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第五章 おもい
52.付喪神鑑定士
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「あ、綾小路さん……」
珍しく取り巻きの姿はいないけど、そんなのは些細なことだった。その視線はかつてないほど鋭い。
周りからも、ざわざわとした声が聞こえる。
「どうしてあなたが、一条様と一緒にいるのかしら」
前の私だったら顔を真っ青にして誤魔化していただろう。それほど綾小路さんは恐ろしい顔をしていた。
――だけど今は、不思議と怖くない。
私はしっかり綾小路さんの目を見返して口を開いた。
「友達だからだよ」
その返事が気に食わなかったのか、綾小路さんはさらに視線を鋭くした。
「あなたなんか、一条様の友人にふさわしくありません!身の程をっ」
「黙れ」
綾小路さんが言い終わる前に、颯馬くんがバッサリと切った。
普段は礼儀正しい颯馬君が声を荒げたことに、綾小路さんが顔色を悪くした。
「俺の友達は俺が決める。綾小路には関係ないだろ」
「か、関係ない……で、ですが、わたくしは一条様を思って……!」
ショックを受けたようになおも言いつのる綾小路さんに、颯馬くんがふと雰囲気を柔らかくした。
「それに、どちらかというと俺の方が雪乃にふさわしくないんだ。雪乃はすごいんだぞ!土曜日も」
「はいストップ!そんな話、僕の目が黒いうちは許さないからね!」
颯馬くんの口からとんでもないセリフが飛び出してくる前に、アキくんがさえぎってくれた。
そして颯馬くんの背中をぐいぐい校舎の方に押していく。
私も後に続こうとして、桜二くんが冷たい笑顔を浮かべていることに気が付いた。綾小路さんはその顔を見て、わずかに顔をこわばらせた。
「早く校舎に入った方がいいんじゃない?みんな見てるよ」
綾小路さんは周りを見回して、かっと顔を赤らめる。
桜二くんはそれだけ言うと、興味を失ったようにこちらに駆け寄ってきた。
「そうだユキ、これから昼は蘭の館で食べてよ。フリーパスにしておくからさ」
何その遊園地みたいな制度。
私思わずはジトっとした目線を桜二くんに送った。
「クラスメイトとも仲良くなりたいので、それはご遠慮します」
「ちぇ。からかってるわけじゃないのに」
桜二くんは本気で残念そうな声を上げた。
そんな時、前を歩いていた颯馬くんがくるりと振り返る。
「そうだ。雪乃に見てほしくて、今日寄木細工を持ってきてたんだった。放課後、空いてるよな?」
「なんでそれを早く言わないのかな!?」
「ははっ、天然ゴリラに期待してもしょうがないでしょ」
平常運転の三人に、私は笑って答えた。
「いいけど、付喪神次第だよ」
鑑定士でも、私は付喪神鑑定士なので。
珍しく取り巻きの姿はいないけど、そんなのは些細なことだった。その視線はかつてないほど鋭い。
周りからも、ざわざわとした声が聞こえる。
「どうしてあなたが、一条様と一緒にいるのかしら」
前の私だったら顔を真っ青にして誤魔化していただろう。それほど綾小路さんは恐ろしい顔をしていた。
――だけど今は、不思議と怖くない。
私はしっかり綾小路さんの目を見返して口を開いた。
「友達だからだよ」
その返事が気に食わなかったのか、綾小路さんはさらに視線を鋭くした。
「あなたなんか、一条様の友人にふさわしくありません!身の程をっ」
「黙れ」
綾小路さんが言い終わる前に、颯馬くんがバッサリと切った。
普段は礼儀正しい颯馬君が声を荒げたことに、綾小路さんが顔色を悪くした。
「俺の友達は俺が決める。綾小路には関係ないだろ」
「か、関係ない……で、ですが、わたくしは一条様を思って……!」
ショックを受けたようになおも言いつのる綾小路さんに、颯馬くんがふと雰囲気を柔らかくした。
「それに、どちらかというと俺の方が雪乃にふさわしくないんだ。雪乃はすごいんだぞ!土曜日も」
「はいストップ!そんな話、僕の目が黒いうちは許さないからね!」
颯馬くんの口からとんでもないセリフが飛び出してくる前に、アキくんがさえぎってくれた。
そして颯馬くんの背中をぐいぐい校舎の方に押していく。
私も後に続こうとして、桜二くんが冷たい笑顔を浮かべていることに気が付いた。綾小路さんはその顔を見て、わずかに顔をこわばらせた。
「早く校舎に入った方がいいんじゃない?みんな見てるよ」
綾小路さんは周りを見回して、かっと顔を赤らめる。
桜二くんはそれだけ言うと、興味を失ったようにこちらに駆け寄ってきた。
「そうだユキ、これから昼は蘭の館で食べてよ。フリーパスにしておくからさ」
何その遊園地みたいな制度。
私思わずはジトっとした目線を桜二くんに送った。
「クラスメイトとも仲良くなりたいので、それはご遠慮します」
「ちぇ。からかってるわけじゃないのに」
桜二くんは本気で残念そうな声を上げた。
そんな時、前を歩いていた颯馬くんがくるりと振り返る。
「そうだ。雪乃に見てほしくて、今日寄木細工を持ってきてたんだった。放課後、空いてるよな?」
「なんでそれを早く言わないのかな!?」
「ははっ、天然ゴリラに期待してもしょうがないでしょ」
平常運転の三人に、私は笑って答えた。
「いいけど、付喪神次第だよ」
鑑定士でも、私は付喪神鑑定士なので。
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