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第二章 真実の目
とある遊園地からの誘い
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つまらない。
ここは人がたくさんいるべき場所なのに。ここには私たちしかいない。
夢を与えるために生まれたのに、夢を与える相手がいない。
さみしい。
写真越しにこちらを恐る恐る見つめるニンゲンたち。なんてつまらなそうな表情。
夢を見せてあげようとちょっと招き入れれば、ひどく暴れて×ぬ。
かなしい。
作られた目的すら果たせない私たちに価値なんてあるの?
楽しんでくれないなら、愉しませてあげる。ほら、コウスレバみんな笑顔!
あそびたい。
もっともっとニンゲンを喚ぼう。仲間が増えたらもっともっとタノシくなるよね。
ふふ、どれだけ遊んでくれるかしら。×ぬまで遊んでくれるかしら。
つまらなかったここも、少しにぎやかになってきた。でもまだ足りない。まだまだチケットはたくさんあるもの。
人型ショーと止まらないメリーゴーランドはもう満席だけど、他はまだまだ空いてるわ。
出口のない迷宮がいい?それとも紐無しバンジーがいい?ああ、魔法使いのアナタにはマジックショーがぴったりね!
ねえ、だから遊びましょう?
追いかけて隠れて、見つけて捕まえて、引き裂いて縫い合わせて、声と赤い汗を引きずり出して遊びましょう?
__アナタもお友達も、死んでも帰りたくなくなるはずよ。
【遊ぼう】と子供のような声が聞こえたような気がして、ルチアは思わず辺りを見回す。そのわずかな動きに目ざとく気づいたアーノルドはアルバムをめくる手を止めた。
「何か違和感でも?」
「子供の声が、聞こえたような気がしたんです」
少し言葉を濁したが、間違いなくルチアには聞こえたと確信があった。
「僕には何も聞こえなかったが……まあ、僕は耐性だけ高くて目はあんまりだしな。フーゴは?」
「んや、俺もせーんぜん。というか反応的に先輩も聞こえてない感じ?」
「ああ。俺が何も感じ取れないのは珍しいが、怪異に法則性を期待しても仕方ない。しかもこれは”生きてる”危険度の高いやつだ。慎重になるべきだろう」
瘴気テストは完全防音な視聴覚室で行われている。中はルチアを除けば男子高校生しかいないし、外の声も聞こえない。それなのに、まるで耳元でささやかれたかのような子どもの声に、少しだけ首裏が寒くなる。
フーゴとロゼットは顔色が悪いのに、頑張って耳をすましていた。二人は先にテストを終わらせており、少しグロッキーになっていたのだ。アーノルドも端末に何か書き込んでおり、ルチアは少しだけ落ち着く。
こんなテスト、さっさと終わらせてしまおう。私に対怪異の力があるなんて、きっと何かの間違いに違いない。
気を取り直して再びアルバムに目を落としたルチアだが、突然酷い眩暈に襲われた。まるで世界がひっくり変えるようなそうなそれに、座っているのも辛くなる。
耐えきれず机に突っ伏せば、アーノルドの焦ったような声が聞こえた気がした。
「おい、どうした!?瘴気にあてられたか!?」
「突然、めまいが、してッ……きもちわる、」
「お前、さっきまでヘーキそうだったじゃねえか!おい、しっかりしろ!」
「あの声が原因か?取り合えずテストは中断した方がいいかもなって、おい!ルチアの周り、少し歪んでないか……?」
目を閉じで眩暈をやり過ごそうとするも、暗闇でも視界がぐるぐるする。いくら待てど一向に収まる気配はなく、むしろ悪化してさえいる。
誰かが近くで声をかけているのは分かるが、脳みそが働くことを放棄しているせいで判別がつかない。
それなのに、あの声はこの上なく鮮明に聞こえた。
【私たちと遊ぼう】
____世界が、暗転する。
ここは人がたくさんいるべき場所なのに。ここには私たちしかいない。
夢を与えるために生まれたのに、夢を与える相手がいない。
さみしい。
写真越しにこちらを恐る恐る見つめるニンゲンたち。なんてつまらなそうな表情。
夢を見せてあげようとちょっと招き入れれば、ひどく暴れて×ぬ。
かなしい。
作られた目的すら果たせない私たちに価値なんてあるの?
楽しんでくれないなら、愉しませてあげる。ほら、コウスレバみんな笑顔!
あそびたい。
もっともっとニンゲンを喚ぼう。仲間が増えたらもっともっとタノシくなるよね。
ふふ、どれだけ遊んでくれるかしら。×ぬまで遊んでくれるかしら。
つまらなかったここも、少しにぎやかになってきた。でもまだ足りない。まだまだチケットはたくさんあるもの。
人型ショーと止まらないメリーゴーランドはもう満席だけど、他はまだまだ空いてるわ。
出口のない迷宮がいい?それとも紐無しバンジーがいい?ああ、魔法使いのアナタにはマジックショーがぴったりね!
ねえ、だから遊びましょう?
追いかけて隠れて、見つけて捕まえて、引き裂いて縫い合わせて、声と赤い汗を引きずり出して遊びましょう?
__アナタもお友達も、死んでも帰りたくなくなるはずよ。
【遊ぼう】と子供のような声が聞こえたような気がして、ルチアは思わず辺りを見回す。そのわずかな動きに目ざとく気づいたアーノルドはアルバムをめくる手を止めた。
「何か違和感でも?」
「子供の声が、聞こえたような気がしたんです」
少し言葉を濁したが、間違いなくルチアには聞こえたと確信があった。
「僕には何も聞こえなかったが……まあ、僕は耐性だけ高くて目はあんまりだしな。フーゴは?」
「んや、俺もせーんぜん。というか反応的に先輩も聞こえてない感じ?」
「ああ。俺が何も感じ取れないのは珍しいが、怪異に法則性を期待しても仕方ない。しかもこれは”生きてる”危険度の高いやつだ。慎重になるべきだろう」
瘴気テストは完全防音な視聴覚室で行われている。中はルチアを除けば男子高校生しかいないし、外の声も聞こえない。それなのに、まるで耳元でささやかれたかのような子どもの声に、少しだけ首裏が寒くなる。
フーゴとロゼットは顔色が悪いのに、頑張って耳をすましていた。二人は先にテストを終わらせており、少しグロッキーになっていたのだ。アーノルドも端末に何か書き込んでおり、ルチアは少しだけ落ち着く。
こんなテスト、さっさと終わらせてしまおう。私に対怪異の力があるなんて、きっと何かの間違いに違いない。
気を取り直して再びアルバムに目を落としたルチアだが、突然酷い眩暈に襲われた。まるで世界がひっくり変えるようなそうなそれに、座っているのも辛くなる。
耐えきれず机に突っ伏せば、アーノルドの焦ったような声が聞こえた気がした。
「おい、どうした!?瘴気にあてられたか!?」
「突然、めまいが、してッ……きもちわる、」
「お前、さっきまでヘーキそうだったじゃねえか!おい、しっかりしろ!」
「あの声が原因か?取り合えずテストは中断した方がいいかもなって、おい!ルチアの周り、少し歪んでないか……?」
目を閉じで眩暈をやり過ごそうとするも、暗闇でも視界がぐるぐるする。いくら待てど一向に収まる気配はなく、むしろ悪化してさえいる。
誰かが近くで声をかけているのは分かるが、脳みそが働くことを放棄しているせいで判別がつかない。
それなのに、あの声はこの上なく鮮明に聞こえた。
【私たちと遊ぼう】
____世界が、暗転する。
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