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序章 この学校は怪異で溢れている
ある放課後の話
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最後の授業の終了を告げるチャイムが鳴り、教室の空気が一気に緩む。
特に入学したばかりの一年生にとって、一日の疲れがどっと押し寄せてくる瞬間でもあった。
「ルチア・サンタリオ」
名を呼ばれた金髪の少女は、帰る準備をしていた手を止めて顔をあげた。
「申し訳ないが、これを第三準備室においてきてくれないか。わしはこのあと職員会議があってのう」
直前まで魔力基礎の授業をしていた教師はそう言うと、少し申し訳なさそうにプリントの束をルチアに渡した。
「分かりました。第三準備室って、西館の三階にありましたよね?」
「よく覚えているな」
さっさとお使いを終わらせるためにも、ルチアは早速鞄をもって立ち上がった。
その姿に満足そうに微笑んでいた教師は、ふと何か思い出したように口を開いた。
「それと、西館には必ず裏口から入るように」
真剣にそう言われたルチアは少し首をかしげ、その拍子に束ねられていない髪が顔にかかる。そろそろ結ぶもの買わないとなあ、とぼんやり考えていたところで教師が続けた。
「この学園にいる以上、お前もそのうち嫌でも慣れるだろう。だがいくら実技試験首席のお前でも、新入生にアレの対応は厳しい」
「ええと……?」
「突き落とされたくなければ、西館三階の正面階段は使うな」
全く話が見えない。しかしその意味を聞く前に、教師はもう一度ルチアに念を押して速足で教室を出ていった。
「正面階段を使うなって……あー、そういえばあそこにはいつもヤバそうな女の人が立ってるんだっけ」
理由を思い当たり、ルチアは納得したようにうなずいた。
そして表情を変えることもせず、お使いを完遂すべく第三準備室に向かった。
特に入学したばかりの一年生にとって、一日の疲れがどっと押し寄せてくる瞬間でもあった。
「ルチア・サンタリオ」
名を呼ばれた金髪の少女は、帰る準備をしていた手を止めて顔をあげた。
「申し訳ないが、これを第三準備室においてきてくれないか。わしはこのあと職員会議があってのう」
直前まで魔力基礎の授業をしていた教師はそう言うと、少し申し訳なさそうにプリントの束をルチアに渡した。
「分かりました。第三準備室って、西館の三階にありましたよね?」
「よく覚えているな」
さっさとお使いを終わらせるためにも、ルチアは早速鞄をもって立ち上がった。
その姿に満足そうに微笑んでいた教師は、ふと何か思い出したように口を開いた。
「それと、西館には必ず裏口から入るように」
真剣にそう言われたルチアは少し首をかしげ、その拍子に束ねられていない髪が顔にかかる。そろそろ結ぶもの買わないとなあ、とぼんやり考えていたところで教師が続けた。
「この学園にいる以上、お前もそのうち嫌でも慣れるだろう。だがいくら実技試験首席のお前でも、新入生にアレの対応は厳しい」
「ええと……?」
「突き落とされたくなければ、西館三階の正面階段は使うな」
全く話が見えない。しかしその意味を聞く前に、教師はもう一度ルチアに念を押して速足で教室を出ていった。
「正面階段を使うなって……あー、そういえばあそこにはいつもヤバそうな女の人が立ってるんだっけ」
理由を思い当たり、ルチアは納得したようにうなずいた。
そして表情を変えることもせず、お使いを完遂すべく第三準備室に向かった。
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