエンザの予防接種の注射を受ける為だ。

「痛いよ~!!注射なんて嫌いだ!」

 お母さんが注射を打った後、男の子も打ったが、やはり子供だからかとても痛がった。

「打たずにインフルエンザになったら、とても辛いのよ、だから我慢してね」

 お母さんは、打たないと辛いということを伝えた。

「ふん、来年は打たないもん!」


 月日は流れ、約1年後。今年も予防接種を受けることになり前日の日、男の子は悩んでいた。

 「今年もまた、注射を打たないといけないんだ…。あの針嫌いだよ~」

 
(痛くないようにしてあげようか?)

 …男の子の頭の中に声が聞こえる。

「誰!?…よく分からないけどお願い。痛みを消して!」


 予防接種の日。注射の針が男の子に刺さった。
 しかし、去年と違い平然としていた。

「痛くなかった~。去年のことが嘘みたい!」
「あらあら、大人でも痛いのに変なこと言うわね。でもきっと、去年より我慢強くなったのね!」

 男の子は痛みを全く感じていない。しかし、母親はそうだとは思わず、我慢強く成長したのだと思い込んだ。


 あれから月日は流れ、転んだり頭を打ったりと、痛みに通じる出来事もたまにあり、やはり痛かった。
 痛覚全てが消えたという訳ではなかった。


 そして夏の日の昼間、男の子は外で遊んでいた。
 小さい子にはよくある、虫を殺して楽しむということに、最近ハマっている様子。

「あっ!あんなとこに蜂の巣が。僕がやっつけてやる!」

 男の子は、自分の家の上の方にくっついている蜂の巣を見つけ、それに目掛けて小石を思いきり投げた。
 そして直撃し、巣からは無数の蜂が男の子の方へと向かう。そして蜂の針が男の子を刺した。

「うわぁぁぁ!…あれ?痛くはないや。よくもやったな!仕返しだ!」

 男の子は蜂に対して、叩いたり、振り払ったりした。飛び回ってるからほとんどは、無意味に終わる。

「あれ?体が自由に動かないや」

 少し時間が経った時、男の子は倒れた。
 蜂に何回も刺され、針に対して痛みは感じなくとも、毒は体中に回っている。
 もしも痛みを感じる体なら、1度刺された後は逃げただろう。

 そして、倒れて動かない男の子から、蜂は去っていった。


「きゃああぁぁ!」

 男の子の様子を見る為に外へ出た母親は、倒れている姿を見た瞬間、遠くまで響き渡る程の大きな悲鳴を上げた。
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