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本編
1本目 貴方しか?
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そう、盈月の双眸とは乙女ゲームとは名ばかりのBLゲームだったのである。まず主人公は「男の娘」だ。そして攻略対象は全員男なのだ。主人公はよくある特待生で平民だがなんとか勉強漬けの人生に苦労し入学出来たんだと、その主人公は青い髪に金色の目、とまさに盈月と双眸の容姿なのだ。これでタイトル回収は終わり残されたのは~ドキッ♡ハートフル物語~の部分のみ、当初買った理由が「タイトルからどんなゲームなのか全く予想がつかない」というものだった為、そんなアホなと開始10分でやめかけたがこのクソゲーを買った分のお金が勿体なく仕方なく攻略したのであった。
攻略に取り込んでいるとやはりというか、なんというか、悪役的なのが出てくるのだ。ついに俺はその悪役キャラアンダーランドシュレイにドハマりしてしまった。アンダーランドシュレイのルートはどれも在り来りな追放エンドや処刑エンドなどで不憫な描写が書かれていた。そもそも自分の婚約者がヒロインという男の娘にうつつを抜かしているのだ、不憫でなきゃおかしい。だが噂によるとそんな不憫なアンダーランドシュレイが幸せになれる隠しルートがあると聞いた。
そう、そのルートの重要人物が『ベルセンルクセスティン』という爽やかイケメンキャラなのだ。この男はそれはそれは慈悲深く情に厚い男だという、ゲーム本編ではアンダーランドシュレイについての描写は追放エンド前に『待って下さい』と庇い立てするだけの描写のみだった。だが隠しルートでは慈悲深きベルセンルクセスティンは絶対零度の男だった。隠しルートは幼少期から始まるようだった。
「なんでないてるの?」
それはアンダーランドシュレイ、基俺が初めての舞踏会に疲れてしまい王城の森のような庭に逃げ込んだ時だった。声を掛けてください、と言わんばかりに木の下でないている金糸の妖精のような男の子に声をかけてしまってきた。妖精さんはこちらに振り向き背を向けながらも目線だけはこちらによこしてきた。
「あのね、…みんながね、ぼくのこと出来損ないだっていうの…」
「どうして?こんなにきれいなのに」
「きれい?」
「あのね、えいげつっていってね!満月みたいっていうんだよ!妖精さんはえいげつだよ!」
「盈月…?」
「うん!知らない?えいげつの夜に金の髪をした王子様がはくばに乗ってむかえに来るの!」
それがこのゲームで有名な御伽噺だった、正確には金の双眸のヒロインが迎えに来るという話だったのだがそれが面白がってもらえる幼児用の話に脚色されていた。男の子は自分がやっと王子様みたい、と言われていることに気が付いたらしい。元々赤かった目尻はもう少しばかり赤くなり口元は緩んでいた。その容姿は正しく妖精だった。
「妖精で、王子様…?」
「うん、どっちも!」
「あははっ!ぼく、ようせいのおうじさま?」
「うん!きれいでかっこよくて金色!」
「ふふっ、ほめられるのはうれしい」
妖精のような男の子の微笑みは眩く目も開けられないほどだったので当時の精神年齢が若いおれは大袈裟にバッと両手で両目を隠した。男の子は笑いながらどうしたの?と聞いてきた。
「シュレイー!!」
「どこなのシュー!」
男の子の問いかけに答えようとすると自分の名前を呼ぶ声がした。俺はその声に気がついてしまい立ち上がり「ごめん、じゃあね」とだけ答えてその場を去った。去り際の男の子の顔は物凄く寂しそうだった事を覚えていた。
そう、これが隠しルートの回想のまんまだった。俺が前世の記憶を取り戻したのも、この記憶が前世の記憶だと正確に自覚したのもこの出来事の後だった。だが、幼少期の出会いがきっかけで仲良くなり付き合い始める、と言うより学園で出会いそして付き合い始める、というのが隠しルートの馴れ初めエピソードなのだ。つまりは。
──幼少期にフラグを立てていても今からへし折って跡形も無くしてしまえばいい!!
そして俺は学園では絶対に友達を1人もつくらないことを決めた。
___________________
話のストックがありません
攻略に取り込んでいるとやはりというか、なんというか、悪役的なのが出てくるのだ。ついに俺はその悪役キャラアンダーランドシュレイにドハマりしてしまった。アンダーランドシュレイのルートはどれも在り来りな追放エンドや処刑エンドなどで不憫な描写が書かれていた。そもそも自分の婚約者がヒロインという男の娘にうつつを抜かしているのだ、不憫でなきゃおかしい。だが噂によるとそんな不憫なアンダーランドシュレイが幸せになれる隠しルートがあると聞いた。
そう、そのルートの重要人物が『ベルセンルクセスティン』という爽やかイケメンキャラなのだ。この男はそれはそれは慈悲深く情に厚い男だという、ゲーム本編ではアンダーランドシュレイについての描写は追放エンド前に『待って下さい』と庇い立てするだけの描写のみだった。だが隠しルートでは慈悲深きベルセンルクセスティンは絶対零度の男だった。隠しルートは幼少期から始まるようだった。
「なんでないてるの?」
それはアンダーランドシュレイ、基俺が初めての舞踏会に疲れてしまい王城の森のような庭に逃げ込んだ時だった。声を掛けてください、と言わんばかりに木の下でないている金糸の妖精のような男の子に声をかけてしまってきた。妖精さんはこちらに振り向き背を向けながらも目線だけはこちらによこしてきた。
「あのね、…みんながね、ぼくのこと出来損ないだっていうの…」
「どうして?こんなにきれいなのに」
「きれい?」
「あのね、えいげつっていってね!満月みたいっていうんだよ!妖精さんはえいげつだよ!」
「盈月…?」
「うん!知らない?えいげつの夜に金の髪をした王子様がはくばに乗ってむかえに来るの!」
それがこのゲームで有名な御伽噺だった、正確には金の双眸のヒロインが迎えに来るという話だったのだがそれが面白がってもらえる幼児用の話に脚色されていた。男の子は自分がやっと王子様みたい、と言われていることに気が付いたらしい。元々赤かった目尻はもう少しばかり赤くなり口元は緩んでいた。その容姿は正しく妖精だった。
「妖精で、王子様…?」
「うん、どっちも!」
「あははっ!ぼく、ようせいのおうじさま?」
「うん!きれいでかっこよくて金色!」
「ふふっ、ほめられるのはうれしい」
妖精のような男の子の微笑みは眩く目も開けられないほどだったので当時の精神年齢が若いおれは大袈裟にバッと両手で両目を隠した。男の子は笑いながらどうしたの?と聞いてきた。
「シュレイー!!」
「どこなのシュー!」
男の子の問いかけに答えようとすると自分の名前を呼ぶ声がした。俺はその声に気がついてしまい立ち上がり「ごめん、じゃあね」とだけ答えてその場を去った。去り際の男の子の顔は物凄く寂しそうだった事を覚えていた。
そう、これが隠しルートの回想のまんまだった。俺が前世の記憶を取り戻したのも、この記憶が前世の記憶だと正確に自覚したのもこの出来事の後だった。だが、幼少期の出会いがきっかけで仲良くなり付き合い始める、と言うより学園で出会いそして付き合い始める、というのが隠しルートの馴れ初めエピソードなのだ。つまりは。
──幼少期にフラグを立てていても今からへし折って跡形も無くしてしまえばいい!!
そして俺は学園では絶対に友達を1人もつくらないことを決めた。
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